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黒聖女の成り上がり~髪が黒いだけで国から追放されたので、隣の国で聖女やります~  作者: 小平ニコ


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第27話

「でも私は駄目です。もうそれなりの期間役所で働いているのに、いまだに上手く馴染めなんですから。兄はあっという間に才覚を示して、一部隊の隊長にまでなったのに」


「まあ、お兄さんと比べても仕方ないわよ。あなたはあなたで、マイペースにやって行けばいいと思うわ。……それにしても、今日は随分素直に自分のことを話してくれるのね」


 そう言われて、自分の饒舌に気が付いたのか、メリンダは少し頬を赤らめる。しかし機嫌を壊すようなことはなく、小さく微笑して話し続ける。


「私、いつもそっけない態度をとってますけど、本当は誰かに自分の胸の内を聞いてもらいたかったのかもしれません。マリヤさんに話すことができて、色々と心が落ち着きました」


「あなたのためになったのなら、何よりだわ」


「ところでさっきも聞きましたが、どうして屋台で食事をしていたんですか? 王宮で、未確認危険能力の調査に協力しているのではなかったのですか?」


「私も、丸一日がかりで調査に協力するつもりだったんだけどね。実はこういうことがあって……」


 私はかいつまんで、午前中にあったことを説明した。

 話が終わると、メリンダはゆっくりと頷く。


「そうですか……魔人を一瞬で消し去ってしまうなんて、やっぱりあなたの力は、凄いものだったんですね。使えもしない秘術をできると言い張り続けた私の両親とは大違いです」


「いやぁ、そんな……私の力って言っても、なんでこんな力が使えるのか分からない、偶然の産物みたいなものだから……」


「偶然でも何でも、使いこなせているのなら、それはもうあなたの力ですよ。王太子様の命を救い、人々に害をなしていた魔人を倒したとなれば、間違いなく一級市民の資格が与えられるでしょう。これからは、マリヤ様とお呼びしなければいけませんね」


「やめてよ。この先私がどうなったとしても、今まで通りでいいってば」


 そんなこんなで、メリンダと私は、少し打ち解けることができた。その日からしばらくの間、特に王宮から連絡が来なかったので、私はメリンダの家でのんびりと過ごした。


 メリンダがツンツンしていたのは、結局のところ最初だけで、普通に接するようになってからの彼女は、実に素直だった。きっとこれが、メリンダ本来の性格なのだろう。両親が起こした騒動のせいで、友達からも付き合いを断たれ、辛い思いをし、それが原因で他人との間に精神的な壁を作っていたに違いない。



 さて、魔人ゴーファ討伐から早くも一週間が過ぎ、いい加減に『私の力の調査と市民権はどうなっていますか?』と、こちらから王宮に出向いてみようかと思った頃、やっとと言うべきか、使者が来た。


 今回は二人ではなく、一人だ。


 いつぞやのように黒ずくめのローブを目深にかぶった長身の人物。

 顔が見えなくても、雰囲気で誰か分かる。


 パーミル王国の王が政治権限を与えた三人の子供の一人にして、近衛騎士団の副団長、ジェロームだ。ジェロームはフードを下ろし、私に向かって丁寧に頭を下げる。燃えるような彼の赤髪が、さらりと揺れた。


「聖女マリヤ様。お迎えにあがるのが遅れて、大変申し訳ありません。これから王宮にて、あなたの未確認危険能力についての説明と、一級市民権の授与式をとりおこないますので、ご同行願えますでしょうか」


 これ以上ないほどに慇懃な挨拶だった。


 正直言って、一週間も何の連絡もなかったので、使者が来たら『いつまで待たせるんじゃい』と文句のひとつでも言ってやろうと思っていたのだが、今の挨拶でその気も吹っ飛んでしまった。我ながら、単純な性格である。


 こちらからも、丁寧に言葉を返す。


「ご丁寧な挨拶、痛み入ります。それじゃ、行きましょうか」


 そして私たちは、二人並んで王宮への道を歩いて行く。


 ジェロームは再び黒いフードで顔を隠してしまったが、長身で黒ずくめなその姿は、ハッキリ言って非常に目立つ。実際、道を行く人たちが、チラチラとこちらを見て、何かを囁き合っている。


 私は苦笑して、ジェロームに声をかけた。


「ジェロームさん。その黒ローブの姿ってけっこう目立つから、正体を隠すなら、メリンダみたいに変身の魔法を使った方がいいんじゃないですか?」


 そこまでぺらぺらと喋ってから、ちょっと失礼で、馴れ馴れしい物言いかなと思ったが、意外にもジェロームは気さくに答える。


「そうでもありませんよ。パーミル王国では、黒いローブは正装のひとつですから。注意してよく見れば、町の中で、私以外にも黒ずくめの格好をした人々をそれなりに見かけるはずですよ」


 言われて、周囲をよく観察してみる。


 なるほど、本当だ。

 黒いフードまで被っている人はいないが、黒ローブの人はけっこういる。

 しかしそれなら、なぜ道行く人々は、こちらをチラチラと見てくるのだろう?

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