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聖騎士少女の多難な任務  作者: いかぽん


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6/12

村の様子

 ユニスはラヴィニアや兵士たちと合流すると、ケルト村へと入った。

 そこで村の惨状を目の当たりにすることとなる。


「ひどい……」


 そうつぶやいたのは、ラヴィニアだ。

 ユニスもまた、拳を強く握りしめる。


 彼女らの前には今、村人たちの墓があった。


 簡易なものだが、その数は数十にも及ぶ。

 すべて賊どもに殺された者の墓だという。


 村のいたるところには、地面に大量の血がしみ込んだ跡があった。

 この村でどれだけの惨劇があったのかは、想像するに難くない。


 二人の隣で、年老いた村長が、苦しげに語った。


「殺されたのは、ほとんどが男です。女子供も何人か殺されました。多くの若い女は、いずこへか連れ去られました。今この村に残っているのは、老人や子供ばかりです」


「……許せない。絶対に」


 ユニスは拳と声を震わせていた。


 連れ去られた女たちがどんな目に遭っているかは、火を見るよりも明らかだ。

 殺された男たちの無念も、いかほどか計り知れない。


 一家団欒、幸せに暮らしてきた家も少なくないだろう。

 それを賊どもは、めちゃくちゃにぶち壊したのだ。


 悪党どもは、いつもそうだ。

 力なき人々から大切な日常を奪い、理不尽な暴力ですべてを踏みにじっていく。


 初心を思い出す。

 そんな理不尽な世界を、少しでも良くするために、ユニスは聖騎士になったのだ。


 たとえそれが、いつも本質的に手遅れであったとしても、次に起こる不幸を減らすことにはきっと意味があると信じて──


 力なき村人たちを虐殺し、自らの欲を満たそうとする賊徒への怒りが、ユニスの胸になみなみと満ちあふれていた。


「で、許せないのはいいとして。ここからどうするんだ、隊長さんよ?」


 後ろで様子を見ていた兵士グランツが、ユニスに声をかける。

 彼を筆頭として、三十人の兵たちがそこには集まっていた。


 ユニスは彼ら、兵たちのほうへと向き直る。

 賊どもへの怒りによって、すっかり据わった目で、グランツらを見る。


「私が指揮をしてもいいんですか」


「ま、今のところはな。気に入らなけりゃあ、そんときに言うさ」


「いい加減なものですね」


「そう怒るなよ。悪いのは俺たちじゃねぇ。賊どもだ。そうだろ?」


「正論です。その賊どもを倒すために、協力してください」


 それからユニスは、兵たちの前で、ここに来るまでに考えていた作戦を伝えた。

 といっても、情報が限られているので、かなりざっくりとしたものではあるが。


「これより私たちは、フィオと合流して、敵のアジトに襲撃を仕掛けます」


「今からか? ここから敵のアジトまでは、山中に入って一刻ほどって話だろ。すぐに暗くなっちまう。たいまつに火をつけて山道を登ったら、上にいる敵に今から攻めますって知らせてやるようなもんだぜ? 朝になってからのほうがよくねぇか」


 グランツからの異論。

 ユニスもそれは考慮済みだ。


「一理あります。でも賊のアジトに連れ去られたという女性たちは、今このときもずっと苦しんでいます。少しでも早く解放してあげたい」


「だから、そういう綺麗事に付き合って、命を落とすのは御免だと──」


「それに私たちはすでに、敵の見張りを殺しています。時間を置くほど、敵に私たちの存在が気付かれるリスクが上がります。朝を待つ前に、アジトから逃げられてしまう可能性もあるでしょう」


「チッ、なるほどな。今の段階で見張りを潰したのは、早計だったか。とはいえ今さらだな。あのときにゃあこの絵が見えてなかったんだ、仕方ねぇ」


 ここにおいてユニスは、独断で決めなくてよかったと安堵した。


 グランツらにあらかじめ方針への同意をとっていなければ、ぐちぐちと落ち度を責められていたに違いない。

 人は自分で決めたことには、納得をするものだ。


 グランツは少し考える素振りを見せた後、ユニスに向かってこう言った。


「分かった、お嬢の言うとおりでいい。だが攻める前に、これだけは約束しろ。敵が人質を取ってきたときは、見捨てろ。全員助けるなんて甘えたことは抜かすんじゃねぇ」


「……そうですね。そのような事態はできれば避けたいですが、やむを得ない場合は、仕方ありません」


 ユニスは沈痛な面持ちでそう返して、うつむいた。

 少ししてから、隣にいる相棒に問いかける。


「ニア。今から攻めるとして、たいまつを持って夜に進軍すると目立つのは事実だけど。そのあたりは魔法でどうにかできない?」


 宮廷魔術師の少女は、少しの間思案してから、こう答えた。


「難しいね。一時的に暗視能力を付与する魔法はあるけど、一人ずつしかかけられない。この人数にかけるとなると、ボクの魔素(マナ)を全部使い切っても全然足りないよ。認識疎外の魔法を使えば気付かれにくくはなるけど、それも夜にたいまつだと心もとないね。使わないよりはマシ、ぐらいかな」


「魔術師様っつっても、万能じゃあねぇんだな」


 そうケチをつけたのは、いつものごとく兵士グランツだ。

 ラヴィニアは、少しイラッとした様子を見せながら、言葉を返す。


「当たり前でしょ。魔術師が万能なら、ボク一人で全部を片付けられることになるじゃん。キミたち兵士はいらない子になって、明日から職探しをしないといけなくなるよ」


「違ぇねぇ」


 グランツはガハハと笑う。


 そうしたやり取りを見たユニスは、このグランツという兵士は、悪気はなくて単に無神経なだけかもしれないなと思い始めていた。


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