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檻の中

揺れる。

頭がくらくらする。

私は誰かに抱えられたまま運ばれていた。

「んっ……!」

口を押さえられていて上手く声が出せない。

怖い。

怖い怖い怖い。

(アレンさん……!)

私は必死に涙を堪えた。

泣いたら余計怖くなる気がした。

しばらくして、男が立ち止まる。

ギィィ……

重たい扉が開く音。

地下みたいな冷たい空気が流れてきた。

「連れてきました。」

男がそう言うと、奥から別の声が聞こえる。

「……ほぉ。」

低い男の声。

私はゆっくり下ろされた。

逃げようとした瞬間。

ガシッ。

腕を掴まれる。

「離してっ!」

「大人しくしろ。」

「やだ!!」

私は暴れる。

でも相手は大人だ。

4歳の身体じゃ力が全然足りない。

「随分元気だな。」

暗闇の奥から男が現れる。

黒いスーツみたいな服。

細い目。

嫌な笑い方をしていた。

「本当に白猫か?」

「えぇ。」

ローブの男が私のフードを掴む。

「やっ……!」

スルッ。

フードが外れた。

白い耳がぴこんと飛び出す。

尻尾もぶわっと膨らんだ。

「っ……!」

私は慌てて耳を押さえる。

男たちが笑った。

「これは珍しい。」

「しかも随分可愛い顔だ。」

気持ち悪い。

私は後ろへ下がる。

でもすぐ壁にぶつかった。

逃げ場がない。

「やだ……帰りたい……」

震える声が漏れる。

すると細目の男がしゃがみ込んだ。

「怖がらなくていい。」

「嘘だ……」

「私たちは君に興味があるだけだ。」

「それが怖いの……!」

男が少し笑う。

「なるほど。賢い子だ。」

私はぎゅっと尻尾を抱えた。

その時。

男の視線が私の首元へ向く。

「……魔力の流れが異常だな。」

ドクンッ。

私は肩を震わせる。

「面白い。」

男が手を伸ばしてくる。

嫌だ。

触られたくない。

私は反射的にその手を叩いた。

パシッ!

部屋が静まり返る。

あっ。

やばい。

男の笑顔が消えた。

「……子供のくせに。」

低い声。

怖い。

本気で怖い。

私は思わず後ろへ縮こまる。

するとローブの男が口を開いた。

「魔力封印を。」

「そうだな。」

男が銀色の首輪を取り出した。

私は目を見開く。

「な、なにそれ……」

「安心しろ。死にはしない。」

「嫌っ!!」

私は逃げようとする。

でもすぐ捕まった。

「離してぇっ!!」

ガチャッ。

冷たい感触が首につく。

その瞬間。

ズキンッ!!

「っ……!?」

頭が痛い。

体の奥が変な感じする。

魔力が引っ張られるみたいな――

「うぅっ……!」

私は床へ膝をついた。

苦しい。

「これで魔法は使えん。」

男が満足そうに笑う。

私は震える手を見る。

「……ミニフレア……」

何も起きない。

「え……?」

もう一度。

「ミニアクア……!」

何も出ない。

「やだ……」

私は青ざめる。

魔法が使えない。

それが思った以上に怖かった。

「大人しくしていれば痛い目は見ない。」

男がそう言いながら近付いてくる。

怖い。

私は反射的に後ろへ下がった。

「来ないでっ!」

私は男の手を振り払う。

その瞬間――

バチンッ!!

頬に衝撃が走った。

「っ……!」

私は床へ倒れる。

何が起きたのかわからなかった。

少し遅れて頬が熱くなる。

じわっと涙が浮かんだ。

「子供でも立場を理解しろ。」

冷たい声。

怖い。

痛い。

私は震えながら頬を押さえる。

「ぁ……ぅ……」

息が上手くできない。

その時初めて。

(……死ぬかもしれない。)

そう思った。

男たちはそんな私を見下ろしていた。

「しばらくここにいてもらう。」

「帰る……」

「無理だ。」

「帰りたいっ……!」

声が震える。

涙が溢れた。

でも男たちは気にした様子もない。

「この子は高く売れそうですね。」

「いや、研究価値の方が高い。」

研究。

その言葉に背筋が凍る。

私は檻の隅へ縮こまった。

怖い。

寒い。

暗い。

アレンさん。

助けて。

その頃――

「……見つけた。」

アレンさんは森の地面を見下ろしていた。

折れた枝。

小さな足跡。

そして。

地面に落ちた白い毛。

空気がピリつく。

近くにいた冒険者が思わず後ずさった。

「ア、アレン……?」

「……俺は今機嫌が悪い。」

低い声だった。

でも逆に怖い。

アレンさんはゆっくり剣を抜く。

ギィ……

冷たい音が響いた。

「ティナに手ぇ出したこと、後悔させてやる。」

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