ボクはノーマルだ
カルテルとオズワルドの奸計が、反乱軍を絡め取る。
暗号通信に仕掛けられた思惑、思惑の裏を読み、逆手に取る。
権謀術数渦巻く作戦司令室に、ホセ司令の魂の叫びが響く。
ホセ指令から連絡を受け、第三地下倉庫に赴くラグランジュ大佐。
「おっ、きたね、ようやく完成したよ、ちょいと予算オーバーしちゃったけど、君にも満足して貰えるものに仕上がったと思うよ。」
第二倉庫より広く、様々に資材を収めてあるこの第三倉庫は本格的な改装に向いている。
ホセ指令が壁のスイッチを入れると倉庫内に次々と明かりが灯ってゆく。
「おぉ...!!」
そこに鎮座しているのはかつてのM113装甲兵員輸送車両、反乱軍内愛称ペイルライダーの改装された姿だ。
鹵獲した重戦車から切り出した装甲板をボルト止め、溶接で追加装甲化することで、本来の頼りないアルミ合金製装甲を強化した動く楯である。
追加装甲により重量は11トンから13トンへと増加してしまい、機動性と悪路踏破性能は落ちてしまったが、苦肉の策として装備されていたM2ブローニング重機関銃 を降ろして軽量化。
エンジン強化と足回りサスペンション等の強化によりギリギリの機動力を確保したが、M113の特徴であった渡河能力は残念ながら重量増加により失われてしまっている。
追加装甲は本体のアルミ合金装甲より2cmほどの隙間を開け、かつ適度な角度をつけることである程度の避弾経始性能と対HEAT弾対策の空間装甲の機能を持たせてある。
機動力の低下は他に反乱軍が保有する2両の装甲車が担当し、スーパーペイルライダーは前線での移動する楯として随伴歩兵とともに運用する設計思想だ。
「大佐のお気に召しましたか? 資材不足の問題もあるんで十分とは言えない改装かもしれませんが...」
徹夜で改装作業を完了させてくれた整備兵が油まみれの顔でスパナ片手にまぶしそうに目を細めながら答える。
「いや....十分だ、これなら今後は歩兵が携行できるサイズまでの小銃弾は恐れずに済む、こいつを盾にしての多少強引な突撃も可能になるぞ!!限られた資材の中でよくやってくれた。」
と整備兵をねぎらうラグランジュ大佐。
「よぉし、かっこいいぞスーパーペイルライダー!!活躍を期待しているぞ!!」
満足そうに頷く大佐を見ながらホセが笑う。
「本当にその名前にするのかい?」
といいつつホセもまんざらでもなさそうな表情だ。
「こいつスーパーペイルライダーって名前にするんスか? 強そうで良いじゃないですか!!」
と整備兵。
ホレ見たことか、と言わんばかりの表情でホセ指令を見るドヤ顔の大佐。
「おっ! かっちょ良くなってるじゃんペーちゃん!」
素っ頓狂な声に全員が振り向くと、予想どおりの顔がドアを開けて立っていた。
「フルアーマーペーちゃんだな!! 林家ペーとパー子みたいでイカスー!!」
嬉しそうにペイルライダーを見上げているのはもちろん零だ。
「何だそのハヤシヤペーってのは?」
「確か...日本のコメディアン夫婦の名前だよね零君?」
大佐の疑問にホセ指令が答える、妙に日本文化に詳しい男だ。
「だ、だめだそんな緊張感のない名前は!! コイツの名前はスーパーペイルライダーなんだよ!! これは上官命令だ!!」
慌てて手塩にかけた兵器の名誉を守ろうと訂正する大佐、また胃が痛む...
ぐっ...
ラグランジュ大佐のすそを何かがつかんだ。
背後にいる零が、巨漢の大佐のすそをつかんで何かを期待するような目で見つめている。
明らかに身長が縮んでいる。
「......」
目をキラキラさせながら、ぢーっと大佐を見上げる零。
「だ、だめだそんな目で見ても! こいつの名前はスーパーペイルライダーなんだよ!!」
「......すーぱーぺーちゃん......」
零の頭に、なぜか生えてきたハムスター耳がピコピコと動いている。
「だめだ!! へ、兵達の士気が...兵器としての威厳と名誉が...」
「......ぺーちゃん......」
さらに見上げる零の眼が、何かを期待するようにキラキラと輝く。
大佐が零から目を背けながら、脂汗流しつつ必死で拒絶する。
「う...ウヲヲヲヲヲヲヲヲ!!」
背後の零を振り切り、ペイルライダーの前に仁王立ちする大佐。
「ふ、振り切った...!!」
「か...勝ったぞぉぉぉぉ!! 俺は勝ったんだぁぁ!! お前の名誉は守りぬいたぞぉぉぉぉ!!」
ペイルライダーの前で力強く両拳を突き上げ、勝利の雄叫びを上げるラグランジュ大佐。
「......ちっ。」
非ッッ常ぉぉぉに悪っそうな表情で、零が小さく舌打ちをする。
「なにをやってんだお前は...」
そんな二人を呆れた表情で見ながら、ガブリエルが呟いた。
「あの!ホセ指令、たった今諜報部隊から連絡が入りました!!」
司令部付きのホセの秘書、クレア嬢が入室してくる。
「おや、こんなところにまで来るとは君にしては珍しいねクレア、ボクに用なら指令室に帰ってから伝えてくれれば...」
「ええ、ですがこの情報...すぐにお知らせしたほうが良いかと思いまして...」
クレアから渡された通信暗号文を一瞥した瞬間、ホセの表情が変わる。
「うん...よし、ちょうどいい。大佐と零君もちょっとこのまま指令室に来てもらおうか。」
◆◆
指令室でホセが暗号通信を平文に直して大佐に見せる。
「どう思う...? 協力体制にある村の近くで、最近うろついてた政府軍の偵察小隊を目障りなんで機会を見て襲撃するよう指示してあったんだけど...」
「その際、車両内から見つかった暗号乱数表と、なにかの暗号通信ログらしいんだけど...。」
「ほう、そりゃツイてるな、で、何か役に立ちそうな情報でも含まれていたか?」
興味深そうに、ラグランジュ大佐が身を乗り出す。
「うん、それがね、国境付近 で隣国との戦闘がいつ始まるかわからないから、それに備えて急速に物資の備蓄が進められている後方の貯蔵施設についての暗号通信らしいんだよ。」
「たぶん北方の国境だと思うんだけどね....あそこは以前から隣国の国軍とにらみ合いが続いていて一触即発の火薬庫だから。」
「近々隣国の侵攻作戦でも察知したのかもしれないな....それに備えて備蓄を進めているのなら納得はいく情報だね、どう見るラグランジュ君?」
メモに目を通すラグランジュ大佐の目が輝く。
「こ....こりゃぁ!! これだけの備蓄物資を抑えることができれば向こう10か月近くは俺達が全力戦闘できる物量だぞ!! しかも急ごしらえの貯蔵施設で、隣国軍の目を引かないように守備隊も最低限だから防備も薄く、ロクに隠蔽もされてないと来てる...おいホセ!! こりゃお宝の地図みたいなもんだぞ!!」
興奮のあまり、ついホセと呼び捨ての親しい物言いが出る。
「うん、万年資金資材物資不足に喘ぐボクらにとってはとっても魅力的な案件といえるね...。」
ホセ指令が椅子を横に回して取り出した懐中時計を左手で弄びながら別資料の暗号乱数表を眺める。
「...で、こっちの乱数表なんだけど、零君これ見覚えないかい?」
と零に資料を手渡す。
「ん...あれ? これ、たしか夏ごろの作戦で見た暗号乱数表と似てない?」
零が手にした乱数表を見て首をかしげる。
零の手元を大佐も覗き込む。
「そういえば...なぁクレア、最近入隊させた元政府軍の兵士がいたろ? 彼と...あと諜報部隊の隊員も一人呼んでくれんか。」
クレアが内線で呼び出した二人の兵士が、ほどなくして指令室に入室してくる。
元政府軍から転身した彼は反乱軍との戦闘で負傷し、撤退する味方から見捨てられていたのを捕虜として身柄を抑えたのだ。
彼の人質に取られていた家族はすでに解放作戦で収容所から解放されていたこともあり、もはや政府軍に義理立てする理由もないとしてホセによる説得に応じ、反乱軍に参加した変わり種である。
公的には彼はその戦闘で戦死したとホセが欺瞞情報を流してあるため、いわば幽霊である。
反乱軍に手を貸していることを悟らせぬために正面切っての政府軍との戦闘には参加させるわけにはいかず、元政府軍としての経験を生かして主に諜報戦や潜入破壊工作などの裏方仕事に従事しているのだ。
彼に資料を見せ、意見を求めるホセ。
「どうかな? それ、君の知っている暗号文なんじゃない?」
「ええ、確かに知っている暗号形式です。かつて配属されていた基地でも日常的に使われていた、政府軍では最もよく使われているものですね。」
「通称『死海文書 暗号』と呼ばれていたものです。」
「かなり古くから使われていたものなのかね?」
大佐が尋ねる。
「ええ、私があの基地に配属される前から使われていたかなり古い通信プロトコルだと聞いています、ただ...」
「やっぱりあたしが知ってる夏頃の作戦で見たやつとは、ちょっとだけ違うよねコレ?」
零が指摘するとその兵士も頷く。
「はい、私が使っていた頃のものと少し違っているようです、ただそこまで大きな変化はない。平文に直さなくても私はこの改変された暗号文の7割程度は古い知識のままでも解読出来ますから。」
「つまり夏の作戦ですでに解読されている暗号文と乱数表を、未だにほぼそのまま使っているということだね...」
「諜報部員君、傍受している最近の政府軍の通信内容にこの暗号形式はまだ頻出しているのかな?」
もう一人の兵士に意見を求めるホセ。
「いえ、三か月ほど前からはこの暗号プロトコルはほぼ見かけなくなっており、現在は未知の新規のものと思われる暗号が使われているはずです。」
「もちろん我々も解読に全力を注いではいますが、まだほとんど解読は進んでいません、不甲斐なくて申し訳ありません...。」
「あっ、いやいや、君達を責める意図はないんだよ、まだ使われ始めて数か月しかたっていない新規の暗号文を解読しろってほうが無茶だからね、気を悪くしないで欲しい。」
慌ててホセがフォローする、実際暗号解読はそれほど簡単なものではない。
基本的な暗号解読の手法は大量に暗号を集め、その中に頻出する単語やキーワードの出現傾向を確率論的に抽出し、意味を推測していく手法が一般的だ。
つまり集めた暗号文サンプルが、多ければ多いほど解読精度や推測精度が上がる訳だが、どうしても一定の情報収集期間、大量の暗号通信文サンプル、統計データを取る時間が必要なのだ。
「その古い暗号プロトコルだけで解読できる部分だけを解読してみてもらえるかな? 君の知らない改変部分は推測とかはせずに、そのまま古いプロトコルが適用できる部分のみを平文にして欲しいんだ、頼むよ。」
ホセが懐中時計の金鎖をシャラシャラと弄びながら、元政府軍兵士に言う。
「はっ、では読み上げます。」
元政府軍兵士が読み上げた平文を聞くホセの手元で、金鎖がキラキラと蛍光灯を反射する。
「やはりね...改定された部分はこの情報において特に大した意味のない情報の部分ばかりだね。物資貯蔵施設の場所や守備隊、物資の規模などの重要情報に関する部分は古い死海文書 プロトコルから変わってない...」
懐中時計の蓋が、リズミカルにカチリカチリと音を立てる。
「...なにか気になることでもあるのですかホセ指令? 重要部分がすでに解読済みなら、俺たちにとってはむしろ好都合ではないですか。」
ラグランジュ大佐が、ホセ指令に不審そうな表情を向ける。
「うん....そうだね、好都合だ、好都合すぎると思わないかラグランジュ君?」
「すでに新しい暗号が使われているにもかかわらず、なぜかこの重要暗号通信にわざわざ五か月近くも前に解読されている可能性の高い暗号を使う...」
「しかもご丁寧に不信感を与えないように一応少しだけ改定して死海文書Ver.2とでもいわんばかりに装ってはいるものの、なぜか重要な部分は古いプロトコルを使って我々が簡単に解読できるようにしてくれている...」
「うん、あたしもなんか気持ち悪い気がするなぁこの感じ...」
零が眉をひそめる。
「...罠、だと? ではこの貯蔵庫へは手を出さないほうが良いかもしれんな...」
大佐の表情も険しくなる。
「いや、まだそうと決まったものでもないさ、実際条件としてはとっても魅力的だし、我々にとってはこの物資量は喉から手が出るほど欲しいもの、なんとしてでも奪取したいのはボクとしても本音さ...」
「ラグランジュ大佐、貯蔵所襲撃作戦に必要な兵力や燃料弾薬の見積もりをお願いできるかな? とりあえず作戦の準備だけは進めておいて損はないだろうからね、こちらでも作戦の立案を進めてみるよ。」
「あぁ、諜報部隊のお二人も、引き続き新暗号のサンプル収集と解読に努めてほしい、なにか少しでも異常な通信を傍受したら必ずボクに知らせてほしいんだ。」
「はっ! 了解しました司令官殿! 引き続き任務に邁進いたします!」
直立不動で敬礼した二名の諜報部員たちが退室する。
「さて大佐、まだ細かいことは決めていないが、作戦のタイミングは
サンタァナの時期に合わせようかと思っているんだ。」
サンタァナ、主にアルゼンチン中西部などで見られる非常に乾燥した高温のフェーン風であり、本来この現象はゾンダ風と呼ばれている。
6000m級のアンデス山脈を越えて吹き降ろすこの風は、数時間で最大20度近くも気温を上昇させる極めて乾燥した風、ドライサウナとも呼ぶべき烈風現象で、よく山火事などの原因ともなっている厄介な自然現象だ。
このゾンダ風と同じような現象がこの地域でも特定の時期によく観測されており、この地域では「サンタァナ」と古くから呼ばれているのだ。
「なるほど、サンタァナのあの凄まじい熱風が吹き荒れる平地ではとても作戦行動はおぼつかんが、それは敵も同じ。猛烈な風の音が俺たちの進軍の音と気配を隠してくれそうだな、しかしどうやって進軍するつもりだ?」
「クレア君、付近の地図を...ああ、ありがとう、ここだ。」
渡された地図をテーブルに広げ、その場所を指さす。
「そうか...渓谷か、そこを通れば確かに平地を吹き荒れる烈風も多少は影響を抑えられそうだな、逃げ場のない渓谷に主力部隊を入れるのは俺としてはちょっと勇気がいるが、逆にだからこそ敵もまさか渓谷を抜けてくるとは思わない、か...!!」
顎に手を当てうなる大佐。
「うん、おまけに渓谷の外では軍事行動が不能だろうから切り立った渓谷の上から左右挟み撃ちにされる心配もまずないだろう、サンタァナの影響下では長距離の通信は無理だから天然の通信妨害にもなるし、厄介な偵察ドローンや全天候対応型のヘリであってもまず無理。」
「航空兵力も使用不能だ、そうなれば普段から少数精鋭での作戦行動に慣れているこちらのほうが有利になるはずだよ、...ん?」
地図を見ていたホセが何かに気づく。
「ここ...貯蔵施設の背後辺りに...盆地? のような地形があるね...渓谷からは少し離れているが輸送車両を使えば30分はかからない程度の距離か...」
大佐が地図を覗き込み答える。
「ああ、そこは地盤が悪い、トラック程度ならともかく戦車などの重量物で乗り入れると、スタックして抜け出せなくなるぞ。それに戦略的には特に意味のない場所だと思うが...。」
「うん...。」
ホセは答えず、ただ黙って地図に視線を落とし続けている、手元でカチリカチリと懐中時計の蓋が音を鳴らす。
「良く解らんが、測量時に偵察兵にあたりの様子を撮影させてある。おいクレア。」
クレアが該当資料の写真を、壁のスクリーンに表示する。
ホセが手元のマウスで、次々と該当地形の写真を切り替えていく。
ホセの手がぴたりと止まる。
「この写真...ここに映っている植物はコペルニシアだね。」
葉から大量の天然ワックスを分泌し、過剰な水分や乾燥から身を守る特性を持つヤシの一種だ。
「それに写真だと地面は乾燥してひび割れまでできているけど、あちこちにすり鉢のような形をした巨大な葉...これはオオオニバスだね、それの枯れたものがへばりついているな...」
「おまえ植物学の素養まであるのか? 良く解らんがそれがどうしたんだ?」
「いやまぁ昔何かの本で読んだ聞きかじりの雑学知識さ、うん、コペルニシアは半乾燥地帯の盆地によくみられる植物でね、雨期などになると一転して大湿地帯になる場所によく自生しているヤシなんだ。」
「枯れたオオオニバスも同様、水に浮くための構造を持った植物がなぜか陸地で枯れている...つまりこの盆地は写真では乾燥しているけど、しょっちゅう水没している地形であることの証拠だね。」
「たぶん盆地であることも相まって、雨の時にはちょっとした湖みたいになってるはずだよ。」
「ほぅ...なるほど、たしかにそれなら地盤がぬかるんででスタックしやすい土地なのも納得できるな。」
「見た目ホモメガネなのにやるじゃん、Mr.ホモのくせに生意気だぞぅ!!」
ジャイアニズム全開で零が横槍を入れる。
「ホモって零君が勝手にそう呼んでるだけじゃないか、あとボクはノーマルだよ。」
特に気にするでもなく、さらりと大人の対応で応じるホセ。
「いいから余計なチャチャをいれるんじゃない零、で? それがどうしたんだホセ?」
「はいはい、どうせ年寄りは厄介者扱いですよ....あたしゃ寂しいよ....」
大佐の制止にぶー垂れる零。
「いや、少し気になっただけだよ、ちょっと雑学知識を自慢したかっただけだから気にしないで欲しい。」
「よし、とりあえず現時点で必要な打ち合わせはこんなところかな。大佐、さっき言ったように作戦に向けた見積もりを頼むよ、ボクの方も作戦を練り上げてみるよ。」
簡単な今後の打ち合わせをしたのち、会議はお開きとなる。
夜のとばりが降りつつある村を窓から眺めながらホセは黙ってその光景を眺める。
もう冬だ、どの家々も冬ごもりと年末の忙しさに備えてその準備に大わらわだ。
シャラシャラ...
カチッ
カチッ....
手元で金の鎖を弄びながら、ホセがポツリと呟く。
「ねぇクレア...ちょっと君の意見を聞きたいんだけど...。」
いつになくまじめなホセのトーンに、やや緊張の面持ちで先ほどの会議の議事録をまとめていたクレアが顔をあげる。
「はい、なんでしょうか指令? ただ私は軍事知識はありませんのであまり参考にはならないかもしれませんが...」
カチッ
カチッ
カチッ....
ホセの手元のリズムが早くなる。
「いや、そうじゃないよ、聞きたいのは...。」
「ボクってさ...」
パチンッ!
ホセの手元で、ひときわ大きな音を立てて懐中時計の蓋が閉じられる。
「そんなに見た目ホモっぽいかなぁ...?」
季節はもうすぐ冬だ。




