ミルクタンク・デスサイス
次なる獲物はアイツ…ヨルムンガンドの照準が、装甲板の最も脆弱なポイントに合わせられる。
御子神 零の瞳が弓のように絞り込まれ、砲口より噴き出し、巨大蛇の毒牙が放たれるーーー
爆乳酪農家狙撃兵ホルスタイン零-zero- ミルクタンク・デスサイス
「まぁまぁ、百聞は一見にしかず、そろそろ零の奴次の獲物に狙いを定めたみたいだぜ...オイ、そこは危ねぇちょっと移動しろ。」
「移動って、どこに?」
「その位置だと発砲の際のバックブラストで俺達もタダじゃすまん、零の左手斜め後方に位置するんだ。」
「零と組むときの鉄則だ覚えとけ、今後もあのミルクタンクの活躍を拝みたいんならな。」
「ふん、どっちのミルクタンクの事言ってんだか…」
「両方…さ。」
軽口を叩き合いながら安全な位置に2人が位置したことを気配で確認する零。
スコープはのぞき込んだままだ。
(…ヘリが上がってきた…戦車や装甲車ならご馳走様でしたなお客さんだけど、ヘリは不味い…ヨルムンガンドの仰角外に上がられる前に早目にご退場頂かないとね…)
呟く零の目に殺意が満ちる。
スコープの向こうに捉えた対戦車攻撃ヘリの機首下部に搭載された20mmチェーンガンがパイロットの視線と同調してせわしなく上下左右に動いているのが見える。
(妙に低空を飛んでるわね...なるほど、足の遅いヘリではこちらの射程外まで逃げ切れないと踏んで、先にこちらを発見して先手を取る方に賭けたか....だけど...!!)
巨大蛇ヨルムンガンドが咆哮を上げる。
砲撃と同時に零の豊かな胸にヨルムンガンドのストックが沈み込む。
零「ぬ…くぅっ…!」
零の爆乳をもってしても完全には殺し切れない巨大蛇の獰猛なうねりが零の上半身を地面からえび反りに軽く浮き上がらせる。
同時に零の周りに円状のバックブラストが発生し、付近の雑草や小石が舞い上がり後方へと弾き飛ばされる。
ゴッッッッ!!!
横っ腹を見せていたヘリの機体に、空間ごとえぐり取られたかのような巨大な破孔が穿たれる。
轟音とともに爆散するヘリ。
ドッ...
海老反り、半ば浮き上がっていた零の上半身が再び大地に戻ってくる。
「...あちっ...!!」
バシュウウウゥゥンッ!!
零の口から熱い吐息が吐き出されると同時に、ヨルムンガンドの機関部からもスチームパージピストン構造により蒸気が噴き上がる。
傍らの偵察兵2人が声を上げる。
「うっひょー!! いつもながらいい眺めぇ!」
「す…すげぇ…叩き落とすどころか…跡形もなく粉砕しやがった…!」
同時に驚嘆の声を上げつつも男達の視線は別々の場所を見ていた、1人は哀れなヘリが消滅した煙だけが漂う空を、もう1人は…
「なるほど、ゼロに出撃命令が出たときあんたがやたら『はい! はい! ボクがバディを務めまーす!』とかノリよく手ぇ上げまくって、結局立候補者だらけでくじ引きになった理由がわかったよ…」
「はっはっはっ、良いじゃねーか、分かるだろ同じ男同士? くじ引きに参加しなかったお前をバディ教育の一環と称して連れてきてやったんだ、感謝しろよぉ?」
と鼻の下が伸び切った表情で肩を叩く。
「よっ…と、さすがにこれ以上の欲張りは命取り、潮時ってやつ…さぁズラかりましょ二人とも!」
巨大蛇、ヨルムンガンドを肩に担ぎつつ零が歩き出す。
「あいよ、この先に足を手配してある、現地の協力者とその車だから怪しまれることは無いだろうさ。」
「さすがに手際がいいわねザック、おかげで狙撃に集中できて助かってる、いつもバディ役済まないわね。」
ヨルムンガンドを分厚い革製の専用背部ラックベルトの金具で固定しつつ歩き出す零。
「なぁに、ミルクタンクの活躍を拝めるんならお安い御用だ、今度俺にも触らせてくれよ。」
と手をワキワキさせる。
「やめときなさいって、あんたの大胸筋程度じゃこの暴れ馬は無理よ、鎖骨折ってしばらくベッドの上がオチよ。」
「そんなことねぇって! こう見えてミルクタンクの扱いにゃ自信あるんだぜ? にしても暴れ馬かぁ、さっきもスゲー暴れてたもんな、なんならベッドの上は今からでも…」
微妙に噛み合わない会話を続けながらジャングルの中を進む二人の少し後ろをついていくもう一人の偵察兵。
「…次の狙撃任務のときは俺も立候補しようかなぁ…」
新人偵察兵ルークは小さな声でそう呟きながら二人の後を追い、ジャングルに消えていくのだった。
爆乳酪農家狙撃兵ホルスタイン零
第一話 死神の鎌 完




