適性検査
お祭りの次の日。
私は朝ごはんを食べながらのんびりしていた。
昨日は本当に楽しかった。
お祭り。
屋台。
花火。
リボン。
思い出しただけで少し笑顔になる。
すると。
「そういえば。」
アレンさんがパンをかじりながら言った。
「ティナって適性検査やってねぇよな。」
私は首を傾げた。
「適性検査?」
「魔法属性を調べるやつだよ!」
ミルちゃんが元気よく答える。
「10歳くらいになったらみんな受けるんだ!」
「へぇ〜。」
私は適当に返事をした。
その瞬間。
アレンさんとミルちゃんが同時にこちらを見る。
「……なんでそんな他人事なんだ。」
「え?」
「ティナちゃん受けるんだよ?」
「私が?」
二人が同時に頷いた。
嫌な予感がした。
◇ ◇ ◇
ギルド。
朝から賑やかだ。
冒険者たちが依頼書を見たり、朝ごはんを食べたりしている。
私が入ると、
「あ、ティナだ。」
「祭りのリボン似合ってたぞ〜。」
なんだか最近すごく話しかけられる。
前の私だったら考えられない。
そんなことを思いながら歩いていると、受付のお姉さんが笑顔で手を振った。
「準備できてますよ〜。」
その横には大きな水晶が置かれていた。
「これが適性検査の水晶?」
「そうです。」
お姉さんが説明する。
「手を置くだけで反応しますよ。」
私は水晶をじっと見つめた。
透明で綺麗だ。
宝石みたい。
「じゃあやるか。」
アレンさんが少し離れた場所へ移動する。
なぜか頭を押さえている。
「どうしたの?」
「嫌な予感がしてる。」
「失礼じゃない!?」
◇ ◇ ◇
私は水晶の前へ立った。
周りにはいつの間にか野次馬が集まっている。
「ティナちゃん頑張れー!」
「別に試験じゃないから!」
私はツッコミながら水晶へ手を置いた。
その瞬間。
ボワッ!
赤い光が広がった。
「火属性ですね。」
受付のお姉さんが頷く。
私は少し得意げになる。
「ほら普通だった。」
次の瞬間。
ボワッ!
今度は青い光。
「……水属性?」
お姉さんが首を傾げる。
会場が少しざわつく。
「二属性持ちか?」
「珍しいな。」
私はきょとんとした。
でも。
まだ終わらなかった。
ヒュォォッ!
緑色。
ゴゴゴッ!
茶色。
パチパチッ!
黄色。
パキパキッ!
水色。
キラァァッ!
白色。
「…………」
「…………」
ギルドが静まり返る。
私は水晶を見る。
綺麗だなぁ。
虹みたい。
受付のお姉さんを見る。
固まっている。
「えっと?」
返事がない。
冒険者たちを見る。
全員固まっている。
「えっと?」
返事がない。
アレンさんを見る。
頭を抱えている。
「なんでぇ!?」
私は思わず叫んだ。
◇ ◇ ◇
数分後。
ようやく再起動した受付のお姉さんが震える声で言った。
「火、水、風、土、雷、氷、光、回復……」
「うん。」
「全部あります。」
「うん。」
「全部あります。」
「二回言った!?」
お姉さんが机へ突っ伏した。
周りが大騒ぎになる。
「聞いたことねぇぞ!?」
「全属性!?」
「伝説か何かか!?」
「ティナちゃん人間やめてない!?」
「元から獣人だよ!?」
私も負けずにツッコむ。
ギルドは完全にパニックだった。
◇ ◇ ◇
すると奥からギルドマスターが出てきた。
大柄なおじいさんだ。
「騒がしいと思ったらなんじゃ。」
「マスター!!」
受付のお姉さんが泣きそうな顔をする。
「ティナちゃんが全部光りました!!」
「全部?」
ギルドマスターが私を見る。
私は手を振った。
「こんにちは!」
「元気じゃのぅ……」
ギルドマスターはため息をつく。
そして水晶を見る。
少し考える。
もう一度私を見る。
また水晶を見る。
「もう一回やってみい。」
「はーい。」
私は素直に手を置いた。
その瞬間。
ピカァァァァァァァァッ!!!
水晶が眩しく光る。
ギルド全体が昼間みたいになる。
「眩しっ!?」
「目がぁぁ!!」
「なんじゃこれぇ!?」
大混乱。
私は慌てて手を離した。
その瞬間。
パキッ。
嫌な音がした。
全員が静かになる。
水晶を見る。
ヒビ。
一本。
二本。
三本。
そして――
バキバキバキッ!!
「えっ。」
水晶が粉々になった。
沈黙。
数秒後。
「「「壊れたぁぁぁぁぁ!!!」」」
ギルド中に叫び声が響く。
私は慌てて首を振った。
「私じゃないもん!!」
「絶対お前だ!!」
「違うもん!!」
「手置いただけだろうが!!」
「そうだもん!!」
「それで壊れてるんだよ!!」
私は納得いかなかった。
すると隣でアレンさんが深いため息をつく。
「……やっぱりな。」
「信じてなかったの!?」
「信じてた。」
「ひどい!!」
周りの冒険者たちが笑い出す。
ギルドマスターまで笑っていた。
私は頬を膨らませる。
でも。
気付けば私も笑っていた。
こうして私の適性検査は――
史上初の『水晶破壊事件』として、長い間語り継がれることになるのだった。




