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サンタァナの前の静けさ

お互いに相手を信じていない二人の男が、腹を探り合いながら食事をする。


カルテル特使、ゾルゲの目が薄く笑う。


反乱軍は罠と知りつつ、底をつきつつある物資のために、あえてゾルゲの罠へと飛び込む決断を下すーーーー

挿絵(By みてみん)

郊外にある高級レストランの個室でオズワルドはゾルゲと向かい合っていた。



今日はゾルゲの招きで、このレストランでの会合だ。


高級レストランといってもこの国の平均的な月収ではとても利用できるような店ではなく、実質的に私腹を肥やしている政府高官専用のレストランであり、経営母体はフロント企業の陰に隠れてはいるが、カルテルだ。



それだけに防諜や身元確認等、セキュリティは心配はいらない。



オズワルドの前のティーカップにゾルゲが白磁の中国式急須でお茶を注ぐ。



同じ急須から自分のカップにもお茶を注ぎゾルゲはそれをうまそうに飲むのを確認してからオズワルドも口を付ける。



用心深さからくるオズワルドの無意識レベルの癖だ、同じ急須から注がれたお茶をゾルゲが飲んでいるのを見て安心してお茶を飲む、この用心深さで彼はここまで政争を生き延び長官の座まで上り詰めたのだ。



このレストランに招かれた時はオズワルドは必ず使い捨ての安物のカップとフォークナイフを持参してそれ以外の食器は使わず、注文する料理も大皿から取り分けるタイプの料理ばかりを選んで注文する。



そして同じ皿から取り分けられたその料理に、ゾルゲが口を付けるのを確認してからでないと自身からは口を付けない。



この男もいつ私に牙をむくか分かったものではないからな...用心するに越したことはない...



向かい合い同じ食卓を囲んでいても、この二人の男の間に本当の意味での信頼関係などない。



そんなオズワルドの内心を見透かしたかのような、嫌な笑みを浮かべてゾルゲが料理を口に運ぶ。



「まぁそう警戒せずに、ここのエビチリは絶品ですぞ長官、長年のパートナーにあまり警戒されると私としても少々傷つくのですがね。」



「こう見えても、意外とデリケートなのですぞ私は...」



その様子を見てからオズワルドもようやくスプーンを手に取る。



「ふん...それで作戦の方は首尾よく進んでいるのだろうな?」



なるほど、確かに味の方は絶品のエビチリなのは確かだ。



「はい、奴らの最近の通信を傍受しております、なかなか暗号強度が高く半分程度しか解読できておりませんので推測交じりですが、こちらの思惑通り渓谷を進むルートを選択したようです。」



「サンタァナの時期を利用して目くらましにするつもりのようですな、まぁ我々がそう仕向けているわけですが。」



「ふふ...権謀術策は君のお手の物、まんまと踊らされているわけだ。」



「それと長官にお願いなのですが、そもそもサンタァナのもとでは出撃自体不能とは思いますが、念のため空軍に余計な首を突っ込ませないよう取り計らっていただきたいのです。」



「空爆やミサイルで渓谷ごと爆破して奴らを生き埋め一網打尽にでもされては我々のパワードスケルトンのせっかくの出番と活躍シーンが台無しですからな。」



「ああ、心配はいらんよ、せっかくの手柄を横取りさせるつもりは私にもないからな、余計な手出しは無用と釘をさしておくつもりだ...」



「あぁ、君、アロス・コン・マリスコスを頼む。」



傍らに控えるウェイターに高級パエリア風大皿料理を追加注文する。



もちろん毒見役はゾルゲにさせるつもりだ。



エビチリを食べながらゾルゲが追従する。



「ええ、よろしくお願いします。空軍には『我々の陸戦部隊ごと空爆で渓谷に生き埋めにするつもりか!!軍法会議ものだぞ!!』とでも言って脅しておいてもらいましょうか。」



ほどなくして注文したパエリアの大皿が、テーブルの中央に置かれる。



ターンテーブルを適当に何回か回転させてから、取り分けようとするウェイターを制し、オズワルド自身の手で小皿にパエリアを取り分け、ゾルゲの前に置く。



「長官自ら取り分けて頂けるとは恐縮です、我々の友情の証しですな。」



心にもないセリフを口にしながらもためらうことなくパエリアを口に運ぶゾルゲ。



もちろんオズワルドの目的は、ターンテーブルをランダムに回すことでそこから取り分けられた料理を、ゾルゲがためらうことなく口に入れられるか確認しているだけだ。



「エサとして用意した物資だが、あれは本物の物資で構わんな?」



「どうせ奴らにくれてやるつもりなんぞないし、やつらは渓谷で全滅する運命なのだから問題ないだろう、片が付いた後は物資は横流しすれば良い小遣い稼ぎにもなるのでな。」



「上には反乱軍の攻撃で大半の物資は焼き払われてしまったことにすれば、一石二鳥だ、なんなら作戦指揮官に任命した例の特務上級少佐に横領の罪をかぶせても良い。」



「一応余ったわずかな物資は、本来の用途通り国境付近の部隊に届けてやろう。」



国軍ですら物資が窮乏する部隊が後を絶たない理由がこれだ。



潤沢な予算も物資も途中で官僚に中抜きされて、末端に届く頃には余りもののわずかな予算や物資しか届けられないのだ、腐敗した国家の縮図といえる。



パエリアをぱくつきながら、抜け目なくこの作戦を自身の私腹を肥やすためにも利用する策を語るオズワルド、どこまでも貪欲な男だ。



「大変結構ですな、物資がダミーでは奴らに感づかれる可能性がありますからな、タイを釣るのには質の良い美味しいエビが必要です。」



「...このエビチリのようにね。」



「あぁ、それと現地に派遣される指揮官には有線ケーブルで繋いだ通信機を持たせてください、通常の無線ではサンタァナの影響で死神を足止めしている部隊との長距離の通信はできませんからな。」



「近くに通っているインターネット用の敷設ケーブルに接続、最寄りの基地に繋げて利用するとよいでしょう。有線ケーブル経由で基地の高出力通信設備を使えば足止め部隊とも通信可能なはずです。」



「なるほど、分かった、そう指示しておこう。ふふ...ますます完璧な作戦じゃないか、ドブネズミどもの命運もこれで尽きたという訳だ。」



二人の男は下品な大声で笑い合いながら、祝杯を頭上高く掲げる。



ゾルゲとの有益だが不快な会食を終え、防弾処理が施された運転手付き高級リムジンで帰宅の途に就くオズワルドは、車内で葉巻をくゆらせながら運転手に話しかける。



「おい、確か君の妻はまだ30歳だったな、今度私のパーティーに同伴させたまえ。」



「はぁ、ですが家内は学のない女でして、長官の主催されるセレブが居並ぶパーティーに呼ぶのは長官にも恥をかかせてしまうことにもなり兼ねませんので、遠慮させていただきたいのですが...。」


「かまわんよ、連れてきなさい、いいね? ああ、実は近々大きな成果が上げられそうなんだ。そうなれば君の給料も今の二倍にしよう、君はよく働いてくれているからね。」



運転手は、以前たまたまオズワルドに妻を紹介した時の、美人と評判の妻を見るオズワルドの妙に脂ぎった視線を思い出して身震いする。



「しかし...」



言い淀む運転手をオズワルドの冷たい声が遮る。



「連れてくるんだ、いいね? そういえば話は変わるが、最近はますます景気が悪くなっているそうじゃないか。」



「――たとえば運転手の仕事を失ったら、再就職は大変だろうねぇ。」



彼にはオズワルドの言葉の意味もその裏に隠された欲望も解っていた、解雇されたくなければ、妻を差し出せと言っているのだ。



無言でうなだれる運転手の後姿を眺めながら、オズワルドは権力の甘い蜜の味をかみしめるのだった。




◆◆





一か月後、会議を重ね、反乱軍は物資奪取作戦の準備を着々と進めていた。



敵の配置、地形、補給物資の位置、渓谷への侵入経路、撤退経路、すでに現地へ偵察部隊を派遣し逐一報告はさせている。



必要な情報は揃いつつあり、作戦そのものもすでに大枠が固まり始めている。



しかし、作戦決行まであと一週間という段階になったある日。



新たな情報が飛び込んでくる。



政府軍の高官オズワルドが、国境付近の部隊を激励するため視察に赴くというのだ。



しかも、目立つことを避けるため護衛はごく少数。



狙撃による暗殺には絶好の条件だった。



「……本当にオズワルド本人なのか?」



情報を確認したホセは、しばらく黙り込む。



ラグランジュ大佐をはじめとする主要メンバーも、この情報を前に判断を迫られる。



オズワルドはこの国の腐敗の震源地の一人、これを仕留める千載一遇の機会。



しかし同時に、今回の物資奪取作戦はすでに一週間後に迫っている、だがオズワルドを仕留めうるこのチャンスは反乱軍にとってあまりにも魅力的な話だ。



ここで大幅な作戦変更を行えば、本来の作戦そのものに支障が出る。



そして何より問題なのは、狙撃地点が本来の作戦地域から数百キロも離れていることだった。



「……両方に襲撃用の戦力を割くのは無理だな」



誰かがそう呟く。



「うん、どのみち今の我々の備蓄では遠からず物資が枯渇する、いまさら奪取作戦を中止するわけにはいかないからね...」



「それに狙撃地点の地形が少々問題だね、いくつか狙撃に適したポイントはあるようだけど、予定されているオズワルドの乗った防弾高級車の通過ルートまで直線距離で最短でも2.6kmはある...」



「通常の狙撃手のミッションとしては確実な狙撃はちょっと厳しい距離だね...」



ホセが地形図を見ながらつぶやく。



「あぁ、並みのスナイパーと狙撃銃なら確かに厳しい距離だな...並みのスナイパーなら、な。」



ラグランジュ大佐がニヤリとしながら零の方に視線を送る。



「うん...ヨルムンガンドの性能なら、この程度の距離は問題にならない、命ぜられれば確実に仕留めてみせるよ。」



零もその信頼に応じる。



「うん、確かに零君とヨルムンガンドの組み合わせなら、通常は無理筋なこのミッションも十分可能だね...でも、だからこそ...」



ホセの手元で、懐中時計がカチリカチリと鳴る。



「ホセ指令、物資奪取に向かう主力部隊から俺達の最強戦力である零を欠くことを心配しているんですか? 我々とて精鋭ですぞ、信用していただきたい、スーパーペイルライダーも完成しているしな。」



「ここで物資奪取作戦を中止するわけにはいかないが、しかしあのオズワルドの豚野郎を見逃すのはあまりにも無念だ、主力は我々に任せて、零には奴の首を...」



腕組みしながらラグランジュ大佐が進言する。



確かにあまりにも魅力的な情報だ、オズワルドは用心深い、今までにも何度も彼の暗殺計画は反乱軍内でも検討されてきたが、結局警備の厳しさに断念せざるを得なかったのだ。



今回のこの情報はまさに千載一遇の好機といえた。



「それに一時間ほど前に俺のところに、部下から届いた情報があってな。」



ラグランジュ大佐がポケットに手を入れて、ゴソゴソやる。



「敵通信の傍受で物資集積所の警備にあたっていた守備部隊、国境付近の警備隊からの救援要請に応じて警備隊の応援に、今日から国境付近を目指して大半が移動を開始しているとの情報だ。」



ラグランジュ大佐が電文のメモをホセ指令に手渡す。



「へぇ...それは我々にとって好都合だね、傍受したこの敵電文は例の新暗号かい?」



ホセ指令が問う。



「いや、新暗号と例の死海文書Ver.2が混在した物だったようだ、新暗号の方はまだろくに解読ができてないから、守備隊の移動うんぬんは死海文書の方のみの解読から読み取った情報らしい。」



「しかもだ、移動した守備隊の分の補充戦力も当然予定はされているが、派遣した偵察兵によると現地ではすでにサンタァナが始まってるらしくてな、日に日に暴風がひどくなっているから、補充の守備隊が到着するのもその関係であと10日はかかるだろうとの報告だ。」



「つまり予定されている作戦のタイミングだと、まだ補充の兵力は到着していない、ますます我々に有利ですぞ指令。」



「なるほど...まさに天祐というわけだ、これなら主力は確かに零君を欠く状態でもやれるかもしれないね...。」



カチッカチッカチッ...ホセの手元のリズミカルな音が早くなる。



「うん、二兎を追う者は一兎をも得ずとは言うけれど、我々にとってはいずれのターゲットも見逃すには惜しい御馳走だ。守備兵力の一次的な減少の件もある、成功すれば一気に我々にとって有利になるしね...」






議論の末、結論が出る。



物資奪取作戦は予定通り実行する。


その一方で、オズワルド暗殺任務には零を派遣する。


「ヨルムンガンドなら、この距離でもやれる」


零自身もそう答える。


反乱軍内部では零に対する信頼が厚い。


そして今回の条件は、通常の狙撃手には厳しい。


だからこそ、零を派遣することに大きな異論は出なかった。





やがて編成が決定する。


本隊は予定通り作戦地域へ向かう。


零だけが、少数の支援要員とともに別任務へ向かう事で決定した。


そして作戦ブリーフィング終了後、解散を告げるホセの指示で、特定の人員だけが指令室に残ることとなった。


司令室に残されたのは、ホセ、ラグランジュ大佐、零、そしてルークだけだった。


「……さて」



ホセが静かに口を開く。


その表情からは、先ほどまでの軽薄な笑みが消えている。



「君たちには、少しだけ別の仕事を頼みたい」



四人の間だけで短い打ち合わせが行われる。



零も、ルークも、ラグランジュ大佐も、ホセの話を黙って聞いている。

そして――



◆◆




司令室から廊下に出たザックとガブリエルが話しながら廊下を進む。


ガブリエルが不思議そうに周囲を見回す。


「なぁザック、なんで零と大佐とルークだけ残したんだろうな?」


ザックは肩をすくめる。


「さぁなぁ?」


「ルークはお前の相方だろ?」


「まぁな」


ザックは少し考えてから答える。


「ただ、零のミッションには周囲の警戒も必要だろ。」



「それにヨルムンガンドはデカいし、弾薬も馬鹿みたいにかさばる。ルークを零の狙撃に予備弾薬の運搬係もかねて、随伴させるつもりなんじゃねーか?」



「なるほどな、まぁどのみちあのタヌキ指令の考えることは俺達には分かる訳ねーか。」



ガブリエルは納得したように頷く。



零を数百キロ離れた狙撃地点へ送り込む。


巨大な狙撃銃と大量の弾薬。


その運搬と周囲警戒のためにルークを随伴させる、いままでの零の通常狙撃ミッションでもよく見られた光景だ。




◆◆





やがて指令室から零とルークが退室し、室内にはホセ指令とラグランジュ大佐のみが残る。





「まったくホセ...お前ってやつは...」



紅茶のカップを片手に大佐が長年の戦友の顔を見やる。



「なぁラグ....この作戦はかなりの綱渡りになるはずだ、もちろんボクとしてはあらゆる可能性を考慮して打てる手は全て打つつもりだけど、それでも何が起きるのかわからないのが戦場というものだ。」



「君達をかなり危険な窮地に追い込むかもしれない、それでも少なくとも君達を、犬死にだけはさせるつもりはない...」






「ボクを...信じてくれるかい?」




窓から眼下の村の明かりを眺めながら、ポツリと呟くホセ。



手元で金鎖がシャラシャラと揺れる。



大佐の手元の紅茶のカップが、かちゃりと音を立ててソーサーに置かれる。



「ふん、いまさらだな。今までお前の立てた作戦が俺たちを一度でも裏切ったり失望させたことがあるか?」



「いいや、無いね。」



「今回の作戦が綱渡りなのは確かだが、俺はお前の立てた作戦なら信じる。前線の兵たちの不安や動揺は俺が抑え込むさ、任せておけ。」



パチリっと懐中時計の蓋が閉じられる。



「ありがとうラグ、君がいつもボクの傍らにいてくれて、本当に良かったと思っている。」





◆◆






やがて出発の時が来る。


本隊も、零たちも、それぞれの目的地へ向けて動き始める。


ホセは最後に窓の外へ視線を向ける。


遠くには、冬を迎えようとしている村の風景。


そして、その視線の奥には誰にも見せていない何かがある。



「……さて」



懐中時計を取り出す。



シャラ…


カチッ。


時計の蓋が開く。



巨大なヨルムンガンドのシルエットを担いだ人影が、トラックに乗り込むのが見える。



狙撃地点への移動のために、早めに出発してスタンバイする必要がある。先行して派遣してある偵察兵達と合流するのだ。



最後に人影が司令部の窓に向かって手を振るのが見えた、ホセもまた手を振り返すと、トラックは静かに闇夜へと消えていった。



挿絵(By みてみん)




「いよいよだね」




◆◆




そして――


作戦決行の日を迎える。


反乱軍主力は渓谷へ向かう。



怪しまれないように出撃は夜明け前から数回に分けて行われ、それぞれバラバラの方角に向けて出発する。



協力体制にあるいくつかの村々へ一度向かい、その村で村が保有する輸送トラックなどに荷物を積みかえ、行商や物資の運搬に見せかけて再度出発、作戦エリア手前で合流する手はずだった。



ペイルライダーなどの目立つ軍用車両は、事前に近くの村に移動させ預けてある。


狙撃班は別任務のため、本隊から遠く離れた狙撃予定ポイントへ昨晩から本体に先行して出発している。



おりよく昨日から渓谷付近は、サンタァナが本格的に荒れ狂っている。



これなら政府軍の哨戒も、手薄になっているはずだ。



『玉藻の前作戦』(たまものまえさくせん)――



ホセ指令が練りに練り上げたこの必殺の作戦は、そう名付けられている。



二か所同時作戦、反乱軍の全ての戦力を投じた大作戦だ。



どちらのミッションも失敗するわけにはいかない、こんなチャンスは二度と訪れないだろう。



ホセの手元で懐中時計が音を立てる。



「ではよろしく頼むよ皆、ボクも戦略作戦指令室からクレア君たちと一緒に全力でサポートさせてもらうよ。」



「あぁ、まかせておけホセ、帰ってきたときは山盛りの物資と一緒だ、もう当分は電卓とにらめっこせずに済むから楽しみに待ってろ。」



軽く右手を上げ大佐は車両に乗り込む。



出撃していく仲間たちの背中を見つめながらホセの手の中でカチリと音が鳴る。



「さて...鬼が出るか蛇が出るか...」




◆◆





オズワルドとゾルゲもまた、自分たちの仕掛けた罠が完璧に機能すると確信していた。




『コンキスタドールはエルドラドへ向かえり』



狙撃地点に死神の姿が確認されたことを知らせる暗号電文を手にオズワルドとゾルゲが満足げに笑い合う。



「死神はエサに食らいついたようだな...」



「なんせオズワルド長官の首という最高級のご馳走ですからな、私が死神でも飛びつきますよ。」



ゾルゲが、指にはめたいくつもの宝石を撫でまわしながら応じる。



「....それは君も私の寝首を掻くチャンスをうかがっているという意味かね?」



「いえいえ、めっそうもありません、あくまでものの例えですよ、例え。」




すべての駒が、それぞれの配置につく。



そして誰も知らない。



この瞬間、敵味方双方が描いた作戦と、複雑怪奇な思惑が交差する。



カルテルと政府軍が描いた罠へと飛び込んでいく反乱軍。



、ホセ指令はその知略を持って、いかにしてカルテルの奸計を食い破るのであろうか?



死神に与えられた任務は、果たして成功するのか...




ホセ指令の手元で金の懐中時計は、その時に向けてただ無心に時を刻む。






爆乳酪農家狙撃兵ホルスタイン零-zero- 第三話・「伏魔殿」完。


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