王都って広すぎる!?
巨大な門をくぐった瞬間。
私は固まった。
「…………」
「どうした?」
アレンさんが聞く。
私はゆっくり口を開いた。
「人多すぎる。」
本当に多い。
多すぎる。
どこを見ても人。
人。
人。
「わぁぁぁぁぁ!!」
次の瞬間。
私は走り出した。
「ティナ!?」
「見て見て見て!!」
通りの両側には見たこともない店が並んでいる。
魔道具屋。
服屋。
アクセサリー屋。
お菓子屋。
本屋。
全部気になる。
「すごぉぉぉい!!」
ミルちゃんも走り出した。
「待てぇぇぇぇ!!」
アレンさんの叫びが響く。
◇ ◇ ◇
十分後。
「はぁ……」
アレンさんが疲れた顔をしていた。
私とミルちゃんは元気だった。
「王都最高!」
「最高!」
ハイタッチ。
アレンさん頭を抱える。
◇ ◇ ◇
すると。
通りの端で人だかりを見つけた。
「何だろう?」
近付いてみる。
そこでは魔道具の実演販売が行われていた。
店主が胸を張る。
「この魔道具を使えば火を使わなくても料理ができます!」
おおー!
という歓声。
私は驚いた。
「便利!」
店主が笑顔になる。
「だろう?」
私は感心する。
「私のフレアより安全だね!」
周囲。
静止。
店主。
「……フレア?」
アレンさん。
「ティナ。」
「はい。」
「黙れ。」
「はい。」
即終了した。
◇ ◇ ◇
しばらく歩く。
王都は本当に広かった。
そして。
明らかに周囲と雰囲気の違う建物が見えてくる。
白い石造り。
噴水。
花壇。
大きな門。
「お城?」
王都の女性が首を振る。
「王立魔法学院です。」
「学院?」
「魔法を学ぶ場所ですよ。」
私は目を輝かせた。
「へぇぇぇ!!」
その時。
ドンッ。
誰かとぶつかった。
「あっ!」
私は慌てて謝ろうとする。
「ごめんなさい!」
相手もよろけていた。
綺麗な金色の髪。
高そうな服。
私と同じくらいの年齢。
女の子だった。
彼女は服を払う。
そして私を見る。
耳を見る。
尻尾を見る。
一瞬。
空気が変わった。
「あ……」
私は少しだけ緊張する。
昔なら。
この反応の後に来るのは嫌な言葉だった。
女の子は私を見つめる。
数秒。
そして。
「可愛い。」
「へ?」
「すごく可愛いですわ!!」
「へぇぇ!?」
予想外だった。
女の子の目がキラキラしている。
「耳がふわふわですわ!」
「えっ?」
「尻尾もありますの!?」
「ありますけど!?」
距離が近い。
めちゃくちゃ近い。
「触ってもよろしいですか!?」
「勢いが怖い!!」
ミルちゃん大爆笑。
アレンさん苦笑い。
王都の女性まで笑っている。
◇ ◇ ◇
数分後。
女の子は落ち着いた。
「申し遅れました。」
優雅にスカートを摘まむ。
「私はリリアナ・フォン・アルベルト。」
貴族だった。
どうりで服が高そうなわけだ。
「ティナです。」
「存じております。」
「へ?」
リリアナさんは笑う。
「王都で噂になっていますもの。」
私は嫌な予感がした。
「どんな噂?」
リリアナさん。
少し考える。
そして。
「水晶を破壊した白猫の少女。」
私は顔を覆った。
「広まってるぅぅぅ!!」
ミルちゃん爆笑。
アレンさんまで笑っていた。
◇ ◇ ◇
しかし
少し離れた屋根の上。
黒いローブの人物がいた。
静かにティナを見つめている。
「ようやく会えた。」
低い声。
その視線は普通ではなかった。
まるでずっと探していたものを見つけたような。
黒ローブは小さく呟く。
「ティナ。」
そして風と共に姿を消した。
その時の私はリリアナさんに耳をもふもふされていた。
「やめてぇぇぇ!!」
もちろん何も気付いていなかった。




