4話『老眼の龍神』
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「……さん、店員さんや、ちょっと良いかね?」
「ん……、あっ、はい! なんで、しょ……」
起こされて顔を上げると、そこには龍がいた。
――が、思ったより体が小さい。
「驚かせてスマンのう。知り合いの神様からここを紹介されての、探してる物を買いに来たわけじゃ」
「え、あ、はい……。 ご要望は」
「懐中電灯と虫眼鏡をな」
「あー、はい」
何が何だか分からないまま、夢の中で言われたことをぼんやりと思い出して、いつものお客さんのように接する。
――龍だけど、普通にお爺さんみたいだ。虫眼鏡か……老眼鏡がいいか、それとも。
「本を読まれます? したいことによっては色々便利な物もあるんで」
「おお、そうそう。手紙を貰ってな」
「なるほど」
棚の下の引き出しを覗いて、心当たりのある商品を探す。
「懐中電灯は、暗い場所だからですかね」
「そうじゃ。小さな社でな、昔は田んぼが多かったから雨乞いに力を貸したんじゃが、人も増えてすっかりやることが無くなってしまっての」
「……」
――神様は人が信じてるから居る、と先輩が言ってたな。同時に、居て欲しい神様を呼び寄せてた、とも。
「まあ、人間と同じように老後だと思えばいいんじゃが、力が弱まると老眼になるとは思わなんだ。はっはっは」
「あぁー……それは確かに」
かっかっ、と笑う龍神様に、普段の客層を思い出して苦笑いしてしまう。お爺さんお婆さん、大変そうだもんなあ。
「もし差し支えなければなんですけど……どなたから」
「近所の坊主からじゃ。たまたま見つけてくれたみたいでの……しばらく通ってから、手紙を置いてくれた」
しみじみと語る龍神様は、何だか嬉しそうだった。まるで、初孫を見るようだった。
「……なんか、お孫さんみたいっすね」
思わず、口調が崩れてしまうくらいには、こっちもほっこりする話で。
「はっはっ、確かに! 手紙も貰ったしの、願い事であるなら、出来る限り応えてやらんとな」
「ですね。……で、こんなのどうですかね」
「ほう。変わった虫眼鏡じゃの」
四角く、持ち手にスイッチが付いた虫眼鏡。よくお爺さんが爪切りするときに使ったりしているものだ。
「スイッチを押すと、裏の電球が点いて照らしてくれるんですよ」
「ほぉー……! ああ、確かにぴったりじゃ。人間も色々工夫しとるんじゃなあ」
感心感心、と気に入った様子だ。値段もそこまで張る物ではない……けど、代金ってどうするんだ?
「ふむ、ではこれを頂こう。ちゃんとお代はあるから安心しとくれ」
「あっ、良かった……」
「お主らも流石に商売だからの、困ることは出来んわい」
「ありがとうございます」
お代を受け取り、レシートが印刷されるのを待っていると、ふわっ、と風が吹き込んできた。
「ああ、領収書は大丈夫じゃ。それじゃあ、世話になったの」
視界の端に映っていた、明らかにこの世のものではない外の景色が、徐々に元の景色へと戻っていく。
不思議な客だった。でも確かに、セレナの言うとおり、普通のお爺さんみたいだった。




