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隠しきれない規格外

ミルちゃんが帰った後。

家の中にはなんとも言えない静けさが流れていた。

「…………」

「…………」

気まずい。

ものすごく気まずい。

私は椅子に座りながらスープをちびちび飲む。

アレンさんは腕を組んだまま、じーっとこちらを見ていた。

……怖い。

先に耐えられなくなったのは私だった。

「……あの。」

「なんだ。」

「ごめんなさい。」

アレンさんは少しだけ目を丸くした。

「何についてだ?」

「えっと……その……風。」

「やっぱりお前か。」

私は耳をぺたんと下げた。

「だってフード取れそうだったし……!」

「だからって家吹き飛ばしかけるな。」

「吹き飛ばしてないもん!」

「あと一歩だった。」

ぐぅ……反論できない。

アレンさんは深いため息をついた。

「ティナ。」

「はい……」

「お前、自分がどれだけ危険かわかってるか?」

危険。

その言葉に私は少し固まった。

「……危険、なの?」

「4歳で魔法を使える時点で異常だ。しかも全属性。さらにあの魔力量。」

アレンさんは真剣な顔をしている。

「普通ならありえない。」

「でも、使えちゃうんだからしょうがなくない?」

「開き直るな。」

「うぅ……」

私はしゅんと肩を落とした。

その瞬間、フードの中で耳もぺたんと垂れる。

アレンさんが少し笑う。

「ほんとわかりやすいな。」

「耳のこと言わないでぇ……」

恥ずかしい。

前世では顔に出やすいタイプだったけど、今は耳と尻尾まで反応する。

隠し事に向いてなさすぎる。

するとアレンさんが急に真面目な顔へ戻った。

「……ティナ。」

「?」

「これから先、人前で魔法を使うな。」

私はきょとんとする。

「え?なんで?」

「目立つからだ。」

「でも便利だよ?」

「便利とかそういう問題じゃない。」

アレンさんは少し声を低くした。

「お前みたいなのがいるって知られたら、絶対に面倒事になる。」

その言葉は妙に重かった。

私は思わず黙り込む。

「……獣人だから?」

アレンさんは少しだけ目を細めた。

「それもある。」

やっぱり。

私はフードをぎゅっと握る。

この世界では獣人は珍しい。

しかも私は全属性持ち。

どう考えても普通じゃない。

「……昔な。」

アレンさんがぽつりと呟いた。

「獣人を捕まえて奴隷みたいに扱ってた連中がいた。」

「え……?」

私は思わず顔を上げる。

「今は減った。でも完全になくなったわけじゃない。」

部屋の空気が少し重くなる。

私は尻尾をぎゅっと抱えた。

アレンさんはそんな私を見て、少し困ったように頭をかいた。

「あー……悪い。怖がらせたいわけじゃない。」

「……ううん。」

怖い。

でも、それ以上に。

「……守ってくれるの?」

気付けばそう聞いていた。

アレンさんは一瞬驚いた顔をした後、小さく笑った。

「当たり前だ。」

その言葉に胸がじんわり温かくなる。

なんだろう。

まだ出会って少ししか経ってないのに。

アレンさんといると安心する。

すると突然――

コンコンッ!

玄関の扉がノックされた。

「アレン!いるか!?」

男の人の声だ。

アレンさんが眉をひそめる。

「……こんな時間に誰だ。」

扉を開けると、門番をしていた男の人が立っていた。

「急ぎだ。」

「何かあったのか?」

「……村長が、その子に会いたいらしい。」

……え?

私は固まる。

男の人の視線がこちらへ向く。

「森でゴブリンを倒した子供がいるって話、もう村中に広まってる。」

アレンさんが盛大に顔をしかめた。

「あいつら口軽すぎるだろ……」

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