嵐の前の静けさ?
長らくお待たせしました
まもなく魔物討伐の戦勝会が行われるということもあり、城内は落ち着かない空気がただよっている。
元敵対国ということでユーレストとどちらで開くかで一悶着あるかと思いきや、意外にあっさりセレスティナでの開催が決まったそうだ。
私も、この日のためにとまた新たなドレスを作らされ…もとい作ってもらうことになり、着せ替え人形と化した日々がようやく終わると思うとホッとする。
なぜか側妃のレオナ様が「この子の目にはこの色の方が」とかドレスの仕立て職人と張り切ってしまい、余計に時間がかかったのだ。
母のことを思い出したのか懐かしむような目で見られてしまっては、逃げる気にもなれず。
結果、頭の上から爪の先までのコーディネートを全て決めるまで続いたのだった。あれはキツかった。…お母さんとはしゃいでるみたいで少し楽しくもあったけど。
ユーレストの歴史を調べていた手を止め、窓から外を眺めると、今日もフィルとエドが稽古をしている様子が見えた。
ここ最近、あの2人はよくああやって模擬剣を取っては対戦している。
心なしかエドの腕前もメキメキ上がっているように感じる。
あの2人、いつの間に仲良くなったのかな?
取り立てて接点の多くなかったけど、先日の討伐での共闘が効いているのだろうか。
そんなことを思いながら、気付けばフィルを見つめていた。
…最近、バタバタしててフィルと全然話せてないんだよなぁ。
今回の功績を踏まえて部隊の人員が変わるとか新しい人員を募集するとかで騎士団の上層部も忙しいらしく、護衛も表向きは騎士団の誰か、裏ではシュウが勤めている。
蜘蛛の時のお礼もちゃんと言ってないし、というか単純に、
「会いたいなー…」
独り言のつもりでつぶやいたのに、そんな言葉を受け取る者がいた。
「フィリスの旦那は最近弟殿下に捕まっちゃってるからねー」
唐突に降った声にパッと振り返った目に踊る色は黒。
黒短髪に金色がかった瞳が黒猫を連想させる。
「ぉお⁉︎シ、シュウ!いつからいたの⁉︎」
「ちょっと前。姫さんが物憂げに外を眺めてるところを眺めてたよ。」
「なにそれ声かけてよ!恥ずかしい!ビックリした〜」
この間のことがあってギクシャクしないか心配だったけど、そこはやはり器用なシュウ。
違和感なんて微塵も感じさせないし、私も普通に対応できてちょっと安心した。
至近距離に来られるとまだちょっと緊張するかも。
「フィリスの旦那と話しあってないのかい?」
「ん?話し合うって??話すどころか全然会えてないんだよね」
ふーん?と首を傾げたシュウは心得たとばかりに頷いて出て行ったけど、私は夜に会いに行くと怒られるかなーなんて考えに耽っていて、シュウの企むような笑顔には気づかなかった。
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