第24話 花嫁試験の真相
――王城の評議の間では大臣、将軍、魔術師、テイマー、学者など試験を表からも裏からも監視していた者たちが頭を抱えていた。
「まさか、こんな結果になるとは……」
筆記試験の合格者は30人。
青い扉の部屋では、満点のセブンシアと、国宝問題は解けなかったものの合格点を超えた者が4人。
そして、赤い扉の部屋は満点が25人。
「これでは花嫁選抜にならん」
「赤部屋だけもう一度やり直せば?」
「改めて試験を受けさせるというのか? 新しい問題は作れても、検知術式を仕込んだ用紙はすぐには用意できんぞ」
魔術師たちが一斉に無理だと首を振る。
国宝問題はただの難問ではない。
一般の令嬢たちには決して解けないはずだった。
正規の知識で答えられない以上、正答するにはなんらかの魔術的な不正を働くしかない。
魔術師たちが用紙に潜ませたのは、魔力を使用した際に反応する検知魔術だった。
「それでは意味がない! なんのために試験官を置かなかったのかわからんではないか! 供を隔離した意味がないではないか!」
大臣が腹立たしげに言う。
「すべては魔女本人に魔力を使わせるためであっただろうが!」
上座の王太子が無言でもう一本、煙草に火を点ける。
そう、これまで行われた試験には、二つの目的があった。
一つは、ゴードン・ブラムウェルの花嫁を選ぶこと。
そしてもう一つは――その候補者に紛れ込んだ魔女を見つけ出すこと。
その魔女の姿も、名も、声も、誰も知らない。
確かなのはブラムウェル家の嫡男であるゴードンに異常な愛を捧げていることだけ。
彼が生まれたときから王宮には魔女からの求愛が届き続けていた。
愛の言葉から始まったそれは、やがて王家への脅迫へ変わった。
『奪うのではなく愛されたいのです』
『必ずや私を妃にさせてみせます』
そうして18年間、王家は姿すら見せない求婚者と戦い続けてきた。
「貴族の令嬢であることを突き止めるのに何年かかったと思っている! あとは炙り出すだけだろうが!」
「昨夜の悪夢の影響範囲から候補者用離宮群にいることは間違いないかと」
「そんなことわかっている! 使い魔を伴って現れやすいよう、供まで許したのだ! 来ないわけがなかろう!」
大臣が答案用紙の束を叩いてまた吠える。
「だから、この偽合格者をどうやって振り落とすのだ!」
「全員、合格にしろ」
ゴードンは二本同時に点火した煙草を器用に吸っている。
「ずるい女は嫌いではない」
この生誕祭の意味が花嫁選びであるのも事実だった。
煙草試験にしても何をどこから取り出し、どう火を点け、従者がどう補助するかを監視し、問題のなかった喫煙勢を振り落としたが、そもそもゴードンが喫煙する女が嫌いだというクソみたいな理由で失格にした側面もある。
騎乗試験においては意図的に荒れやすくされた騎獣への魔法的干渉や従者の能力を見るのと併せて、国を守る王太子妃として胆力・身体能力・判断力をも精査されていた。
「そうしますと、今宵の前夜祭は……」
大臣の言葉を将軍が引き継いだ。
「国宝問題が解けた26名の参加になります……」
「許す」
そう言って、王太子は新たに一本追加して煙草の三本吸いをするのだった。




