始まりの白猫
森の中。
静寂。
さっきまで暴れていた魔力は消えていた。
倒れた木々。
割れた地面。
そして。
黒服たちは拘束されている。
レオンさんの魔法だ。
逃げられないようになっている。
◇ ◇ ◇
私は大きな岩に座っていた。
ミルちゃんが隣にいる。
アレンさん。
ルーク。
レオンさん。
全員が妙に真面目だった。
なんだろう……
嫌な予感がする。
◇ ◇ ◇
最初に話したのはレオンさんだった。
「確認したい。」
「?」
「始まりの白猫とは何だ。」
その言葉にルークが静かに目を閉じた。
少しだけ迷う。
やがて口を開いた。
「白猫の里に伝わる伝説だ。」
風が吹く。
私は黙って聞く。
◇ ◇ ◇
「遥か昔。」
「世界は大きな災厄に襲われた。」
ミルちゃんも真剣な顔。
「その時。」
「一人の白猫が現れた。」
「白猫?」
「ああ。」
ルークは頷く
「その白猫は全ての属性を扱った。」
私は首を傾げる。
「八属性?」
「ああ。」
全員私を見る。
(…なんで?)
◇ ◇ ◇
ルークは続ける。
「その力で世界を救った。」
「すご〜い!」
「すごい。」
「すごいですね。」
私。
ミルちゃん。
アレンさん。
三人同時。
レオンさん
「お前もだ。」
「?」
意味が分からない。
◇ ◇ ◇
「そして。」
ルークの声が少し低くなる。
「その白猫は予言を残した。」
(予言…?なんだか難しそう。)
私はちょっと眠くなってきた。
「聞け。」
アレンさんに頭を軽くつつかれた。
「いたい。」
◇ ◇ ◇
ルーク
「いつか再び災厄が訪れる。」
「その時。」
「始まりの白猫が目覚める。」
静かな声。
誰も喋らない。
そして。
ルークがこちらを見る。
「その特徴がある。」
「特徴?」
「ああ。」
指を一本立てる。
「白猫。」
私。
白猫。
指を二本。
「八属性。」
私。
八属性。
指を三本。
「常識外れの魔力量。」
私。
……。
あれ?
◇ ◇ ◇
ミルちゃんが固まる。
アレンさんも固まる。
レオンさんは頭を抱えた。
「待て。」
レオンさんが言う。
「待て待て待て。」
珍しく慌てている。
「つまり。」
「理論上。」
「ティナは。」
沈黙。
全員が私を見る。
私は串焼きを食べていた。
もぐもぐ。
◇ ◇ ◇
全員
「聞け。」
「なんでぇ!?」
◇ ◇ ◇
レオンさんは真面目だった。
すごく真面目だった。
「訓練場を破壊した。」
「事故です。」
「水晶を粉砕した。」
「事故です。」
「八属性。」
「はい。」
「暴走した魔力。」
「はい。」
「始まりの白猫。」
「はい?」
レオンさんが空を見た。
頭痛がしている顔だった。
「全部繋がるじゃないか……」
◇ ◇ ◇
私はまだよく分からなかった。
だから聞いた。
「つまり?」
ルークが答えた。
「お前は特別だ。」
私は少し考える。
五秒。
十秒。
十五秒。
そして。
「知ってた。」
全員
「知らないだろ。」
◇ ◇ ◇
しかし。
次の瞬間。
ルークの表情が変わった。
笑顔が消える。
私は初めて見る顔だった。
「だが。」
低い声。
風が止む。
「一つだけ間違っている。」
レオンさんが顔を上げる。
「何だ。」
ルークはゆっくり言った。
「世界を救う存在。」
「それだけじゃない。」
私は息を呑む。
「始まりの白猫は。」
静かな声。
「世界を滅ぼす存在にもなり得る。」
静寂
誰も喋らない。
ミルちゃんも。
アレンさんも。
レオンさんも。
私も。
◇ ◇ ◇
遠くで風が吹く。
そして。
拘束された黒服が笑った。
「だから探していた。」
全員が振り返る。
黒服の目は狂気に染まっていた。
「目覚めれば世界は変わる。」
「我らの悲願は叶う。」
ルークの殺気が溢れる。
アレンさんも剣に手をかける。
でも。
私はその言葉より。
別のことが気になった。
「悲願?」
黒服は笑う。
そして。
一言だけ言った。
「あのお方が帰ってくる。」
その瞬間。
ルークの顔色が変わった。
今までで一番。
悪い意味で。
「……生きているのか。」
その声には
はっきりとした恐怖が混ざっていた――




