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帰って来る者

静寂。

誰も喋らない。

黒服の言葉が頭から離れなかった。

『あのお方が帰ってくる。』

ただの一言。

なのに

ルークの顔色が変わった。

初めてだった。

◇ ◇ ◇

レオンさんが口を開く。

「誰だ。」

黒服は笑う。

「言うと思うか?」

レオンさん

「言わせる。」

黒服

「怖いな。」

全然怖がっていない。

むしろ。

嬉しそうだった。

◇ ◇ ◇

その時。

ルークが前へ出た。

「本当に生きているのか。」

低い声。

黒服は答えない。

代わりに

ニヤリと笑った。

それだけで十分だった。

ルークの拳が震える。

私は初めて見た。

ルークが怖がっているところを。

◇ ◇ ◇

宿へ戻った後。

私は眠れなかった。

最近そればっかり。

「うー……」

ベッドで転がる。

ごろごろ。

ごろごろ。

「ティナちゃん。」

ミルちゃんだった

「また眠れないの?」

「うん。」

ミルちゃんは少し考えた。

そして。

「私も。」

「え?」

「だって怖いもん。」

正直な答えだった。

私は少し驚いた。

ミルちゃんはいつも強そうだから。

◇ ◇ ◇

「でもね。」

ミルちゃんは笑った。

「ティナちゃんがいるから大丈夫。」

私は瞬きをする。

「私?」

「うん。」

「なんで?」

「だってティナちゃん強いもん。」

私は首を傾げた。

「そうかな?」

「そうだよ!」

ミルちゃん即答。

◇ ◇ ◇

その頃。

宿の屋上。

ルークが一人でいた。

月を見ている。

風が吹く。

静かな夜だった。

「やっぱり生きていたか。」

小さな声。

誰にも聞こえない。

その目は。

どこか悲しそうだった。

◇ ◇ ◇

ガチャ。

扉が開く。

アレンだった。

ルークは振り返らない。

アレンも何も言わない。

沈黙

そして

ルークが呟いた。

「俺のせいだ。」

アレンが眉をひそめる。

「何がだ。」

「全部だ。」

風が吹く。

ルークの目は遠くを見ていた。

◇ ◇ ◇

「俺がもっと強ければ。」

「里は滅ばなかった。」

「ティナも苦しまなかった。」

「皆も死ななかった。」

静かな声。

でも。

苦しさが伝わる。

長い間

一人で抱えていたのだろう。

◇ ◇ ◇

アレンは少し考える。

そして一言。

「馬鹿か。」

ルーク

「……何?」

アレン

「全部背負うな。」

ルーク

「……。」

アレン

「お前一人で里を守れるなら王様になってる。」

ルーク

「ならない。」

アレン

「そうか。」

◇ ◇ ◇

少しだけ空気が軽くなる。

そして。

アレンが続けた。

「ティナは生きている。」

「……。」

「笑っている。」

「……。」

「それで十分じゃないのか。」

ルークは答えない。

でも。

少しだけ肩の力が抜けた。

◇ ◇ ◇

翌朝。

私たちは朝食を食べていた。

平和だった。

とても平和だった。

ティナ

「パンおいしい。」

ミルちゃん

「おいしいね!」

アレン

「落ち着いて食べろ。」

レオン

「喉に詰まらせるな。」

ルーク

「水も飲め。」

ティナ

「過保護!!」

しかし。

その平和は長く続かなかった。

宿の扉が勢いよく開く。

バン!!

全員が振り返る。

そこにいたのは。

王都の兵士だった。

顔色が悪い。

息も切れている。

「大変です!!」

レオンが立ち上がる。

「何があった。」

兵士は叫んだ。

「北門付近で魔物が暴れています!!」

「それだけじゃありません!」

「黒いローブの男が――」

その瞬間。

ルークの目が見開かれる。

兵士の次の言葉。

それを聞いた瞬間。

全員が凍り付いた。

「白い猫耳の少女を探していると。」

静寂。

私はパンを持ったまま固まった。

そして。

全員の視線が。

私に集まる。

ティナ

「え?」

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