2話『月女神セレナ』
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俺は、『ラグナロクディーヴァ』というゲームにずっとハマっている。その『女神』――月女神『セレナ』。その姿がパッケージに出ていたから『ヒロイン候補』である――と、噂されていた。
しかし、実際には「主人公と共に闘うヒロインに自らの女神の因子を与え、消えてしまう」、世界を救うために自らを犠牲にし、主人公とヒロインに運命を託す存在だった。ただでさえ、主人公が選んだヒロイン以外は救われないというシナリオに、SNSは阿鼻叫喚のありさまで、ネタバレ防止や何やらで揉めていたほどだ。
特に、セレナは裏シナリオなどもなく、DLCもない。ただただ『救われない』運命にあっただけに、消えずに幸せに主人公と過ごす二次創作もファンによってたくさん書かれた。……あと、何がとは言わないけど大きかったり、肌のよく見える衣装のおかげで、うん。
「って、そうじゃなくて」
「は、はいっ?!」
「あ、いや……こっちの話」
明らかに、目の前に居るのは『セレナ』だ。……ちょっと目のやりどころに困る。足が浸かっているのは泉――セレナと出会うあの泉。やけに高画質だけどそれは一旦置いておく。そして、なぜか俺の服装は店のエプロンのまま。
俺の状況が中途半端で、信じて良いのかは分からない。だけど、これは『ラグナロクディーヴァ』の世界だ。泉から立ち上がった俺を見て、セレナはニコニコしていた。
「地上は魔物が多いですから、地下に移りましょう」
「お、おう」
洞窟の入り口に近づくと、セレナに炎の精霊が寄り添ってきた。くるくると回ると、セレナは『ええ、案内をお願いします』と精霊に伝えた。
「お会いできて良かったです。世界の危機であるいま、私が頼れるのは貴方ですから」
原作中は『あなた「方」』だった気がするが、二次創作では良くある事だし――
「――というのは本当ですが、あくまで理由の一つで。……ふふっ。実は、もう一つお願いしたいことがあるんです。貴方の世界の神様が、『宏明さんに解決できることがあるから、手伝って欲しい』と仰ってまして」
えっ、急に知らないセリフを言い出したんだが。混乱する俺に『急な話ですみません』と気遣ってくれながらも、セレナはその『頼み事』について話し始めた。
《主な登場人物》
白銀 宏明
商店街の一角にある『白銀電器』の店主の息子。父親が居ない時に店番をしたり、時折修理に出かけることもある。ゲーム好きで、ゲーム『ラグナロクディーヴァ』のうち、『推し』は泉の女神『セレナ』。
セレナ
ゲーム『ラグナロクディーヴァ』の登場キャラクターだが、プレイアブルキャラ(操作可能キャラ)ではない。どういうわけか宏明の夢に現れ、好意を示している。どうやら、宏明に『頼み事』があるというが……。




