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帰る場所

燃えていた炎がゆっくり消えていく。

焦げた匂い。

熱気。

崩れた壁。

私は荒い息をしながら立ち尽くしていた。

「はぁっ……はぁっ……」

自分でも何をしたのかわからない。

ただ。

怖くて。

苦しくて。

アレンさんを傷つけられそうになった瞬間、頭が真っ白になった。

「ティナ。」

低い声が聞こえて、私はビクッと肩を震わせる。

怒られる。

そう思った。

でも。

アレンさんはため息をつきながら私の前にしゃがみ込んだ。

「怪我は?」

「……え?」

「怪我してないかって聞いてる。」

私はぱちぱち瞬きをする。

怒って……ない?

「だ、大丈夫……」

そう答えた瞬間。

ぐぅぅぅ……

お腹が鳴った。

「…………」

「…………」

最悪だ。

こんな空気でお腹鳴る!?

私は恥ずかしくて顔を真っ赤にする。

アレンさんは数秒黙ったあと、ぷっと吹き出した。

「っ、はは……!」

「わ、笑わないでぇ……!」

「いや……緊張感全部吹っ飛んだ。」

「うぅ〜……」

私は尻尾を丸める。

するとアレンさんが立ち上がった。

「とりあえず帰るぞ。」

「……うん。」

帰る。

その言葉だけで少し安心した。

私はそっとアレンさんの服を掴む。

でも次の瞬間。

ズキッ。

「いたっ……」

首輪の部分が痛む。

アレンさんの表情が変わった。

「……見せろ。」

「えっ?」

「首。」

私はおそるおそる手をどける。

壊れた銀色の首輪。

首には赤い跡が残っていた。

アレンさんの眉間に皺が寄る。

「クソが……」

かなり怒ってる。

私は慌てて口を開いた。

「で、でも壊れたし!」

「そういう問題じゃない。」

アレンさんはそっと首輪へ触れる。

「痛むか?」

「ちょっとだけ……」

本当は結構痛い。

でも心配かけたくなかった。

するとアレンさんは小さくため息をついた。

「……帰ったら治療する。」

その声が妙に優しくて、私は少しだけ泣きそうになった。

◇ ◇ ◇

外へ出ると、夜になっていた。

森は静かだった。

さっきまで戦っていたとは思えないくらい。

私はアレンさんに抱っこされながら空を見上げる。

「……アレンさん。」

「なんだ。」

「どうやって見つけたの?」

アレンさんは少し黙ったあと答えた。

「パンが落ちてた。」

「あ。」

「あと白い毛。」

私は思わず耳を押さえた。

「ご、ごめんなさい……」

「謝るな。」

「でも……」

「無事だった。それでいい。」

私は目を丸くする。

するとアレンさんが少しだけ困った顔をした。

「……お前がいなくなった時、生きた心地しなかった。」

ドクンッ。

胸が変な音を立てる。

「ティナ。」

「……なに?」

「次から危ないと思ったらすぐ逃げろ。」

「うん……」

「あと知らない奴について行くな。」

「ついて行ってないよ!?」

「誘拐されたんだよなぁ。」

「うっ。」

言い返せない。

私はしゅんと耳を下げた。

するとアレンさんが小さく笑う。

「まぁ、よく頑張った。」

ぽんぽん、と頭を撫でられる。

その瞬間。

我慢してたものがまた溢れそうになった。

怖かった。

本当に。

私はぎゅっとアレンさんの服を掴む。

「……怖かった。」

小さな声。

でもアレンさんはちゃんと聞いてくれた。

「あぁ。」

「魔法使えなくて……何もできなくて……」

声が震える。

「殴られて……閉じ込められて……」

思い出しただけで涙が出そうになる。

するとアレンさんの腕に少し力が入った。

「もう終わった。」

低い声。

でも優しかった。

「俺がいる。」

その言葉に、張り詰めていた不安が少しずつ溶けていく。

私は小さく頷いた。

◇ ◇ ◇

家へ戻ると。

「ティナちゃぁぁぁん!!」

ミルちゃんが飛び込んできた。

「うわぁっ!?」

勢いそのまま抱きつかれる。

「よかったぁぁぁ!!」

「み、ミルちゃん苦しい!」

「心配したんだからね!?」

ミルちゃんの目は真っ赤だった。

……泣いてたんだ。

なんだか胸がぎゅっとなる。

「ごめんね……」

「ほんとだよぉ……!」

ミルちゃんは涙を拭いながら怒る。

でもその後、またぎゅっと抱きしめてきた。

温かい。

帰ってきたんだ。

そう実感した。

すると後ろからアレンさんの声が聞こえる。

「ミル、離せ。ティナ疲れてる。」

「はーい……」

少し不満そうに離れるミルちゃん。

私はそのまま椅子へ座らされた。

テーブルには温かいスープ。

パン。

いい匂い。

その瞬間。

ぐぅぅぅぅ……

またお腹が鳴った。

ミルちゃんが吹き出す。

「ティナちゃんお腹空きすぎ!」

「だ、だってぇ……」

恥ずかしい。

するとアレンさんがスープを前へ置いた。

「食え。」

「……いただきます。」

スープを一口飲む。

温かい。

その瞬間。

ぽろっ。

涙が落ちた。

「えっ!?ティナちゃん!?」

私は慌てて涙を拭う。

「ち、違うの……」

でも止まらない。

温かくて。

安心して。

怖かったのを思い出して。

涙がどんどん溢れる。

「ぅぅ……」

ミルちゃんが慌てる。

「え!?どうしたの!?」

するとアレンさんが静かに言った。

「安心したんだろ。」

その言葉を聞いた瞬間。

私はまた泣いてしまった。

でも今度の涙は、少しだけ温かかった。

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