ティアの決意
お待たせしました。
妹のキャラ結構好きです。
※爵位の箇所にこの後の回との矛盾がありましたので訂正いたしました。失礼しました…(2015/11/29)
別室には、先ほど部屋に飛び込んできた妹さんと、おそらくフィルのお父さんがいた。
淡い茶色の髪にフィルと同じ青い瞳のナイスミドルという感じだけれど、普段は厳しいことが伺える。
2人はわたしが入室してすぐに立ち上がり、臣下の礼を取る。
「御二方とも、今回は公式な場ではないし、この場で私に対して畏まった儀礼は必要ありません。」
「は。恐れ入ります。ご挨拶が遅くなり申し訳ありません。お初にお目にかかります、パオロ・ディオルクと申します。これは、長女のチェルシーにございます。公爵の地位を賜っております。」
公爵、と心の中で驚く。
フィルのお家って身分が高かったんだ。
「…私は、セレスティナ第一王女、ティアと申しますわ。ディオルク家は王都からは離れたところにあると聞いています。遠方よりご苦労でした。」
「いいえ、自分の息子のことですからな。それで…もしや姫様から、フィリスの容態を聞かせていただけるのでしょうか?」
まさか王族が直接説明に来るとは思っていなかったのであろう2人は戸惑っている様子。
「ええ。…その前にひとつ。大切なご子息がこのような最悪の事態になり、申し訳ありませんでした。」
立ち上がって頭を下げると、明らかに焦った声がかかる。
「そんな……姫様、どうか頭をお上げください!騎士とは国と国を司る王族を護るべき者たちです。何の不満がありましょう。」
戸惑いを濃くしながらも、そう言った彼に、目を伏せながらもう一度頭を下げる。
公の場じゃないからこそティアとしての気持ちで誠意を持って対したい、そういう気持ちの表れだった。
その後は顔を上げて、しっかりと目を見ながら状況を説明していった。
その間、黙ってこちらを見つめていた妹さんが、何を思ったかパッと立ち上がり「わたくし姫様とお話したいのですけれど、この後お時間頂戴できますか?」と尋ねてきた。
遠方から来た2人は今夜は城に泊まることになるだろうし、時間はある。
本当は夜もフィルの傍についていたかったけど…。
「えぇ、構いません。では夜にでも部屋にお招きしますわ。」
そうして、準備をするために私はフィルが倒れてから初めてきちんと自室に戻って一息ついたのだった。
そしてその夜。
やってきたチェルシーにマリアがお茶を入れる。
意外に同い年だったチェルシーは、私がもともと暮らしていた平民文化にも興味があるらしく、昔話をしたら目をキラキラさせて聞いてくれた。
彼女は、暫く談笑した後、おもむろに爆弾を投下してきた。
「姫様。単刀直入にお伺い致します。……兄とは、もうそういう関係ですの?」
「そういう???」
わからず首をかしげる私にチェルシーが「恋仲、ということですわ」と補足する。
「えっ!?こっ恋仲ぁ!?ないない、ないよ!だって私いつもフィルに呆れられてるし!全然私のこと女として見てないよ多分!」
思わずいつもの砕けた口調が出てしまう。
「…つまり、姫様ご自身は兄に対して悪い気持ちはないということですわよね?」
「う…うん??いや、まぁそうだね…」
ひょっとしたらコレって恋?的なことすら最近ようやく自覚してきたばかりなのにいきなりこんな恋話はハードルが高い。
チェルシーはひとつ頷いて、「それが聞けただけで満足致しましたわ。あとはお兄様を回復させるだけですわね!」とにっこり笑う。
言動やら言葉遣いやらを今更姫として取り繕ってもバレるだろうな…と思ったら、ぽつりと弱音を吐いていた。
「…光魔法で治癒すると思ったんだけど、闇が濃すぎて今の私程度の光魔法じゃ受け入れられなくて…どうやっても取り除けないの」
項垂れる私を見て、チェルシーは軽い口調で「姫の呪いは王子様のキスで解けるっていうのが物語の定番になっていますけれど。寝坊助のお兄様に姫様の口づけは勿体ないですわね!」そんな風に言ってひょい、と肩をあげた。
元気付けようとしてくれたの、かな?
フィルのご家族に気を遣わせちゃうなんて……情けないよ私!どんな難題依頼もクリアしてきた元何でも屋根性どこいった!
「…うん、よし!何としてもフィルに目を覚ましてもらわなきゃね!」
「その意気ですわ、姫様!」
チェルシーが令嬢らしからず、ガッツポーズをつくって応援してくれる。
ここで嘆いている場合じゃない。
チェルシーが客室へ戻った後、ある決意を胸に、いまだ眠るフィルの元へ向かった。
読んでくださりありがとうございますー!
フィルのお父さんは物凄いダンディ設定にしたかったけど、表現力がついてこなかったです!無念!!