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黒聖女の成り上がり~髪が黒いだけで国から追放されたので、隣の国で聖女やります~  作者: 小平ニコ


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第16話

 ……なんとグラディスは、片膝をついたまま、緩やかに頭を上下させ、うたた寝をしていた。私とほとんど同時にそれに気がついたエリウッドが、おかしそうに笑い、言う。


「ふふ、ふふふっ、この状況で、よくうたた寝ができる。……姉上、ジェロームと共に、もう席を外してもらって構いませんよ。警護の者は、隣室にも大勢いますから」


 エリウッドにポンと肩を叩かれ、グラディスは「んぁ?」と目を覚ました。よだれでも出ていたのか、彼女は口元を手で拭い、照れ笑いをする。


「いや、失敬失敬。昨日、寝るのが少し遅かったものでな。おっといかん、殿下には敬語を使わないと……」


「構いませんよ、他の者の目がないところであれば。姉上に敬語を使われると、なんだか気持ち悪いですし」


「こいつ、気持ち悪いとはなんだ。それを言うなら、私だって弟に敬語を使うなんて、気持ち悪いんだぞ」


「はいはい、それは失礼いたしました」


 とても王子と近衛騎士のやり取りとは思えない、気安い会話だ。


 会話の内容から察するに、エリウッドとグラディスは、姉弟……ということになる。そして、グラディスとジェロームも姉弟だ。それはつまり、エリウッドとジェロームも兄弟という理屈になる。


 さっき、『王様が政治権限を三人の実子に譲った』って言ってたけど、その『三人の実子』っていうのが、エリウッドとグラディス、そしてジェロームなのだろうか。


 ならばなぜ、エリウッドだけが玉座に座り、グラディスとジェロームはその警護をする立場である近衛騎士なのだろう。気になったけど、またジェロームの前でぶしつけな質問をすると睨まれそうなので、とりあえず私は黙っておくことにした。


 しかしこれで、グラディスとジェロームが顔を隠していた理由が分かった気がする。二人の王族が、朝っぱらから町をウロチョロしていたら、目だって仕方ないもんね。


 私は今思った通りのことを、グラディスに言う。


「グラディスさんとジェロームさんが顔を隠してたのは、王族だったからなんですね」


 グラディスは立ち上がり、笑う。


「まあ、そういうことだ。私は別に、隠す必要などないと思うのだがな。だいたい王族と言っても、私たちは……」


 のほほんとした様子で言葉を続けようとするグラディスを、ジェロームは片膝をついたまま見上げ、鋭い声で「姉上」と言い、制止した。


「姉上、私たち姉弟は今、非常に微妙な立場にいるのです。発言には、細心の注意を……」


「わかったわかった。まったく、お前といると、何かを話すたびにいちいち止められて、会話にならん。エリウッドもきっとマリヤと二人で話がしたいことだろう。だから私たちは、これで退室するとしよう。マリヤ、また今度ゆっくり話そう」


 もうすっかりエリウッドに敬語を使うのをやめたグラディスは、別れの挨拶をするように私の肩を軽く叩くと、ジェロームと共に謁見の間を出て行った。


 残されたのは、私とエリウッドだけ。


 ……これから、どうなるんだろう? より詳しく、『黒い光』の調査をおこなうのだろうか。そりゃ、そうよね。だってそのためにここまでやって来たんだから。


 よし、私だって、あの『黒い光』の全容を知りたいし、丸一日だって協力するわよ。そう意気込んでいると、エリウッドは不意に窓の外を眺め、小さくあくびをかいた。


「ふむ……今日は良い天気だな。マリヤよ、調査も終わったし、共に庭でも歩くか」


 気の抜けた発言に、今さっき込めたばかりの私の気合も、ぷしゅっと抜けてしまう。


「あ、あの、王子様。調査が終わったって、まだ、たった一回、力を使って見せただけですよ?」


「一回見せてもらえば充分だ。隣室に控えている、我が国の優秀な魔導士たちがデーターを取り、あの『黒い光』がどういう類の魔法――あるいは、超能力とでもいうべきものなのかを、解析してくれる」


「は、はぁ……そうなんですか。なんか、凄いですね……」


 本当に凄いと思うが、丸一日を調査に費やすつもりでいた私としては、拍子抜けである。いや、まあ、短く済むならそれに越したことはないから、ありがたいんだけど。


「『黒い光』の全容については、数日もすればわかるだろう。だから今は、『未知の力そのもの』より、その『未知の力を使う人間』……つまり、お前のことを詳しく知りたい」


 お前のことを詳しく知りたい――


 単純に、未知の力を扱う人間の素性について知っておきたいというだけなのかもしれないが、それでも、なんだか胸が熱くなる言葉だった。


 最初は、ちょっと偉そうだなって思った王子様だけど、さっきからの話を聞いていると、誠実で、信頼関係を築くことを大事に思ってる人みたいだし、少なくともオルソン聖王国の王子よりは、遥かに好感が持てる。


 私は素直に頷き、エリウッドと共にお城の中庭に出た。


 鮮やかな緑の生け垣が立ち並ぶ中庭は、いつだったかテレビで見たイングリッシュガーデンを彷彿とさせ、とても美しい。ブロックが整然と敷き詰められた遊歩道を歩きながら、エリウッドに聞かれるがまま、私は自分のことを話した。

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