フードが……!?
「ここが俺の家だ。」
アレンさんに連れて来られた家は、村の中でも少し大きめだった。
木でできた壁に赤い屋根。
庭には薪が積まれている。
(異世界の家だ……)
私はフードを押さえながらきょろきょろ辺りを見回した。
「入れ。」
「お、お邪魔します……」
家の中へ入ると、木のいい匂いがした。
床も壁も全部木でできていて、なんだか落ち着く。
「わぁ……」
「そんな珍しいか?」
「だって異世界だよ!?」
「……?」
アレンさんは意味がわからないって顔をしている。
危ない危ない。
今のは完全に転生者発言だった。
私は誤魔化すように辺りを見回した。
すると――
ぐぅぅぅ〜……
「あっ。」
お腹が鳴った。
しかもかなり大きい。
私はフードの中で顔を真っ赤にする。
アレンさんが吹き出した。
「ははっ。」
「笑わないでよぉ……」
「悪い悪い。そういやまともに食ってなかったな。」
アレンさんはキッチンの方へ向かう。
「座って待ってろ。」
「えっ、作れるの?」
「失礼だな。」
「だってミルちゃんが料理下手って……」
「余計なことを。」
アレンさんはため息をつきながら鍋を火にかけ始めた。
私は椅子によじ登りながらその様子を見る。
(なんか……普通だ。)
少し前まで森で一人だったのに。
今は温かい家の中にいる。
それが不思議だった。
しばらくすると、いい匂いが広がってきた。
「ほら。」
目の前にスープとパンが置かれる。
「わぁ……!」
私は目を輝かせた。
「……おいしい。」
一口食べた瞬間、思わず呟いていた。
温かい。
それだけで涙が出そうになる。
「そんなに美味いか?」
「めちゃくちゃ美味しい……!」
私は夢中でパンにかぶりつく。
その瞬間。
ぴこっ。
フードの中で耳が動いた。
「あ。」
やばい。
私は慌ててフードを押さえる。
アレンさんがじっとこちらを見る。
「耳。」
「今押さえたからセーフ!」
「いや動いてた。」
「見えてないならセーフ!」
「基準がおかしい。」
すると突然、玄関の扉が勢いよく開いた。
「アレンおじゃまー!」
ミルちゃんだ。
「うわっ!?びっくりした!」
「ティナちゃんいたー!」
ミルちゃんは私を見つけると、一直線に駆け寄ってきた。
近い近い近い。
「ねぇねぇ!ご飯美味しい?」
「お、おいしい……」
「よかったねぇ!」
ミルちゃんはニコニコしながら私を見る。
そして、ふと首を傾げた。
「……そういえば。」
嫌な予感。
「なんでずっとフード被ってるの?」
ぶっっっこんできた。
私は固まる。
アレンさんも無言になった。
気まずい沈黙。
「え、えっと……その……」
どうしよう。
なんて言えばいい?
するとミルちゃんがぐいっと顔を近付けてきた。
「もしかして、すっごい恥ずかしがり屋?」
「えっ?」
「それとも傷とかあるの?」
「いや、違っ……」
ミルちゃんはさらに近付いてくる。
近い近い近い。
「ねぇ!ちょっとだけ見せてよ!」
「わっ!?」
私は慌てて後ろへ下がった。
その拍子に椅子がガタンッ!と傾く。
「きゃっ!」
バランスを崩した私は、そのまま前に倒れそうになった。
そして。
ミルちゃんの手が――
フードに引っかかった。
「え。」
「え。」
スルッ。
フードがずれる。
(やばっっっ!!!!)
その瞬間。
ヒュオォォォォッ!!!
突然部屋の中に強風が吹き荒れた。
「きゃああっ!?」
「うおっ!?」
机の上の紙が舞い上がる。
カーテンが大きく揺れ、私のフードも勢いよく元の位置へ戻った。
ドゴンッ!!
「いたぁっ!!」
私は風に押されて壁にぶつかった。
部屋が静まり返る。
「…………」
「…………」
私はゆっくり起き上がる。
痛い。
めちゃくちゃ痛い。
ミルちゃんが慌てて駆け寄ってきた。
「ティナちゃん大丈夫!?」
「だ、大丈夫……」
ミルちゃんは窓を見る。
「わぁ〜!急に風すごくなったね!」
「そ、そうだな……」
アレンさんだけが、じーっと私を見ていた。
完全に気付いている顔だ。
私はすっと目を逸らした。
アレンさんは小さくため息をつく。
「……あとで話そうか。」
「……はい。」
どうやら誤魔化せたのはミルちゃんだけだったらしい。




