第25話 ╰⋃╯のお話
――試験結果の案内があるまで、花嫁候補たちに自由時間が与えられていた。
(どこ行ったんかな)
別室に連れていかれたルナをマリアは探している。
(自由時間中に喰いたいんだけど)
マリアにとって相手が男か女かは問題ではない。
どっちであってもこの肉食獣にとっては等しくエッチな食い物なのだ。
なお、ヘンゼルはマリアが全問正解したことを告げると、機能が一時停止したため放置してある。
「あ」
前からスーツ姿の小男が歩いてくる。
ルナのお供だということは騎乗試験で知っていた。
「よっ」
マリアから声をかける。
シェルトドーガはやや目を据わらせながら応じた。
「おう。おまえで最後だ」
「なにが――うぉ!」
シェルトドーガがマリアの顔に聖水をスプレーし、フェイシャルタオルで優しめに拭き取る。
「なにやってんだ! チビが! 地獄に落ちろクソ雄!」
メイクが落ちて、逆に険が取れた素顔のマリア。
だが、汚い言葉遣いも迷いのない股間攻撃も健在だ。
ガスッ!
ガスッ!
ガスッ!
股間を蹴られてもシェルトドーガは涼しい顔をしている。
ガチンチンッ!
「いてっ!」
蹴る角度を計算し、一点集中したことが功を奏したらしい。
シェルトドーガが体を曲げる。
マリアはすかさず追撃態勢に入った。
「待て! ╰⋃╯が死ぬだろうが」
「死ね」
放たれた足蹴りを姿勢を低くして真剣白刃取りの要領で止める。
「離せ。勝手に人の肌に触ってんじゃねーぞ包茎」
「詳しくは言わんが、僕の╰⋃╯は文化遺産クラスだ。いいか? まず足を下ろすぞ。蹴るなよ?」
そっとシェルトドーガが手を離す。
次の瞬間、またマリアの足が股間を狙った。
「蹴るなと言ったろうが!」
今度は太ももを押さえて止める。
過激な下着が丸見えだった。
「うるせぇ! あたしが蹴らねぇって答えたか!? てめぇの希望を押し付けんな! 第一、なんで人の顔に水ぶっかけた!?」
「おまえらがルナにキスしたからだろうが! 破格の温情! 命が助かっただけよかったと思え!」
とりあえず、赤い扉組24名の唇に残っていたルナとの接触はすべて消せたはずだ。
「あーーーーーー」
足の力が抜け、マリアの顔にニヤニヤ笑いが浮かぶ。
「そっかそっか。僕君は王子が好きなんだー? 嫉妬しちゃったんだー?」
「好きだ。嫉妬した」
シェルトドーガがマリアの足を離す。
「もう、王子と╰⋃╯したのー?」
「してない」
「そっかー。未使用の╰⋃╯に悪いことしちゃってごめんねー。おねーさんが先に教え込んであげよっか? そのほうが初めてのとき、王子にリードしてあげられるよ」
マリアが聞いているのはシェルトドーガに、ではない。
シェルトドーガの╰⋃╯に、だった。
「童貞煽りはやめろ。この╰⋃╯さんは古今東西の女を試食済だ」
「マジで!? かっけー╰⋃╯持ってんじゃん! 尊敬してやる」
╰⋃╯の前でわざとらしく合掌するマリア。
「ちょっとその歴戦のブツ見せてよ」
「やだ。この子、なんでこんなに下品なの。ちょっとこら触んな。あおん」
規格外すぎてヘンゼルのサーチで測れなかった化け物がマリアに詰められている。
シェルトドーガはズボンを下ろされる前にどうにか天井に飛びついて、逆さで逃げていった。




