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もう一人の白猫

王都の大通り

私は固まっていた。

目の前には黒いローブの人。

そして…

私と同じ白い猫耳。

「え……?」

思わず自分の耳を触る。

相手の耳を見る。

もう一度自分の耳を触る。

「本物?」

「本物だ。」

返事が来た。

「喋った。」

「当たり前だ。」

「確かに。」

周囲が少し静かになる。

アレンさんが私の前に立った。

「ティナから離れろ。」

低い声だった。

ルークはため息をつく。

「相変わらず警戒心が強いな。」

「初対面だからな。」

「そうか。」

ルークは少しだけ笑った。

でも、

その笑顔はどこか寂しそうだった。

私はなんとなく気になった。

「本当に知り合いなの?」

ルークが私を見る。

数秒。

静かに答えた。

「知り合いだ。」

「初めて会ったよ?」

「そうだろうな。」

「?」

意味が分からない。

私は首を傾げた。

ミルちゃんも首を傾げている。

リリアナさんも傾げている。

なんならアレンさんも少し傾げていた。

◇ ◇ ◇

その後。

なぜか近くの喫茶店に移動した。

「なんで?」

私は聞く。

「立ち話では長くなる。」

レオンさんが答えた。

「長いの?」

「かなりな。」

嫌な予感がした。

◇ ◇ ◇

店内。

私。

アレンさん。

ミルちゃん。

リリアナさん。

レオンさん。

そしてルーク。

全員が座っている。

妙な空気だった。

最初に口を開いたのはルークだった。

「まず謝る。」

「?」

「突然現れて悪かった。」

私は少し驚いた。

もっと怖い人かと思っていた。

でも。

なんだろう、

話し方が優しい。

どこか懐かしい。

そんな感じだった。

「別にいいよ?」

私が言うと、

ルークは少しだけ目を細めた。

嬉しそうだった。

でも。

その表情を見た瞬間。

なぜか胸がチクリとした。

知らない人なのに。

(なんでだろう…)

◇ ◇ ◇

「ティナ。」

ルークが言う。

「なに?」

「今いくつだ。」

「6歳。」

「そうか。」

ルークは小さく頷いた。

まるで。

本当に成長を喜ぶ家族みたいに。

私はますます不思議になる。

「本当に誰?」

ルークは少し考えた。

そして。

「兄みたいなものだ。」

全員。

「は?」

私も。

「は?」

完全に同じ反応だった。

◇ ◇ ◇

アレンさんが即座に言う。

「違うな。」

ルーク

「何がだ。」

アレン

「兄じゃない。」

ルーク

「妹だ。」

アレン

「違う。」

ルーク

「妹だ。」

アレン

「違う。」

「私を挟んで喧嘩しないで。」

ミルちゃん爆笑。

リリアナさんも笑いを堪えている。

レオンさんは頭を押さえていた。

◇ ◇ ◇

少し落ち着いた後。

ルークが真面目な顔になる。

「ティナ。」

「うん。」

「白猫の里を知っているか?」

その瞬間。

私は首を振った。

「知らない。」

ルークは予想していたようだった。

「そうか。」

少しだけ悲しそうに笑う。

「覚えていないんだな。」

「だから何を?」

私には分からない。

何も。

だけど。

その名前を聞いた瞬間。

頭の奥が少しだけ痛んだ。

「っ……」

私は思わず頭を押さえる。

「ティナ!?」

アレンさんが立ち上がる。

「大丈夫!」

本当に少しだけだった。

でも。

何かが引っかかった。

知らないはずなのに。

聞いたことがあるような。

そんな感覚。

◇ ◇ ◇

その様子を見たルークは静かに立ち上がった。

「今日は帰る。」

「え?」

「無理に思い出さなくていい。」

優しい声だった。

そして。

帰る前に。

ルークは私の頭をぽんっと撫でた。

私は驚いた。

なのに。

嫌じゃなかった。

不思議なくらい。

安心した。

ルークは小さく笑う。

「また来る。」

そして去っていった。

残された私はぽかんとしていた。

ミルちゃんが聞く。

「どうだった?」

私は少し考えた。

そして正直に答えた。

「変な人。」

遠くでルークが咳き込んだ。

聞こえていたらしい。

◇ ◇ ◇

その夜。

宿のベッド。

私は眠れなかった。

頭の中に浮かぶのは。

白い猫耳。

優しい声。

そして。

『白猫の里』

という言葉。

「なんなんだろう……」

窓の外を見る。

月が綺麗だった。

そして同じ頃。

王都の屋根の上。

ルークは月を見上げていた。

「やっと見つけたぞ。」

その声は風に消える。

「ティナ。俺の……大切な妹。」

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