初めての村!
アレンさんと一緒に森を歩き始めてしばらく経った。
「ねぇ、まだ着かないの〜?」
「もう少しだ。」
「さっきもそれ言ってた!」
私はむすーっと頬を膨らませる。
するとアレンさんが小さく笑った。
「元気だな。」
「お腹空いたもん……」
「それだけ喋れれば大丈夫そうだな。」
そんな会話をしていると、前方に大きな木の柵が見えてきた。
「わぁ……!」
思わず声が漏れる。
木で囲まれた村。
煙突から上がる煙。
人が行き交う道。
(異世界の村だ……!)
私は目を輝かせながら一歩前へ出た。
その瞬間。
ぐいっ。
「へ?」
アレンさんにフードを深く被せられた。
「……え?」
「耳、隠せ。」
私はきょとんとする。
「なんで?」
アレンさんは少し周囲を警戒するように視線を動かした。
「獣人は珍しいんだ。」
「え?」
「今この国で獣人を見ることなんてほとんどない。見たことない奴も多い。」
私はフードの中で耳をぴくっと動かした。
「じゃあ私って結構珍しい?」
「かなりな。」
「へぇ〜……」
私は少しだけ嬉しくなった。
でもアレンさんは真面目な顔のままだ。
「珍しいだけならいい。でも、面倒な連中もいる。」
「面倒な連中?」
「……獣人を嫌う奴らだ。」
私は思わず黙り込んだ。
そんなの、どこの世界にもいるんだ。
アレンさんはしゃがみ込んで私と目線を合わせる。
「だから、村では耳と尻尾を隠せ。いいな?」
「……うん。」
私はフードをぎゅっと握った。
するとアレンさんが少し困ったように笑う。
「そんな不安そうな顔するな。俺がいる。」
その言葉に、少しだけ安心した。
私は小さく頷く。
「よし。じゃあ行くぞ。」
村の門へ近づくと、見張りの男の人がこちらに気付いた。
「アレン!戻ったか!」
「あぁ。」
「ゴブリン討伐は?」
「終わった。」
その瞬間、男の人の視線が私へ向く。
「……その子は?」
「森で保護した。」
「保護?」
「事情は後で話す。」
男の人はじっと私を見る。
私は思わずアレンさんの後ろへ隠れた。
「なんだ?人見知りか?」
「……そんな感じだ。」
アレンさんが自然に庇ってくれる。
(優しい……)
村へ入った瞬間、私はきょろきょろ辺りを見回した。
石畳の道。
木造の家。
露店みたいなお店。
(すごい……本当に異世界……!)
パンみたいな匂いもする。
めちゃくちゃいい匂い。
ぐぅぅぅ〜……
「あっ。」
盛大にお腹が鳴った。
私はフードの中で顔を真っ赤にする。
アレンさんが吹き出した。
「ははっ。」
「笑わないでよぉ……!」
「悪い悪い。」
その時。
「アレンおかえりー!」
元気な声が響いた。
茶色い髪の女の子が走ってくる。
年齢は10歳くらいだろうか。
「お前また走って……」
「えっ!?誰その子!」
女の子は私をじーっと見る。
私は慌ててフードを押さえた。
「……ティナ。」
「ティナちゃん!私はミル!」
すごい距離近い。
人懐っこいタイプだ。
「ねぇねぇ!なんでフード被ってるの?」
「っ!」
私は固まる。
どう答えればいいかわからない。
するとアレンさんが間に入った。
「事情があるんだ。」
「ふーん?」
ミルちゃんは納得してない顔だ。
「怪しい!」
「怪しくない。」
「でも顔隠してる!」
「色々あるんだよ。」
「むぅ……」
私はフードの中で耳をぺたんと下げた。
するとアレンさんが小声で言う。
「耳動いてるぞ。」
「えっ!?」
慌てて耳を押さえる。
「なに!?どうしたの!?」
「なんでもない!」
危なかった……!
もしバレたら大騒ぎになりそう。
アレンさんはため息をついた。
「とりあえず家行くぞ。」
「おぉー!ティナちゃんアレンの家来るの!?」
「そうなるな。」
「えぇぇぇ!?アレンが子供連れてるの初めて見た!」
「うるさい。」
ミルちゃんはニヤニヤしながら私を見る。
「ねぇねぇ!ティナちゃん!」
「な、なに?」
「アレンってね、顔怖いけど結構優しいんだよ!」
「おい。」
「でも料理下手!」
「余計なこと言うな。」
私は思わず笑ってしまった。
なんだろう。
少し前まで一人で森にいたのに。
今は誰かと話して笑ってる。
それがなんだか不思議で、少しだけ嬉しかった。




