迎えに来た
暗い。
寒い。
怖い。
私は檻の隅で膝を抱えていた。
首についた銀色の首輪が重い。
少し動くだけで嫌な感覚がする。
「……ぅ……」
頬もまだ痛い。
殴られた場所が熱を持っていた。
(帰りたい……)
アレンさんの家に。
温かいスープの匂いがする場所に。
涙がぽろっと落ちる。
その時だった。
ガチャッ。
部屋の扉が開く。
私はびくっと肩を震わせた。
入ってきたのは、あの細目の男だった。
「随分静かになったな。」
私は何も答えない。
「返事ぐらいしろ!!」
ガシャンッッ!
男が檻を蹴った。
「キャァァッッ!!」
男が檻の前でしゃがみ込む。
「怖いか?」
「……」
「安心しろ。君には価値がある。」
その言葉が気持ち悪い。
私はさらに奥へ下がった。
男は私の耳を見る。
「白猫の獣人など滅多にいない。」
「……」
「しかも異常な魔力。」
ドクンッ。
私は肩を震わせる。
やっぱり気付かれてる。
男が笑った。
「君は高く売れる。」
怖い。
嫌だ。
私はぎゅっと尻尾を抱える。
男が檻へ手を入れてくる。
「ひっ……!」
私は反射的に逃げた。
ガンッ!
背中が檻へぶつかる。
痛い。
怖い。
「……やめて。」
声が震える。
「その顔もいいなぁ…」
男の指が私の頬へ伸びる。
気持ち悪い。
「いやぁっ!!」
その瞬間。
ドゴォォォンッ!!!!
地面が揺れた。
「!?」
男が立ち上がる。
次の瞬間。
ギギギギ……
施設全体が揺れ始めた。
「な、なんだ!?」
遠くで悲鳴が聞こえる。
私は目を見開いた。
この感じ。
知ってる。
ドンッ!!
爆音。
壁が崩れる。
「敵襲だ!!」
男たちの叫び声が響いた。
私は思わず立ち上がる。
まさか。
まさか――
「ティナァァァ!!」
聞こえた。
低くて、でもよく知ってる声。
「……アレンさん?」
その瞬間。
バゴォォォンッ!!!!
檻の前の壁が吹き飛んだ。
煙が舞う。
瓦礫が落ちる。
私は思わず目を覆った。
煙の向こうから、人影が現れる。
剣を持ったアレンさんだった。
でも。
いつものアレンさんじゃない。
目が怖い。
空気が怖い。
怒ってる。
今まで見たことないくらい。
「……見つけた。」
低い声。
男たちが後ずさる。
「な、なんでここが……!」
「うるせぇ。」
ゾクッ。
空気が震えた。
次の瞬間。
ドンッ!!
アレンさんの姿が消える。
「え――」
男の言葉は最後まで続かなかった。
一瞬で吹き飛ばされたからだ。
壁に叩きつけられ、気絶する。
「ひっ……!」
周りの男たちが青ざめる。
私は呆然としていた。
(アレンさん…………)
するとアレンさんが檻へ近付いてくる。
「ティナ。」
その声だけ少し優しかった。
私はそこでようやく安心した。
涙が一気に溢れる。
「っ……アレンさん……!」
「悪い。遅くなった。」
アレンさんは剣で檻を壊す。
ガキンッ!!
鉄が真っ二つになる。
私はふらふら立ち上がった。
でも次の瞬間。
力が抜ける。
「あっ……」
倒れそうになった私を、アレンさんが受け止めた。
「大丈夫か!?」
「ぅ……ひっく……」
声が上手く出ない。
怖かった。
本当に怖かった。
私はアレンさんの服をぎゅっと掴む。
するとアレンさんの手が、私の頭を優しく撫でた。
「もう大丈夫だ。」
その言葉を聞いた瞬間。
張り詰めていたものが全部切れた。
「うわぁぁぁぁぁんっ!!」
私は子供みたいに大泣きした。
アレンさんは何も言わず、ずっと頭を撫でてくれていた。
その時。
カチャッ。
後ろで音がする。
ローブの男だった。
震える手でナイフを持っている。
「くっ……!」
男がアレンさんへ向かって飛び出す。
でも。
「邪魔。」
低い声。
次の瞬間。
ゴォォォォォッ!!!!
突然、巨大な炎が男を吹き飛ばした。
部屋が静まり返る。
「…………」
「…………」
私は泣きながら固まった。
アレンさんもゆっくりこちらを見る。
息を荒くしながら私は首元を押さえた。
銀の首輪。
……壊れてる。
私はさっと目を下に逸らした。
「ごっ……ごめんなさい…」
私は肩を震わせながら涙を我慢しながら答えた。
どうやら感情が爆発した瞬間、無意識に壊してしまったらしい。




