姫の護衛につくのは
ティアが側妃に傷つけられてからしばらくしてからのこと。
ここ最近、騎士団内では、「誰がティアの正式な護衛になるか」が話題の中心になっていた。
何度か騎士団に訪れ、気さくに話す愛らしい姫様をお傍で護りたい…そんな騎士が多かったのだ。
団長に直談判しに行った者もいたのだが、ある日、ついに団長が爆発した。
「お前らいい加減にしろッ!!次から次へと!そんなに姫様の護衛がやりたいなら実力順だ!
戦って勝ち残ったやつにやらせる!!」
「団長、それは隊長も参加可能ですか?」
その落ち着いた声に色めきたった騎士団の訓練場は一気に静まり返った。
「ロード…と、フィル、お前もか。」
ゼノンはロードとその隣に立ってこちらを見据えるフィリスを見て唸った。
「…お前らが完全に抜けることは許可できないが、交代でつくのなら隊長格が護衛にいるのは安全面からも悪いことではないだろう」
「ふふ…ただロードとフィリスが加わるなら姫様の護衛の枠は残すところ常に行動を共にする2名だね。
うーん結果は見えている気がしなくもないけど、せいぜい日頃の鍛錬の成果を見せてもらうとしようか?」
それはそれは楽しそうに告げるアーノルドの姿に騎士達は戦慄した。
かくして、「姫様の護衛の座争奪戦」の火蓋は切って落とされたのだった。
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側妃とひと悶着あってからしばらくして、父に呼び出された。
エドと国の歴史について教わっていた私は、講義が終わった後、一緒に大広間へ向かった。
広間に入ると、そこにはフィルやロードさん、騎士のみなさんが集まっていた。
「ティア。最近講義だらけでがんばっていると聞いたが無理してないか?」
心から心配してる声音に微笑してしまう。
「なりたいものに向かうのに多少の無理はつきものですわ、お父様。
でも無茶はしないつもりですから。心配なさらないで?」
マリアの前で練習がてらずっとこの喋り方をしてるからだいぶ慣れてきた。
でも自分ではかなり気持ち悪いと思ってる。公に出る時だけの我慢だ。
深く笑んだ父は呼び出した理由を話してくれた。
「そうか…。今日来てもらったのは他でもない、そなたの護衛が正式に決定したからだ。
議会の決定として周知させているから、今後行動はその護衛を連れてするように。」
「承知しました。それで、どなたが私の護衛についてくださるのかしら?」
「ロード・ディオポルト!フィリス・ディオルク!ディエゴ・ランドルフ!ポルナレフ・チェスター!前へ。」
「はっ」
すっと前へ歩を進めたのは、見知った顔だった。このメンバーなら私も気が楽だけど…
「…お父様!確かにロードさんたちが護衛であれば安心かもしれませんが、特にロードさんやフィリスさんは騎士団の隊長という重要なお役目が既にありますわ」
「自ら立候補したんだ。しかも今回の件は事前に我こそが、という者が多くてな。熾烈な戦いの勝者を護衛とすることにしたのだ。結局はお前もなじみの強い騎士達になったがな。
いや~お前もすみに置けないなぁティア!さすが私とカレンの娘だ!」
はっはっは!と国王陛下としての仮面もぬいで笑ってるけどお父様。
何その戦いって?知らない間に何故そんなことに??姫の護衛ってそんな名誉なこと???
ちらりと見ると、ディエゴさんとロードさんはこちらに笑顔を見せ、
ポルナレフさんは相変わらずの無表情でこちらへ軽く頷いてくれたけど、フィルだけは真っ直ぐにお父様を見ている。
その周りの騎士達はすました顔をしているが、どこか悲壮感が漂う。
隣に立つエドも、これまた何だか複雑そうな表情。
ちなみにエドにはすでに以前からしっかりと護衛がついているけど、最近ではめきめきと剣の腕を上げているようなので、そのうち護身術だけでも安心できそうだ。
頼もしい限り。
「はぁ…仰る意味がよくわかりませんけど…皆さん、お世話になりますわ。よろしくお願いしますね。」
国王が決定したなら私が口をはさむことでもない。
護衛をしてくれるその場の4人に簡単な礼で気持ちを伝える。
「「「はっ!」」」
こちらを向き、胸に手を当てるポーズで答えてくれた。
その後、正式な護衛編成は翌日からということで、今日は護衛にフィルとロードさんがついてくれている。
よくよく考えたらこの護衛編成、かなり豪華だったんだなぁ。
ま、エドもいるからこの2人になってるんだろうけどさ。
にしてもロードさんはともかくあまり私のことを好いてなさそうだったフィルまで護衛に立候補してくれたんだよね??
どういう風の吹きまわしなんだろう?
何だか騒がしくなりそうな予感にこっそり苦笑してしまった。
読んでいただきありがとうございます。
ちょっと蛇足補足続きですみません。
もう少ししたら動きます……
と、思います!(笑)
あとはあの人にも再登場してもらおうかなぁと思ってます。