夜、星、慌ただしい鼓動
夕食を食べ終えお風呂からあがると、
キャンドルの薄明かりの中、
フィリスさんが小さな窓枠に腰掛けて外を眺めていた。
……ブロンドの髪が月の光に透けていてまるで光に包まれているような幻想的な雰囲気を醸し出していた。
絵になるなぁ…。
思わずじぃっと見つめていた私の視線が気になったのか、
フィリスさんが振り返った。
「…なに見てるの」
「あーいや。綺麗だなぁと思って。」
「は…?」
フィリスさんが眉を顰めたので、機嫌を損ねないよう慌てて話題を変えた。
「で、何を見ていたんですか?」
「……星。」
「へーそんなによく見えるんですか?」
窓に寄って、外を覗き込んでみる。
確かに、星がよく見える。これなら明日も快晴ですね!
星空を鑑賞していると、頭のすぐ上から声がした。
「あのさ、わざとなの?」
「はい?」
フィリスさんに目をやると、
すぐそばで綺麗な顔がこちらを見下ろしていた。
月の光の中で見ると青い瞳が夜色に染まって吸い込まれそうだなーとか一瞬だけ考えて。
固まった。
フィリスさんが腰掛けているところの横から外を覗き込んだら、
窓枠が小さいせいかかなり密着する形になってしまっていた。はたから見たら身を寄せ合っているように見えたかもしれない。
カーッと一気に顔が熱くなってしまう。
「す、すみません。気付きませんでした」
少しずつ下がって離れる。
「………ああ。」
顔の火照りが収まらない。
男性経験ない歴16年ですけど何か?!
これしきのことで赤くなるとか、
呆れられるんだろうな…と思ってフィリスさんを盗み見ると
目があった。
「おぅあ⁉︎」
「…何変な声出してるの。
早く髪を乾かしてもう休みなよ。」
「はっはい。あ、でも、ベッドはロードさんとフィリスさんで使ってください。
私が一番体小さいですし、ソファで眠れます。」
おそらく今日一番の盛大な溜息。
「何でそこまで無神経で分からず屋になれるんだ…。」
「そこまで言わなくても…」
「一応君は女性なんだからダメって言われるのわかるだろ」
「一応って!まぁそれはわかってますけど…」
「ーー本当にわかってる?」
不穏な空気を出してフィリスさんが一歩詰め寄った。
そのプレッシャーに気圧されて私は大きく一歩下がる。
「わっ!」
足がベッドにあたって後ろに倒れこんでしまった。
起き上がろうとしたら、顔の両側にフィリスさんの腕を置かれて下手に動けなくなってしまう。
吐息がかかるほどの距離に顔が迫る。
軽く身をよじろうとするけど、
顔や体を固定されて全然動けない。
何この態勢!?さっきよりもかなり密着してるんですけど!
えぇい静まれ心臓ー!
バクバクする心臓をおさえながら心の中で悲鳴をあげている私の慌てっぷりを
知ってか知らずか、フィリスさんは続ける。
「本当にわかってる?俺達が男だって。いくら姫様でもこんなことしてたら、
君から誘ったって言われても仕方ない」
「な…っ」
「君が姫になったら、何でもそういう風に言って貶める奴だっている。
君は呑気すぎ。もっと警戒するべきだ」
厳しい言い方とは裏腹に、
フィリスさんの瞳は優しい。
ずるいなぁ…そんな目で見られたら素直になるしかないじゃないですか。
「…フィリスさん。心配してくれてありがとうございます。
誰でもかれでも信用しているわけじゃありませんから、安心してください。」
フィリスさん達だからです、と言ったら、まじまじと私を見下ろしてから、
ようやくどけてくれた。
逆にそんなに信用されてもな…
私は体勢を立て直すよりもまず心臓を落ち着かせるのに必死で、
そんなフィリスさんのつぶやきまでは聞き取れなかった。
ようやく気分が落ち着いては来たんだけどまだ起き上がる気になれず…
ていうか、変に緊張したせいか…眠く…なって………
拙い文を読んでいただきありがとうございます。
全然甘くならなくてすみません(笑)
しばらくやってくとデレたり何したりがあると思います…よろしくお願いします。