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夜のレッスン

なんかタイトルがやらしいな…。


さて、馬術のほかにも壊滅的だったのがダンス。


街のお祭りでみんなと踊るのとは訳が違う。当たり前だけど。


優雅さって何だろう…迷宮入りしそうなことを考えながら、

ひとり深夜のダンスホールでステップの特訓をすることにした。



ゆっくりと、1、2…と数えながらステップを踏んでいく。


すると、

「…なにしてるの」

温度の低い声がダンスホールに落ちた。



「あ…フィリスさん!今、ダンスの特訓をしているんです。」


そう答えると、フィリスさんは訝しげな顔になった。


「ダンス?怪しい儀式でもしてるのかと思った。」


「…そんなに変な動きでしたか?」


「かなり」


そうか…なかなかうまくなってきたと思っていたのは気のせいだったか…。


「きちんと相手役をたてないと練習にならない。」


「私が足を踏みすぎたせいか、みんなぐったりしてしまったので早めにレッスンが終わったんです」

不甲斐なさでしょんぼりしつつ言うと、フィリスさんがため息をついて近づいてきた。


「下を向かないで。姿勢は常に意識して。でも1番はテンポを合わせること。」


フィリスさんはスッと自然な動作で私の手を取ると、腰を抱き寄せた。

きゅ、と手が握られ心臓がうるさいほど鳴った。

音が聞こえてしまわないか心配だ。


今までにないくらい体が密着して顔の距離が近づき、改めて整った美しい顔だなぁとぼんやり眺めてしまった。

フィリスさんはぼんやりしてる私に気づいたのか、眉を顰め、握っていた手で今度は私のアゴをすくう。


「なにじろじろ見てるの。さすがにそんなにダンスする相手のこと見る人はいないよ。」


「ごごごごめんなさいっ!あまりにも綺麗な顔だったのでつい!」

その言葉にますます眉間のシワを増やしてしまった。


というかアゴをすくった手を離してほしい。

あまりの緊張で目が潤んでくる。

はたから見るとまるでちょっと危ない関係の2人だ。

そう思って身を引こうとしたけれど、ガッチリ腰をホールドされていて逃げられない。


「あ、あの、フィリスさ、」


「じゃあその綺麗な顔、ずっと眺めさせてあげるよ。みっちりと」


あっ怒ってらっしゃいますね!?

美人が怒ると迫力倍増です!かなり怖い!


「はいぃっ」と情けない声を出し、私は顔を引き締めた。



どれくらい踊ったのだろう。



なんとか足を踏まずに踊り切ることができるようになった。


フィリスさんのスパルタめ…。


でも、フィリスさんは素人の私でもわかるほどリードが上手で、

力を入れずに身を任せられるようになると、勝手に体が動いて踊れることがわかった。


これで何とか見られる動きにはなったはず。

明日のレッスンで先生を驚かせて見せよう!


そんな心中の盛り上がりとは対照的に足はガクガク。

思わずへたり込みそうになった私をさり気なくフィリスさんが支えてくれる。


「す…すみません。あの、フィリスさん。」


「…フィルでいい。みんなそう呼ぶ。」


「え、えぇと…?…じゃあ、フィルさん…」


「さんも敬語もいらない。身分は一応君の方が上だから」


急にどうしたんだろう?何だか年上にタメ口って慣れないんだけどなぁ…。

「じゃあ、えっと、フ………フィル。あの、今日は、ダンスを教えてくれてありがとう。」


そして呼び慣れない呼び方だと何だか照れて思わずはにかんでしまう。

ダンスした直後のこともあってか顔が火照って仕方ない。


「……別に。変な儀式みたいなのをパーティーでやられたら王国の恥になるから」


「でも、フィリ…フィルのおかげで、足も踏まずに踊れるようになったから、すごく嬉しい。

これでみんなも相手しやすくなるかな?」


こちらに目線を戻したフィリスさんはじっとこちらを見つめてくる。


「………どうだろうね。誰か相手してほしい人でもいるの?」


「え?いや、別にそういう訳じゃないけど。申し訳なくて。」


「じゃあまた明日も相手してあげるよ。」


「え?…いいの?」


「他の人たちも仕事があるから心身共に無理はさせられない。」


「私とのダンスはそんなに精神にも肉体にもダメージを与えるわけ…?」

ブツブツと文句を言うと、フィルはふっと口元を緩めた。


え、、、ひょっとして今笑った!?



すぐにもとの冷たい表情に戻ってしまったけれど、一瞬顔に浮かんだ柔らかい微笑らしきものに、

私は不覚にもどきっとしてしまった。


動揺したせいか、足から力が抜けてまたフラついてしまった。

「あ…っ」


とっさにフィルが支えてくれるけど、これはちょっと休んだ方が良さそう。


「フィル、ありがとう。少し休んでから部屋に戻るから。行ってていいよ。」

そう言って下がろうとしたら、突然肩を抱かれ、かと思えばいつの間にか抱き上げられていた。



えええぇ!またーーーー!?

フィルはお姫様抱っこするの好きなの!?

騎士ってみんなこうなの!?



前のときよりさらに優しく壊れ物を扱うように抱かれているせいか余計に羞恥心で顔に熱が集まる。


「あのフフフフィル?大丈夫だから…」


「いや、少し厳しくやりすぎた。お詫びに部屋まで送る。」

フィルは話も聞かずに歩き出した。例の微笑み付きで。



なんだか今日のフィルは心臓に悪いです…



読んでいただきありがとうございます。

明日は更新できるかわかりませんが…ガンバリマス。


フィリス…一歩前進?



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