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深き森の魔女は、ただ静かに暮らしたい  作者: 篠原皐月


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17/37

(17)本質

 エリアスから依頼を受けた二日後。朝早くに来訪した馬車に乗り込んだソニアは、迎えに出向いたアレクシスと向かい合わせに座りながら、申し訳なさそうに頭を下げた。


「わざわざ迎えに来ていただいて、ありがとうございます。この時間に到着するなら、夜明け前に城を出たのではありませんか?」

 その問いかけに、アレクシスは笑って応じる。


「大したことではありませんし、魔女殿を馬に乗せて走らせるわけにもいきませんから」

「うちにいるロバに乗って、城に出向いてもよろしかったのですが」

 本心から申し出たソニアだったが、それを聞いた彼は一瞬呆気に取られてから、笑いを堪えるような顔つきで告げた。


「前回お伺いした時、家を回り込んだ畑の方で目にしましたが、随分年寄りのロバでしたよ? あれに乗って来たら、何日かかるか分かりませんから」

「それもそうですね……」

(いつの間に、裏に回っていたのよ……。それに魔術を使えば、馬よりも早く往復できるのだけど)

 憮然としたソニアだったが、余計な事を口にせずに話題を変える。


「それで、今現在例の女性はどうしているのですか? 城内に留め置いているのですか?」

「いいえ。取りあえず、城下の宿に滞在させています。城内に入れて、何か不審な行動をされたら厄介ですので。魔女殿の到着予定時刻に合わせて、城に呼び寄せる手筈になっています」

 その説明を聞いた彼女は、感心しながら尋ね返した。


「随分と用心深いですね。アレクシス様の判断ですか?」

「いえ、エリアス様です。基本的に有能で思慮深い方ですから」

「基本的には、ですね?」

「はい。基本的には、です」

(うん、まあ……、下手に主君をかばい立てしないのは、褒めてあげるべきなのでしょうね)

 すこぶる真顔でアレクシスが繰り返し、それを目の当りにしたソニアは脱力しながらも納得した。

 それからは他愛のない世間話をしながら過ごし、二人を乗せた馬車は問題なく城に到着した。城門をくぐって進んでいくと静かに馬車が停止し、少しして御者が扉を開ける。手を貸して貰い、深い緑色のローブ姿のソニアが地面に降り立つと、至近距離で出迎えたエリアスが深々と頭を下げた。 


「ソニア殿。ここまでご足労いただいて、申し訳ない。今回はよろしく頼む」

「こちらこそ、お出迎えいただき恐縮です」

 彼の背後に臣下が何人も控えている状態であり、ソニアは内心でうんざりしながらも、表面上は穏やかに微笑みながら挨拶を返した。するとエリアスが、神妙に申し出てくる。


「帰りが遅くなると却ってご迷惑だと思うので、このまま例の女と育ての親に会って貰って良いだろうか?」

「構いません。休憩などは要りませんので、さっさと済ませましょう」

「それでは付いて来てくれ」

「はい」

 そして二人は、後ろに臣下を引き連れながら城の中に入った。斜め前方を進むエリアスに続いてソニアも城の奥へと足を進めたが、すぐに違和感に気がつく。


(付いて来るようにと言ったけど、ちゃんとこちらの歩幅や速度に合わせてくれているわね。自然にしているのだとしたら、アレクシス様が言っていたように『基本的には思慮深い人』なのでしょうね)

 当初ソニアは、老婆である外見に合わせた歩き方をしていた。しかしエリアスに合わせ、少し速めに歩くことになるだろうという予測に反して、その歩みはゆっくりとしたままだった。視線を向けていないのは明らかな彼が、気配を察して自分に動きを合わせているのを理解したソニアは、素直に感心する。


「ソニア殿、どうかしたのか?」

「いえ、なんでもありません。お気になさらず」

 笑いの気配を察したエリアスが、軽く振り返りながら不思議そうに尋ねてくる。それにソニアは微笑みながら首を振り、大人しく彼の後に続いた。




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