貴族のお嬢様とお買い物
「ティナさん!!」
ぎゅっ!!
「むぎゅっ!?」
突然抱きつかれた。
犯人はもちろんリリアナさんである。
「耳がふわふわですわ〜!」
「離れてぇぇぇ!!」
王都の大通りで私は必死にもがいていた。
ミルちゃん大爆笑。
アレンさん
遠い目。
「助けてよぉぉ!!」
「頑張れ。」
「保護者ぁぁぁ!!」
◇ ◇ ◇
結局私たちはリリアナさんに連行された。
行き先
服屋。
嫌な予感しかしない。
「ティナさん!」
「はい。」
「着替えましょう!」
「嫌な予感しかしない!」
店員さんまで笑顔だった。
数分後。
私は着せ替え人形になっていた。
「可愛いですわ!!」
「恥ずかしい!!」
白いワンピースと猫用のアクセサリー。
尻尾用の穴付き。
すごく可愛い。
でも恥ずかしい。
「次はこちらですわ!」
「まだあるの!?」
◇ ◇ ◇
一時間後。
私は疲れ果てていた。
「もう無理……」
「まだ半分ですわ!」
「半分!?」
ミルちゃんも着替えさせられていた。
「楽しい!!」
「裏切り者!!」
◇ ◇ ◇
するとリリアナさんが突然真剣な顔になった。
「ティナさん。」
「ん?」
「少し聞いてもよろしいですか?」
珍しく静かな声だった。
「何?」
リリアナさんは少し迷う。
そして。
「獣人だから嫌な思いをしたことはありますか?」
私は少し驚いた。
質問の意味は分かった。
昔ならすぐ答えられなかったと思う。
でも今は、、、
私は笑った。
「あるよ。」
リリアナさんが少し悲しそうな顔をする。
「でもね。」
私は続ける。
「今は大丈夫。」
リリアナさんが顔を上げる。
「アレンさんもいるし。」
「ミルちゃんもいるし。」
「街のみんなもいるから。」
私は笑う。
「だから今は幸せ。」
リリアナさんはしばらく黙っていた。
そして優しく笑った。
「そうですか。」
その笑顔はどこか安心したようだった。
◇ ◇ ◇
しかし。
建物の向こう側。
黒いローブの人物が立っていた。
その手には古い紙。
そこには一枚の絵が描かれている。
白い髪。
猫の耳。
そしてティナによく似た少女。
黒ローブは静かに呟く。
「やはり……」
風が吹く。
フードの奥でその人物の目が細められた。
「間違いない。」
そして紙に書かれていた名前が見える。
『始まりの白猫』
黒ローブは静かに笑った。
「やっと見つけた。」
その頃ティナは――
「この服はやだぁぁぁ!!」
リリアナ
「可愛いですわ!」
ミルちゃん
「可愛い!!」
アレン
「似合ってる。」
ティナ
「みんな敵だぁぁぁ!!」




