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聖騎士少女の多難な任務  作者: いかぽん


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賊徒のアジトへ(2)

 ユニスはラヴィニアや三十人の兵たちとともに、たいまつを掲げて山中の道なき道を進んでいた。


 部隊全体で数個のたいまつを持っているが、それでも十分に視界が確保されているわけではなく、足元もおぼつかない。


 ユニスだけならばまだしも、大人数の兵たちがまとまって移動するとなれば、進軍速度はさほど上げられない。


 それでも少しずつ、目指すべき場所へと近付いていた。

 このあたりまで来れば、目標地点の灯りも見えてきていた。


「ユニス、緊張してる?」


 ラヴィニアが声をかけてくる。

 ユニスはそれに、小さくうなずいた。


「してる。自分の判断で部隊を動かすのは初めてだもん。ニアは?」


「ボクも緊張してるよ。実戦で魔法を使ったことは、あまりないからね。──あのフィオって子はすごいよね。腕がいいだけじゃなく、物怖じしないっていうか」


「場数を踏んでいる感じはするわね。私も負けていられない」


「あんまり無理はしないでね、ユニス。万が一、ユニスがこんなところで死んだりしたら、ボクも後を追うしかなくなる。ユニスがいない世界なんて、生きる価値がないからね」


「それは責任重大だ」


「ユニスはいざとなると、変に自己犠牲の精神とか発揮しそうで怖いんだよ。ボクのためでもいいから、自分の身を疎かにしないで」


「了解。でも自分の身ばかり案じていたら、領民のために戦うことなんてできなくなるし。家で引きこもっているしかなくなるわ」


「それはそう」


 二人がそんな話をしていたときだ。

 前方の暗闇の向こうから、何かの気配が近付いてくるのが分かった。


 ユニスは兵たちに警戒を呼び掛けると、剣を鞘から素早く引き抜いて盾とともに構え、ラヴィニアを守るように前に立つ。


 少しの後に、ユニスたちの前に姿を現したのはフィオだった。


 安堵するユニスに、斥候の少女は手早く状況を説明してくる。


「襲撃がバレた。でもやつら、かなり油断していた。すぐに攻め上がれば、やつらに十分な準備の時間を与えずに済む」


「わかった。──皆さん、敵にこちらの存在が知られました! 急いで敵のアジトまで攻め上がり、強襲を仕掛けます! ニア、私の盾に、光の魔法をお願い!」


 ユニスは兵たちとラヴィニアに指示を出しつつ、鋭く前方を見据える。


 少しの後、ラヴィニアの魔法行使の声とともに、ユニスの盾がたいまつのように明るく輝いた。


 それを確認すると、ユニスは可能な限りの全速力で、山中を駆け上がった。


 フィオがその横に並ぶ。

 背後ではラヴィニアが、飛行魔法を行使したのが分かった。


 ユニスが木々をよけながら山野を駆け上がっていくと、やがて前方から、賊のものらしき狼狽した声が聞こえてきた。


「くそっ、どうなってやがる! 敵の数は!?」


「分からねぇ! たいまつの数と同じなら六、いや七人か」


「んなわけねぇだろ! 間違いなくもっといる!」


「大将はどうした! まだ出てこねぇのか!」


「大将なら地下に行った! 檻の中のアレを出してくるんだろ!」


「だったら少し持ちこたえりゃあいいってことか。くそっ、早いところ頼むぜ大将」


 それらの声を聞いたユニスは、山野を駆け上がりながら思案する。


 何か敵に、切り札のようなものがあるのか。


 隣を走っていたフィオに聞いてみても「分からない。そこまでは調べられなかった」との答えが返ってきた。


 たかが賊徒と侮っては、足元をすくわれるかもしれないと思う。

 だがここで引き返すわけにもいかない。


 ただ敵が逃走を図るつもりがなさそうなのは、面倒がなくていい。

 散り散りに逃走した賊どもを、一人ひとり追跡して討伐するという骨の折れる作業をせずに済みそうだ。


 そのとき頭上から、「ユニス」とよく聞き知った声が降ってきた。


 ユニスは一度足を止めて、頭上を見上げる。


 木々の葉の合間に見える、真っ暗な夜空に目を凝らすと、魔導士のローブと杖を手にしたシルエットが辛うじて確認できた。


 そこに彼女がいると分かって注視しなければ気付けないほどだったが、それは敵にとっても同じだろう。


 シルエットは、ユニスに向かって小さくうなずいてみせると、前方へと向かって飛んでいく。

 ユニスもまた、移動を再開した。


 やがて敵のアジトを目視できる場所まで来た。


 邪神を象った石像のある、古びた邪神殿だ。


 外壁や邪神像には、無数の植物のツタが蔓延っている。

 入り口脇の壁には、火のついたたいまつが設置されていた。


 賊どもとは邪教徒と、何か関係があるのだろうか。

 単に廃墟を寝床として使っているだけとも思える。


 そうした邪神殿の前には、今、十人をゆうに超える数の男たちが集結していた。


 剣や斧、槍や盾などの思い思いの武具を手にしており、革鎧や鎖かたびらを身に着けている者もいる。


 何日も風呂に入っていなさそうな汚らしい身なり。

 装備に統一性もなく、いかにも賊徒という印象を受けた。


 だがそのうちの二人は、裸の女性をそれぞれ一人ずつ、腕の中に捕らえていた。


 ユニスのほうから敵の姿が目視できるということは、たいまつのように輝く盾を持っているユニスもまた、当然に敵の視界に入っている。


 フィオはいつの間にか、ユニスの隣からはいなくなっていた。


「そこで止まれ! 何もんだテメェら!」


 賊の一人が、ユニスに向かって制止の声をかけてくる。

 それは裸の女性を捕らえていたうちの一人だ。


 彼の手中の女性の首元には、剣が突きつけられていた。


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