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突然姫って言われても困ります!  作者: *まるこ*(改名しました)
番外編(これまでの別視点/その後のものがたり)
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新米騎士と猛獣③

ハノアの回、最後です!


目の前の男が少し指先に力を込めれば、ハノアの頭には風穴があくだろう。


久しぶりに、死の気配をすぐ側に感じる。


昔初めて1人で狩りに出かけた時に背丈の3倍の熊に出会った時以来だ。あの時は死に物狂いで走って逃げおおせた。


だが、今回は背後に守るべき市民がいる。


騎士がここで何もせずにやられる訳にはいかない。強い目で見返す。



「よくやってくれたなぁ。お前、一般市民じゃねぇな?てぇか、よく見たら髪に隠してるみてぇだがその耳…」


銃を持っていない方の手でハノアの髪の下の耳に触れようとした男だったが、突然「グァあっちィッ⁉︎」と叫んだかと思うと、銃を取りこぼす。



その隙を逃す手はない。

即座に腕を捻り上げて床に叩きつけ、逆に拾った銃を突きつける。



「お終い」



目にも留まらぬ速さでこれまたシュウにもらった'ナイフでも切れない'という素材の髪紐で腕と足を縛っておく。


その際、男の背中の服が焦げた下に、火傷のような跡があることに気づいた。


誰の手助けがあったのか、自ずとわかる。



縛りおえて立ち上がると、扉の向こうから顔を出したのは、ロードやポルナレフ、ルノアール、騎士達。


「ご苦労様〜。上は取引相手ごと拠点を制圧したわ。こっちも大丈夫みたいね。みんな、助かって良かったわ!さ、外に

行きましょう」


「コイツらも連れて行きます」


ポルナレフや騎士達が賊を担いで運び出し、ルノアールが女性や子供たちを支え屋敷の外へと促して行く。




それを見送って、ようやく緊張を解いて深く息を吐く。

扉の側にはまだロードが残っていた。



「ロード隊長、援護ありがとうございました」



「いいえ、貴方の目が負けていなかったから勝てたんですよ」



ロードは優しくハノアを見つめ、微笑する。



「本当に……………よくやった、ハノア。」




この時のハノアの気持ちをなんと例えよう。


ワッと胸の内に花が咲き乱れたようなフワフワしたものと背筋がスッと伸びる感覚と。



初めてロードに騎士として認められた喜びもあるがそれよりももっと、無事に市民を守ったことが充足感をくれているという事実。



それが少しだけ、誇らしかった。



にっこり笑ったハノアのを見てロードは一瞬眩しいものを見たような顔をして、目を閉じる。


次にハノアを見た時は瞳の奥に、何かはわからないがいつもと違う熱を抱えていた。




ロードはハノアを見つめながら髪を優しい手つきでかき上げ、ノームアンセスタならではの少しだけ先の尖った耳に触れる。


擽ったさに身をよじろうとするも、顔の両側を抑えられ、動くことができない。



「さっき…本来ならこちらに注意を惹きつけて銃口が外れてから攻撃すべきだったのですが。貴方の耳にあの男の手が触れそうなのを見て、つい手が出てしまいました」



なんの話かと戸惑う。


そんなハノアの耳の後ろから髪を梳くように動かし先日の話ですが、と前置きしてゆっくり話し出す。



「貴方はれっきとした、騎士です。私もそれはわかっていますし隊長としては厳しく見るようにしていますが、無意識に………女性として扱ってしまっていたようです」



嫌な想いをさせてすみません、と頭をさげる。



子供扱いじゃなく、女性扱い?


つまりそれはどういう意味だろう。

フェミニストのきらいがあるロードだから、騎士とは言えいつものように女性と接するようにしてしまったということか。



「あー、伝わり辛いですよね。すみません、自分でもこの手のことは得意ではない上、あまり本音でストレートに話す機会が少ないもので。」



頬をかくロードの表情は、これが素顔なのか今まで見たことのないものだったため、否が応でもドキッとしてしまう。



「特別な女性に対する態度、ということです」



何を言われたのか理解できず、目を丸くしてポカンとしてしまう。


ふ…と目線を落とし胸元におもむろに手を伸ばしてくるロードにびくりと身をすくませる。


チャリ、とその手に収まったのは、いつの間にか首にかかっていた、お守りの木のネックレスだ。



「男の子がコレを持って助けを呼びに来た時は心臓が止まるかと思いました……」


歴戦の勇者、紅蓮の騎士と名高いロードの弱ったような声色と憂いを帯びた眼差しに、ハノアは何を言えばいいか、必死に頭を回転させる。



しかし、ロードがネックレスの先・木の部分をそっと持ち上げ優しく口付けた瞬間、思考を停止した。






「あら?」


囚われた人たちのケアをしていたルノアールは、奇声を発しながら屋敷から飛び出してくるハノアを見て眉をひそめた。


どうしたのかと呼び止めると、真っ赤な顔をして口をパクパクするばかりで、一向に何があったかよくわからない。


「あんたねぇー」


落ち着きなさい、と続く前に後ろから穏やかな声が落ちる。


「失礼、ルノアール殿。彼女を少しお借りしても?」


「え?えぇ、事後処理はこちらで済ませられそうだし構わないけどどうかした?」


「想いを伝えている途中だったのですが突然走り去られてしまったので」


後光がさしそうなまろやかな笑み付きでそう言われ、「あ、そうなの」としか言えなかったのも無理はない。



「草食系かと思いきや意外に猛獣なんじゃないの」


あれは大変ねぇー


引きずるようにロードに連れて行かれる部下を眺めそう呟いた言葉は、風にさらわれていった。



お読みくださりありがとうございます!


ハノアはすごく好きなキャラクターなので別の小説にしようと思ったくらいでしたが、この世界で幸せになってもらうことにしました。


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