それぞれの道
今夜だ――
ミゲルは時計を見る。
ガブリエルから聞かされていた時刻まで、もうすぐだった。
夜間歩哨の時間を利用して、これまで何度かガブリエルとも接触し、打ち合わせを重ねてきた。
今夜、この収容所に反乱軍が夜襲を仕掛けてくる。
すでにミゲルは、生霊として見込みのありそうな兵士たちに密かに接触し、何人かを仲間に引き入れていた。
彼らは皆、どこかの収容所に家族や恋人を人質として取られている者たちだった。
中には、よりによってこの収容所に家族が収監されている者もいる。
毎日、自分の家族に銃口を向けて監視する仕事に、極度の疲労を覚えている者たち。
そんな兵士たちは、僅かな躊躇いの後、ミゲルの誘いに乗った。
今夜の夜襲に呼応して、彼ら生霊も動き出す手はずになっている。
予定時刻まで、あと10分……。
PC端末を叩きながらも、ミゲルは壁掛け時計を何度も見る。
「随分時計を気にしてるようだが、お気に入りの番組でも始まる時間か?」
事務所に入ってきたメンドーサ中尉が声をかけてくる。
もちろん、手にはいつもの缶コーラ。
「何なら、ちょっとぐらい大目に見てやるからテレビ見てきていいぞ」
いつものように、いい加減な態度と口調で笑う。
「あぁ、いえ。そういう訳ではないんですが……勤務時間中のテレビはどうかと思いますよ。中尉はよくテレビ見てるんですか?」
「そりゃまぁ、たまには息抜きも必要だろ?」
「たまに、ですか……」
何か一言言ってやろうかと思ったが、やめた。
勤務時間中にテレビを見てサボっている中尉と、今夜の襲撃を教えずに軍を裏切ろうとしている自分。
どちらが罪深いのだろう。
そう思うと、何かを言う気にはなれなかった。
他人に偉そうに言える立場じゃないだろう……。
「どうも、やはりお前は固っ苦しくていかんな」
中尉はバツが悪そうに頭を掻くと、タバコに火をつける。
そしてコーラの空き缶を灰皿代わりに、一服始めた。
事務所内は禁煙なのだが、これも中尉なら今さらだ。
「なぁ、ミゲル……」
「はい? なんですか、中尉?」
「この前の解放された娘のこと、何度も言うが気にするな。少なくとも、お前が悪い訳じゃないことだけは、はっきりしている」
「はい。分かっています……でも、中尉は何も感じないんですか?」
「俺だって、これで良いだなんて思っちゃいないさ。だけど、どうしてやることもできないのも事実だろ?」
中尉は煙を吐き出す。
「お前があの娘を、政府軍の軍服を着たまま慰めてやれるのか?」
「……」
「余計に怒らせるだけだぜ」
中尉は続ける。
「お前が、あの娘の兄貴を生き返らせてやれるのか?」
もちろん、ミゲルには答えられない。
中尉の言うことは正論だった。
達観したような中尉の言葉に、以前のミゲルなら反論したかもしれない。
だけど、今は違う。
政府軍の軍服を着たままでは無理でも。
兄貴を生き返らせてやることはできなくても。
新しい悲劇が生まれるのを、少しでも減らすことはできるかもしれない。
少なくとも、そのために戦うことはできる。
幽霊となった、今ならば――。
「お前も俺みたいに、多少はテキトーにやることを覚えたほうが良い」
中尉が言う。
「でないと、お前みたいな生真面目で責任感の強い奴ほど、あれやこれや全部自分一人で背負い込んで、勝手につぶれていくんだ」
そこで一度、言葉を切る。
「俺は何人も、そういうやつを見てきて……」
ドズンッ!!
中尉の言葉を遮るように、何かの爆発音と衝撃が事務所を揺らした。
(始まった……!!)
ミゲルの身体が硬くなる。
もう、後戻りはできない。
「何だ、今の音!?」
メンドーサ中尉が、音の聞こえてきた方角へ視線を向ける。
事務所の外の廊下も騒がしくなる。
「おいっ、何だあの爆発音!?」
「分からん、とにかく歩哨に連絡を取れ!!」
「武器も持っていけ! ちゃんとヘルメットも被っとけよ!!」
何人もの兵士が慌ててヘルメットの顎紐を締め、銃を手に走っていく。
そろそろ、他の生霊たちもそれぞれの役割を果たすために動き始めているはずだ。
ミゲルは手近な無線を手に取り、本日の夜間歩哨のスケジュールを素早く確認すると、連絡を取る。
「……分かった、こちらもすぐに援軍に向かう!!」
無線の向こうでは怒号が飛び交っている。
突然、どこからか攻撃を受けたらしい。
もちろん、ミゲルにはその攻撃の正体は分かっている。
「……中尉。歩哨が攻撃を受けたようです。単発の攻撃ではなく、本格的な攻撃だそうで、援軍の要請が出ています。我々も行きましょう」
ミゲルは近くに置いてあった愛銃を手に取る。
銃には事前の打ち合わせで空砲を装填してある。
他の生霊たちも同様だ。
「分かった……ちっ、めんどくさい夜になりそうだ……!!」
中尉も自分の銃を手に取る。
二人は事務所を飛び出し、収容所の入り口を目指して走り出した。
タタタタタタタタタ!!
外では、すでに銃撃戦が始まっているようだ。
軽快なフルオート射撃音が響いている。
ミゲルは、自分の被ったヘルメットに貼り付けた蛍光塗料のテープを確認する。
生霊であることを示すマーク。
これを付けている兵士は、銃もすべて空砲となっているため、反乱軍からは狙われないよう事前に打ち合わせてある。
ミゲルは手近な土嚢の陰に飛び込み、物陰に潜んでいる敵らしき影に向かって射撃を開始する。
近くの見張り櫓に立っている人影にも、ヘルメットに蛍光塗料のテープが貼られているのが確認できた。
ミゲルがチョコレートバーを渡した兵士だ。
彼もまた、見張り櫓の上から空砲を撃っている。
外から撃っていた人影の中から、誰かが飛び出した。
そのまま収容所の入り口へ向かって走っていく。
ガブ……!!
マズい。
入り口には、兵士三名が待ち構えているはずだ。
銃を抱えて入口へ走っていくガブリエルに向けて、ミゲルが叫ぶ。
「おい!! 入口に向かったやつがいる!! 止めろ!!」
ガブリエルに直接注意を呼び掛ける訳にはいかない。
だが、ガブリエルはミゲルの声と、その意味するところに気づいたのだろう。
すぐには入口へ飛び込まず、その脇に身を隠した。
そして、手榴弾のピンを抜く。
入口へ投げ込む。
ガブリエルは身を伏せた。
ドンッ!!
入口から爆風と鉄片が噴き出し、内部からの銃撃が止む。
そのまま何名かの仲間を伴って突入する寸前、ガブリエルがちらりとミゲルの方を向いた。
礼を言うように、ニヤリと笑う。
うまくやれよ、ガブ……。
そう念じながら、ミゲルは再び暗闇の人影に向けて、土嚢の陰から空砲を撃ち続ける。
「くそっ!! 反乱軍の襲撃か! まだ無事だな、ミゲル!?」
メンドーサ中尉が、顎紐を掛けないままのヘルメットを手で押さえながらミゲルのそばへ来て、土嚢の陰にしゃがみ込む。
「中尉……えぇ、おそらく反乱軍でしょうね」
ミゲルたちが隠れている土嚢から、少し離れた位置の遮蔽物が吹き飛ぶ。
迫撃砲だ。
収容所入り口の鉄の扉は、すでに破壊されている。
最初の爆発音は、迫撃砲でこの扉が吹き飛ばされた音だったのだろう。
せわしなく動くサーチライトが辺りを照らす。
だが、すぐに銃撃を受けて破壊される。
「中尉、連絡は? 援軍無しでは、このままでは守り切れないかもしれません」
「反乱軍…かどうか、まだ断定はできませんが、襲撃者の戦力は思ったより多い...」
もし援軍が要請されているのなら、なんとかその情報をガブリエルたちにも伝えねばならない。
「すでに援軍要請はしてあるようだが、距離が遠すぎる……俺たちだけで何とかするしかねぇ…」
中尉のその言葉に、ミゲルは内心で安堵する。
だが、それを表情には出さない。
「それよりもな、ミゲル…」
メンドーサ中尉が手榴弾を投げ、ミゲルのほうに顔を向ける。
「上の方からの命令だ。守り切れないなら、収監者を処刑しろってな…」
「処刑!? そんな…メチャクチャだ…」
絶句するミゲルに、中尉が笑う。
だが、その目は笑っていない。
「上の考えそうなことだ。人質を奪還されるぐらいなら、皆殺しにして、今後の襲撃をさせないように見せしめにしろ、ってことだろうな」
中尉がペッ、と唾を吐く。
「それを…俺にも命じるのですか、中尉は?」
ミゲルがメンドーサ中尉の眼をまっすぐ見つめる。
土嚢に突き刺さった銃弾が、土煙を上げる。
「ふん…ミゲル曹長」
メンドーサ中尉が口調を改める。
「は、はい!!」
思わずミゲルも居住まいを正す。
「貴官はこのまま、この持ち場を死守せよ。私は警備が手薄な裏口の援軍に回る」
中尉は一拍置いた。
「我々は命令を遂行しようとした。しかし、すでに収監者の房の周りには敵が侵入しており、近づくことができない。よって、現場の判断で持ち場の維持を優先するものとする。」
「中尉…」
「けっ…多少の理不尽には目をつぶって…とは言ったがよ、さすがに俺だって、こんな滅茶苦茶な命令なんざ聞けるかよ。」
中尉はニヤリと笑う。
「俺たちは任務を遂行しようとしたが、無理でした。これでいいのさ」
「なんなら上への報告は、『コーラ片手にサボってました、サーセンwww』で済ますさ」
「俺には人質に取られた家族もいないしな。お前は俺の上官命令を聞いただけだ」
「…はい!!」
ミゲルの顔が明るくなる。
「じゃあな。俺はこのまま裏口の援軍に行く。裏口に装甲車が突入してきたらしい」
中尉は立ち上がる。
「こんなクソッたれな戦いで死ぬんじゃないぞ、ミゲル」
そして、ふと思い出したように付け加える。
「あぁ、それとな…ヘルメットの顎ベルトは外しとけ。」
「ベルト……ですか?」
「軍の教本じゃ、しっかり締めろと書かれている、だろ?」
中尉は自分のヘルメットを軽く叩く。
「だけど戦場では、それが常に正しいとは限らねぇのさ」
その瞬間。
見張り櫓がグレネードの直撃を受け、吹き飛んだ。
爆風が、ミゲルたちの隠れている土嚢の辺りに散らばっていたゴミを吹き攫っていく。
慌てて中尉が頭のヘルメットを飛ばされないよう手で押さえ、土嚢の陰に伏せる。
頭上まで飛んできたサーチライトのガラス片から身を守る。
「ほれ、見たろ?」
中尉が笑う。
「敵さん、爆発物もたんまり持ち込んでやがる。」
「顎ベルトを締めてるとな、爆風で煽られてヘルメットが引っ張られた拍子に、首の頸椎が抜けたり、首の骨をへし折られたりする場合があるんだ。」
中尉はヘルメットを押さえながら続ける。
「それなら、ヘルメットを飛ばされるだけの方がマシなのさ……じゃぁな」
そう告げると、メンドーサ中尉はミゲルに右手を上げる。
銃撃がやんだ隙を見て、遮蔽物を伝いながら裏口へ向かっていった。
突入したガブリエルたちは、内部の敵兵を銃撃と手榴弾で排除しながら、収監者たちが捕らえられている房を目指す。
房の位置や、そこに繋がるルートは、事前に生霊たちから情報を得ている。
ガブリエルの率いる小隊の前方で、廊下の角にいた敵兵が突然、悲鳴を上げた。
慌てた様子で後ろを振り向いた敵兵が、何かを喚きながら背後に向けて銃撃を始める。
「今だ!! 撃て!!」
ガブリエルたちが、背後を見せた兵士を銃撃で仕留める。
その向こうから、生霊の印をつけた兵士と共に現れたのは、反乱軍兵士ではなかった。
普段着を着た、どう見ても一般人だ。
男女、老人、子供までいる。
銃を握っているのは若い男性だけだ。
皆、やつれた表情をしている。
若い男たちだけは、ぎこちない手つきで銃を握っていた。
生霊たちが襲撃に呼応して収容房を解放し、人質たちにも武器を手渡して、内部からの撹乱を行っているのだ。
もちろん、人質のほとんどは銃など使ったこともない一般人だ。
それでも、生きるかどうかの瀬戸際である。
少しでも勇気のある者は、慣れない銃を手に取る。
彼らもまた、家族を守るために戦っているのだ。
ガブリエルの指示で何名かの部下を護衛につけ、輸送車両やブラッドレイが待機している出口へ分散して移動を開始させる。
何名かの反乱軍兵士が倒れた。
慣れない銃の扱いで、自分の足を誤って撃ち抜いてしまう人質もいた。
それでも、死者を出すことなく輸送車両までたどり着く。
政府軍の士気はもろく、投降する者もいた。
移動する人質たちを見ると、目をそらして銃撃をやめる者もいる。
中には、上官と共に彼らを見逃す政府軍兵士もいた。
彼らとて、自分の家族ではなくとも、人質に取られている者のほとんどが、ただの無辜の一般市民であることは理解しているのだ。
いかに職業軍人といえど、大義なき戦いに忠誠心だけで最後まで戦える人間は、そう多くはない。
やがて、聞こえてくる銃声や爆発音もまばらとなり、制圧・解放作戦は終了した。
生霊たちの内部撹乱もあり、最低限の犠牲者で作戦は成功したと言っていいだろう。
襲撃開始と共に、生霊たちは収容所内の通信を遮断。
欺瞞情報を現場の混乱に偽装して発信し、収監者たちの房を解放。
重火器を収めた武器庫の鍵を隠し、送電線を切断し、弾薬庫を爆破した。
「終わったな……」
動く者のいなくなった収容所で、ガブリエルがミゲルに話しかける。
もう動いている人影は、反乱軍兵士と最後の収監者たちだけだった。
ガブリエルは手に何枚かのドッグタグを持っている。
生霊や、幽霊志望の兵士から集めたものだ。
ガブリエルはそのドッグタグを辺りの血だまりにつけ、あえて血まみれにする。
そして、志望している政府軍兵士たちの周りに落としていく。
「これで、このドッグタグに刻まれている兵士はMIA認定されるはずだ」
「ああ。最近の政府軍の追跡調査なんかデタラメもいいところだ。これで幽霊になった兵士の足跡をたどられる心配はないはずだよ」
ミゲルも自分のドッグタグを、頭部を吹き飛ばされ身元不明となった兵士の遺体のそばに落とす。
代わりに、その遺体が本来身につけていたドッグタグを回収する。
この兵士にも、人質に取られた家族はいたのだろうか。
人質に取られていなくても、待っている家族がいるのかもしれない。
なにより、短い間だったが、この名も知らぬ兵士もまた、ミゲルの同僚だった。
ミゲルは、亡くなったかつての同僚たちのために目を閉じ、十字を切った。
安らかに眠ってほしい……。
俺は今日から幽霊となって、あんたたちとは違う道を行く。
「ゆくのか、ミゲル」
背後から不意に声をかけられ、目を開けてミゲルは振り向く。
メンドーサ中尉だった。
顔中泥まみれ。
服はあちこちが破れ、血も滲んでいる。
反乱軍兵士たちが一斉に銃を向ける。
「待ってくれ!! この人は……この人は、そうじゃないんだ……」
ミゲルが周りを制する。
しかし、「敵ではない」との言葉までは出てこない。
ガブリエルも中尉に銃口を向けてはいる。
だが、引き金にはまだ指をかけていない。
もしこの男が政府軍のままなら、声など掛けずに後ろから銃撃していたはずだ。
だが、銃は持っていない。
素手だ。
何より、その眼には戦意も敵意もない。
「おっと、見てのとおり、もうやる気はねぇよ。撃たないでくれよな」
メンドーサ中尉が両手を上げ、抵抗の意思がないことを示す。
「投降するのか? だが、あんた職業軍人だろ? 家族は人質に取られてはいないんだろう?」
ガブリエルと部下が、油断なく中尉に銃口を向けたまま聞く。
「メンドーサ中尉、中尉もこのまま俺たちと一緒に……」
ミゲルが割って入る。
しかし――。
「おっと、それ以上は言うな、ミゲル」
中尉は笑う。
「俺は、お前たちと一緒に行く気はねぇよ」
「言ったろ? 今の安定した生活を捨てる勇気は俺にはねぇよ。政府軍と命がけでドンパチやるなんて、冗談じゃない」
そう言って笑う。
だが、それは自嘲気味の笑いだった。
「お前たちの……幽霊っていうんだっけ? 幽霊になった奴らのことは、上には戦死したと報告しとくよ」
「俺にできるのは、それぐらいだ」
「メンドーサ中尉……」
「生きろよ、ミゲル」
中尉の声が少しだけ低くなる。
「こんな腐った国のために生きる人生、お前にゃ向いてねぇよ」
「気づいていたんですか、中尉?」
ミゲルが問う。
「まぁな」
中尉は肩をすくめる。
「お前、ウソつけるタイプじゃねーんだもん」
「……」
「お前さ。以前、俺が世話になった上官殿に似てるんだよ」
「え……?」
「お人好しな上官でよ」
中尉は遠くを見る。
「部下のことを第一に考えてくれてた。何かあると、すぐ部下の待遇改善だの配置換えだので上層部に噛みついてくれてた」
「そのせいで上からは煙たがられて、出世コースからは外されてたけどな。ハハッ」
中尉はタバコに火をつける。
「何でもかんでも自分でしょい込む性格でよ。なんかあると、『俺に任せろ、俺が何とかするから』と……」
一度、煙を吐く。
「『責任は俺が取る。それが上官の義務だ』が口癖だったよ」
「お前と同じ、生真面目すぎる人だったよ……」
タバコを咥えたまま、メンドーサ中尉は遠い目をする。
「危険で無謀な強行偵察を俺が命ぜられた時も、なんやかんや理由をつけて自分で肩代わりしてくれたよ……」
「そして結局、その任務で戦死しちまった……」
「後で知ったんだ。」
中尉の声が、わずかに掠れる。
「その強行偵察は、敵の目を引きつけて、本隊の侵攻から目をそらさせるための囮……最初から捨て駒にする作戦だったことをな」
中尉の手元から、タバコの灰がポロリと落ちる。
「この後、生き残った俺も、またどこか別の基地に配属されると思う」
「お前たちと一緒に幽霊になる気はないが……」
中尉は、ミゲルを見る。
「その基地にお前たちが来たときは……」
タバコをブーツの裏で踏み消す。
「そん時は、裏口のドアの鍵ぐらいは内側からこっそり開けてやるよ。」
「俺にできるのは、それぐらいだからな……」
そう告げると、メンドーサ中尉は背を向けて歩き出した。
もう、振り向くことはなかった。




