王都からの招待
ギルドの中は静まり返っていた。
さっきまであんなに騒がしかったのに。
今は誰も喋らない。
みんな王都の二人を見ている。
そして。
王都の二人は私を見ている。
怖い。
なんか怖い。
私はアレンさんの後ろへ隠れた。
「ティナ。」
「はい。」
「なんで敬語なんだ。」
「なんか怖いから。」
ギルドのおじさんたちが吹き出した。
少し空気が和らぐ。
王都の男性が咳払いをする。
「失礼しました。」
「本当だよ。」
私は小さく文句を言う。
すると銀髪の女性が困ったように笑った。
「驚かせてしまいましたね。」
「うん。」
即答した。
アレンさんがため息をつく。
「で?」
王都の男性が姿勢を正した。
「まず確認です。」
「はい。」
「ティナさん。」
「はい。」
「適性検査の水晶を破壊しましたか?」
ギルド全員。
私を見る。
「……事故です。」
「破壊しましたね。」
「事故です。」
「破壊しましたね。」
「事故です!」
「破壊しましたね。」
「なんで認めさせたいの!?」
ギルド大爆笑。
アレンさんが顔を覆う。
「もう認めろ。」
「嫌だ。」
銀髪の女性まで肩を震わせていた。
笑っている。
ようやく男性が話を戻した。
「水晶の件はともかく。」
「ともかくなんだ。」
「問題は魔力量です。」
その瞬間。
ギルドが静かになる。
私は首を傾げた。
「そんなに変なの?」
全員。
無言。
「なんで誰も答えてくれないの!?」
冒険者のおじさんが言う。
「ティナちゃん。」
「うん。」
「普通じゃない。」
「なんとなく察してた。」
ギルドがまた笑う。
王都の女性が優しく説明した。
「普通の人は一属性。」
「うん。」
「二属性なら天才。」
「へぇ。」
「三属性なら王都でも大騒ぎです。」
私は嫌な予感がした。
女性が続ける。
「八属性持ちは確認されていません。」
沈黙。
「……え?」
「歴史上でも記録がありません。」
「え?」
「つまり初めてです。」
「えぇぇぇぇぇぇ!?」
今度は私が叫んだ。
「そんな反応だったのかよ。」
アレンさんが呆れる。
「知らなかったもん!」
「気付け。」
「無理だよ!!」
ギルド中が笑う。
しばらくして。
王都の男性が一枚の封筒を取り出した。
見た瞬間。
高級そうだと分かる。
金色の封印。
立派な紋章。
「これは?」
私は聞いた。
男性が答える。
「王都魔法研究院からの正式な招待状です。」
「招待状?」
「ティナさんに王都へ来ていただきたいのです。」
ギルドがざわつく。
ミルちゃんが目を丸くする。
「王都!?」
私はもっと驚いた。
「お金かかる?」
「そこ!?」
冒険者たちが一斉にツッコんだ。
だって大事じゃん。
男性は少し笑う。
「費用は全てこちらで負担します。」
「やった!」
「即答か。」
アレンさんが呆れる。
「だって無料だよ?」
「そこじゃねぇ。」
ギルド大爆笑。
でも。
アレンさんの表情は少し真面目だった。
「……王都に行ったらどうなる。」
男性が答える。
「魔力の検査。」
「ふむ。」
「生活環境の確認。」
「ふむ。」
「今後の支援。」
アレンさんが少し考える。
すると。
銀髪の女性がティナを見る。
「もちろん無理にとは言いません。」
優しい声だった。
「嫌なら断れます。」
私は少し考える。
王都。
行ったことない。
どんな場所だろう。
するとミルちゃんが目を輝かせた。
「王都行ってみたい!!」
「お前じゃない。」
「えぇー!!」
ギルド爆笑。
私は思わず笑った。
でも。
少しだけ胸が高鳴る。
異世界に来て。
森で目覚めて。
アレンさんに出会って。
街で暮らして。
そして今。
また新しい世界が広がろうとしている。
私はアレンさんを見る。
「アレンさん。」
「ん?」
「王都って楽しい?」
アレンさんは少し考えてから言った。
「面倒な場所だ。」
「えぇ。」
「でも面白いものはたくさんある。」
私は笑った。
「じゃあ行ってみたい。」
その言葉に。
王都の二人が少しだけ安心したように笑った。
しかし。
誰も気付いていなかった。
王都でティナを待っているのは、
歓迎だけではないことに――。




