ティナ、王国最強と模擬戦!?
「絶対ダメだ。」
アレンさんが即答した。
研究院の訓練場。
レオンさんは腕を組みながら立っている。
私はその真ん前。
そして訓練場の端には研究員たち。
さらにミルちゃんとリリアナさん。
全員集合である。
「まだ模擬戦をするとは言っていない。」
レオンさんが言う
「今から言う顔してた。」
アレンさん
「……鋭いな。」
「当たり前だ。」
私は首を傾げる。
「模擬戦って何?」
全員固まる。
「知らないのか?」
レオンさんが聞く。
「知らない。」
「戦うんだ。」
「なんで?」
レオンさんも困った顔になった。
「強さを確認するためだ。」
「へぇ。」
私は納得した。
「じゃあやる?」
アレンさん
「やらない。」
「えぇ。」
即却下だった。
◇ ◇ ◇
しかし…
一時間後。
なぜか訓練場に立っていた。
「どうしてこうなったの。」
「研究のためじゃ。」
院長が言う。
「研究って便利な言葉だね。」
ミルちゃんが笑う。
「ティナちゃん頑張れー!」
「人ごとだと思ってー!」
リリアナさんも応援している。
「ティナさんなら大丈夫ですわ!」
「その根拠は!?」
◇ ◇ ◇
結局条件付きになった。
①本気禁止
②広範囲魔法禁止
③研究院を壊さない
④レオンも本気禁止
「よし。」
私は頷く。
レオンさんも頷く。
「では始めよう。」
◇ ◇ ◇
開始。
私は動かない。
レオンさんも動かない。
数秒。
さらに数秒。
沈黙。
「何してるの?」
私は聞いた。
「君こそ。」
「待ってた。」
「私もだ。」
「なんで!?」
周囲が吹き出した。
◇ ◇ ◇
先に動いたのはレオンさんだった。
「ウィンドカッター。」
風の刃が飛ぶ。
速い。
研究員たちが息を飲む。
私は考える。
(避ける?)
面倒。
「アース。」
ゴゴゴッ!!
地面から土の壁が飛び出す。
風の刃は消えた。
研究員たち。
「早い。」
「詠唱なし?」
ざわつく。
私は普通だと思っていた。
◇ ◇ ◇
今度は私。
「えーっと。」
何にしよう。
「ミニアクア。」
ぽちゃん。
小さな水球。
レオンさんは少し笑う。
「その程度か。」
次の瞬間。
ぽちゃん。
ぽちゃん。
ぽちゃん。
ぽちゃん。
空に大量の水球。
「多くない!?」
ミルちゃんが叫ぶ。
私も驚いた。
「増えた。」
「増えたじゃない!」
アレンさんがツッコむ。
◇ ◇ ◇
レオンさんが結界を張る。
水球が落下。
ドドドドドドドドッ!!
訓練場が水浸しになる。
研究員たち。
避難。
院長。
避難。
リリアナさん。
避難。
アレンさん。
頭を抱える。
「またか……」
◇ ◇ ◇
レオンさんは少し笑っていた。
「なるほど。」
「何が?」
「規格外という意味だ。」
私は複雑だった。
褒められてる気がしない。
◇ ◇ ◇
その後も。
風。
土。
氷。
雷。
色々試した。
その結果。
訓練場は悲惨な状態だった。
床は割れ。
壁は崩れ。
訓練用人形は吹き飛び。
研究員たちは頭を抱えている。
院長
「予算がぁぁぁぁぁ!!」
研究員A
「修理費がぁぁぁ!!」
研究員B
「半年分の予算が!!」
私はオロオロした。
「ご、ごめんなさい……」
全員。
「ティナちゃんは悪くない。」
「なんで!?」
アレンさんがため息をつく。
「だから言ったんだ。」
レオンさんも珍しく頭を押さえていた。
「これは酷いな……」
その時。
私はふと思い出した。
「あ。」
全員がこちらを見る。
「どうした?」
アレンさんが聞く。
私は首を傾げた。
「治せるかも。」
沈黙。
院長
「……何を?」
「訓練場。」
さらに沈黙。
研究員たちが顔を見合わせる。
「いやいや。」
「建物だぞ?」
「回復魔法だろ?」
「人間じゃないぞ?」
私はよく分からなかった。
「でも森は治ったよ?」
全員。
「森?」
アレンさんだけが嫌な予感をした顔になる。
「ティナ。」
「なに?」
「何をする気だ。」
「エリアヒール。」
「待て。」
遅かった。
私は両手を前に出した。
「エリアヒール!」
パァァァァァァァァァァァッ!!!
眩しい光が研究院全体を包み込む。
研究員たち
「うわぁぁぁ!?」
院長
「目がぁぁぁ!!」
ミルちゃん
「きれーい!」
リリアナさん
「綺麗ですわ〜!」
アレンさん
「またか……」
数秒後。
光が消える。
静寂。
誰も動かない。
そして研究員Aが震える声で言った。
「……あれ?」
床を見る。
割れていた床。
直っている。
新品同然だった。
研究員B
「壁が……」
崩れていた壁。
直っている。
しかもピカピカ。
研究員C
「訓練人形が……」
吹き飛んだ人形。
元通り。
新品。
むしろ前より綺麗。
院長
「は?」
研究員たち
「は?」
私は笑った。
「直った!」
レオンさんが壁に触れる。
真剣な顔だった。
「……ありえない。」
院長も壁を調べる。
「修復ではない。」
研究員たちがざわつく。
「傷跡が一切ない。」
「新品だ。」
「いや、新品以上だぞ。」
私は首を傾げる。
「ダメだった?」
全員
「ダメじゃない!!」
「じゃあいいじゃん!」
「よくない!!」
研究員総ツッコミ。
ミルちゃんは床を叩いている。
「本当に新品だ!」
リリアナさんも驚いていた。
「こんな魔法聞いたことありませんわ……」
その時。
レオンさんだけが笑っていなかった。
彼は訓練場を見渡し。
そして小さく呟く。
「回復ではない……」
誰にも聞こえないほど小さな声。
「元に戻しているのか……?」
私は聞こえなかった。
でもその瞬間から。
レオンさんの中で、
ティナは『規格外の子供』から、
『理解できない存在』
へ変わり始めていた――。
◇ ◇ ◇
そして最後。
レオンさんが言った。
「最後に一つだけ。」
真面目な顔だった。
「光魔法を見せてくれ。」
私は頷く。
「ルミナ。」
パァァァッ――
優しい光が広がる。
暖かい。
眩しくない。
心地いい光。
その瞬間。
レオンさんの表情が変わった。
初めてだった。
驚いた顔。
研究員たちも同じ。
院長も。
銀髪の女性も。
全員が息を飲んだ。
「……そんな。」
誰かが呟く。
私は首を傾げた。
「どうしたの?」
返事はない。
レオンさんがゆっくり聞く。
「ティナ。」
「うん。」
「今の魔法、誰に教わった?」
「誰にも。」
「……そうか。」
レオンさんの顔が少し険しくなる。
そして小さく呟いた。
「やはり。」
私は聞き取れなかった。
でも。
訓練場の空気は明らかに変わっていた。
その夜。
黒ローブの人物は王都の屋根の上に立っていた。
そして月を見上げながら呟く。
「光の魔法まで同じか。」
風が吹く。
フードが揺れる。
「始まりの白猫。」
その声には懐かしさが混じっていた。
「ようやく会える。」
物語はさらに大きく動き始める――。




