狙われた白猫
王都の朝
平和なはずだった。
少なくとも。
パンを食べていた私はそう思っていた。
「おいしい。」
もぐもぐ
すると。
兵士さん
「白い猫耳の少女を探しています!!」
私
「へぇ。」
もぐもぐ
アレン
「お前だ。」
私
「えっ?」
◇ ◇ ◇
宿の空気が変わる。
レオンさんが真っ先に立ち上がった。
「詳しく話せ。」
兵士は慌てながら説明する。
「北門付近に魔物の群れが現れました!」
「そして黒いローブの男が……」
「白い猫耳の少女を連れて来いと言っています!」
ミルちゃん
「ティナちゃんじゃん!」
私
「ティナだね。」
ミルちゃん
「他人事じゃないよ!?」
◇ ◇ ◇
ルークの顔が険しくなる。
アレンさんも腕を組む。
レオンさんは考え込む。
「誘い出そうとしているな。」
誰が見ても明らかだった。
私が目的。
魔物はそのため。
つまり。
罠だ
◇ ◇ ◇
「行かせない。」
ルークだった。
即答。
一秒も迷わない。
「絶対にだ。」
ミルちゃんが驚く。
私も驚く。
ルークは普段優しい。
でも今は違う。
本気だった。
◇ ◇ ◇
「だが。」
レオンさんが言う。
「放置も出来ない。」
王都には人がいる。
子供も。
家族も。
皆が暮らしている。
だから。
誰かが止めなければならない。
◇ ◇ ◇
沈黙。
その時。
私は手を挙げた。
「はい。」
全員が見る。
「私行く。」
即座に。
「ダメだ。」
ルーク
「ダメだ。」
アレン
「ダメだ。」
レオン
「ダメだよ!」
ミルちゃん
私
「なんで!?」
◇ ◇ ◇
しかし。
私は立ち上がる。
「だって私を探してるんでしょ?」
誰も答えない。
「だったら逃げても意味ない。」
静かな声だった。
「また誰かが傷付くの嫌だ。」
ルークが目を伏せる。
私は続けた。
「それに。」
少しだけ笑う。
「私、一人じゃないし。」
◇ ◇ ◇
沈黙。
ミルちゃん
アレンさん
レオンさん
そして。
ルーク
全員を見る。
「みんないる。」
それだけだった。
でも。
十分だった。
◇ ◇ ◇
ルークは長くため息を吐く。
「……本当に。」
頭を抱える。
「似ているな…」
「?」
「誰に?」
聞いた瞬間。
ルークは少しだけ笑った。
「秘密だ。」
◇ ◇ ◇
北門。
そこはもう戦場だった。
魔物が暴れている。
兵士達が必死に戦っている。
市民は避難。
怒号。
悲鳴。
土煙。
そして。
その中央。
黒いローブ。
一人の男が立っていた。
◇ ◇ ◇
私達が近付く。
男はゆっくり振り返った。
顔は見えない。
フードで隠れている。
でも。
笑ったのが分かった。
「見つけた。」
その一言。
ゾクリとした。
◇ ◇ ◇
ルークが前へ出る。
アレンも前へ出る。
二人とも完全に戦闘態勢。
すると。
男は言った。
「邪魔だ。」
次の瞬間。
ドゴォォォォォン!!!
地面が吹き飛んだ。
兵士達が悲鳴を上げる。
ミルちゃんも目を見開く。
「きゃっ!?」
レオンさんの顔色が変わる。
「上級魔法だと……!?」
◇ ◇ ◇
だが。
土煙が晴れた先。
そこには。
傷一つないルーク。
そして。
アレンさん。
二人が立っていた。
ルーク。
「ティナに近付くな。」
アレン。
「一歩でも近づいたら…わかるよな?」
黒ローブ。
初めて動揺する。
◇ ◇ ◇
その時。
私は気付いた。
男の視線。
私だけを見ている。
まるで。
ずっと探していたみたいに。
そして。
男は静かに呟く。
「やっと会えた。」
私は固まる。
知らない人。
なのに。
なぜか。
胸がざわついた。
そして。
男はゆっくり手を伸ばす。
「迎えに来たよ。」
沈黙
全員が凍り付く。
迎えに?
誰を?
なぜ?
そして。
ルークの顔から血の気が引いた。
まるで。
絶対に会いたくなかった相手を見たように――




