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77:ファースト・イン・ジ・アキバ(3)

 夏休みまであと1週間を切った日。荒金靖樹ことラクォーツの

仲間である少女ら二人は「ルダント」というゴブリンのプレイヤーを説得するため

彼が元居たと思われる秋葉原の「A・フォース」というギルドへと潜入した。

正攻法では内部へ入るのは容易ではないため、少女二人での潜入である。

しかし、体験入隊イベントが起こる中、いきなり外部からの侵入者が現れた。

3人の強力な侵入者を前に、イベントの案内役である「ダパルケット」は

苦戦するかと思われたが―――

(文字数:7766)


昼の12時前。山東我門タワー内1階にあるロビー内にて。

ファシテイト内の空間において、戦闘が巻き起こっていた。

しかし、それを察知できた人間は、案内役を担当していた数人のみだった。

今日行っているA・フォースの「初心者用体験入隊コース」は、ギルド員がもっとも無防備になる瞬間とも言えたからだ。


「どうやったの今の……!?」


「す、凄い……同時に二人倒しました」


現在、体験入隊コースの参加者たちは、皆がそれぞれ隠れていた。

初心者も多いが、中堅のプレイヤーもちらほらと居る。

しかし、誰もが目の前で起きている戦いのレベルの高さを目の当たりにして引いてしまっているようだ。


(チッ……チャルドーの奴はもうダメか)


へールズがちらりと仲間の小柄な魔法使いの方を見た。

彼はガンガラの巨体に押しつぶされてしまったために、身体が色んな方向に曲がり、白目をむいたまま気絶してしまっていた。

もう戦線には復帰できないだろう。


「死ねやッ!!」


ダパルケットは接近してきたヘールズと激しい打ち合いを演じている。

ヘールズの剣捌きは相当なもので、目で追うのがやっとだが、丸い円盤のような武器を両手に持ち、ダパルケットは攻撃を受けている。

ヘールズは自分のほぼ全力の攻撃を受けられ、焦っていた。


(なんだコイツ、妙な武器で平然と受けてやがる……!!)


秋葉でも有名なギルドの本拠地であるここを簡単に攻略できると思っていたわけではない。

しかし、目の前のダパルケットは、恐らくはもっとも下級クラスのギルド員だ。だから案内役をしているはず。

それがここまで手強い相手とは、思っていなかった。


「ガッ、ガンガラ! 早く援護しろ! 何してやがる!!」


「援護しようにも、な、何かが巻きついて……は、外れないっ!」


壁に叩きつけられたガンガラは、重い鎧をまさぐりながら自分に巻きついているものを見た。

目を凝らさないとわからないが、細い糸のようなものが見えている。


「絹糸……? いや、ピ、ピアノ線かこれは……!? な、なんでこんなものが!?」


「それは”金剛蜘蛛の糸”でござる。ちょっとしたレアな糸でござってな、なかなか武器に使えるほどの量が採れぬのだ」


「蜘蛛の糸……!?」


「ンなもの早く引き剥がせ! こっちはただでさえ時間がねぇんだ!!」


ヘールズが激を上げ、ガンガラが急いで武器で糸を切断し始める。

しかし蜘蛛の糸と言うだけあって、なかなか切れない。

その間にも、段々とヘールズとダパルケットの打ち合いはスピードが増していく。


(く、くそっ! なんて野郎だ……!! 段々攻撃のスピードが上がっていってやがる! 俺の動きに慣れてきてるってのか!?)


武器の打ち合いだけでは、どうやら決着は付きそうに無い。


(ならば……!)


ある程度打ち合うと、一旦二人は離れた。

そしてヘールズは筒状の武器を取り出し、ダパルケット攻撃の構えを見せた。


「喰らえッ!! ”獄炎花火”!!」


へールズが両手で持った筒状の武器から、大型のミサイル弾が発射された。

深紅の火を吹き上げながらダパルケットへ迫るそれはまさに”地獄の火”を固めて放ったような攻撃だった。


(勝ったッ……!! 奴の武器のリーチなら、こいつは打ち落とせんはず!!)


ダパルケットは短い剣の二刀流と、太い円盤状の盾のような物体が武器のようで、サブウェポンを持っていない。

その二つならば、どうやっても爆破を避けられる位置で花火を打ち落とすことは出来ないはずだ。


「おっと」


ダパルケットが手首を捻ると、円盤状の盾が彼の手から消えた。

そして回転しながら凄まじいスピードで、花火に命中した。


「なっ……!?」


命中すると、花火はダパルケットの前方で爆発した。

そして円盤は同じように回転しながらダパルケットの掌へと戻った。

その挙動の道具にヘールズは見覚えがあった。


「まさかその装備……”ヨーヨー”かッ!?」


「ご名答。拙者は別名”秋葉一のヨーヨー使い”でござる。自称でござるがな」


(クッ……って事は……)


ちらりとガンガラの方を見る。

糸はダパルケットの方から伸びていた。

恐らくは最初の突撃の時、素早くヨーヨーを投げてガンガラに糸を巻きつけたのだろう。

そしてそのまま彼を持ち上げてチャルドーにぶつけたようだ。

だが、すぐにはその事が信じられなかった。


(ヤ、ヤツを”糸だけで引っ張った”って事か!? 嘘だろ……!)


ガンガラの重量は、装備を含めれば相当な重さだ。

小さな車ぐらいには匹敵するかもしれない。

それを軽々と引っ張り、武器のように使うなど、人間技には思えなかった。


「では、種がバレたようなので……拙者の本領発揮と行くでござるかな!」


ヨーヨーがメイン武器であるとわかると、ダパルケットは剣の二刀流を収め、手に持ったヨーヨーでの攻撃を仕掛け始めた。


「くっ……!! な、なんだこの動き……!?」


(な、何あれ……!?)


アリカや夏奈は、その攻撃を口を開けたまま見ていた。

奇妙な動きだった。

ダパルケットが踊るような動きをすると円盤が空中を飛んでいき、命中すると金属音が打ち鳴らされる。

だがヨーヨーはそれで戻るわけではなく、勢いを多少失うものの命中すると反転し、再び勢いを取り戻してから再度ヘールズへと襲い掛かっていく。

まるで、生き物のような動きだ。


「鳥みたい……」


やがてヘールズが膝を突くと、ヨーヨーは彼の周囲を回り始め、あっという間に彼の身体を拘束してしまった。


「うおおおお!!」


完全に手足が糸で巻かれ、動けなくなるとヘールズは地面に伏した。


「一丁上がり、でござるな」


「グオオオオオオ!!」


ダパルケットが振り返ると、やっとの事で糸を切り、近づいてきたガンガラの姿があった。

大剣が振り下ろされ、それをヨーヨーで受け止める。


「ぬぅっ!!」


「ハハハ! 潰れろォッ!!」


ガンガラの強力な一撃は、体重差もあってかかなりの威力のようだ。

ダパルケットは受け止めはしたものの、攻撃は殺しきれず、そのまま兜へと一撃が入った。

そして追撃が彼の横っ腹へと入った。


「グ、ウッ!!」


横っ腹に入るとダパルケットは吹き飛ばされ、そのままロビー内に設置してあった冷蔵庫へと叩き付けられた。


「てこずったが、このままトドメを―――」


ガンガラが更にトドメの攻撃を叩き込むため、武器を振り上げようとするが、動かない。

剣に糸がいつの間にか巻きつけられていて、固定されている。

そして、身体も同じように動かなくなっていた。


「ううっ!! ま、また糸を……! い、いつの間に……!?」


「最初のそこのへールズ殿と戦っていた時に、既に布石を張らせてもらったでござる。拙者の糸は、そなたらぐらいのレベルだとしっかり巻かねば拘束できぬからな」


更に追撃の蜘蛛糸が巻かれ、ガンガラもへールズもグルグル巻きにされた。

この時点で―――ダパルケットの方の勝利が確定した。

最初に二人に絡み付いていた糸は、下半身と腰部分だけだったが今は上半身を含め、身体が完全に拘束されてしまった。

これではもはや一人では逃れることは出来ないだろう。


「くっ……油断した……下っ端と聞いて、ここまでとは思わなかった」


「さて、あとは治安維持ギルドかGMあたりにでも突き出すだけでござるが……その前に、誰の依頼かを吐いてもらうでござるよ」


ヨーヨーを仕舞い、ヘールズを見下ろすようにしてダパルケットは言った。

やがて、ゲーム空間に再びノイズのようなものが走った。


「む? 今度は何でござるか?」


「お……! 危ねぇ危ねぇ。どうやら”あっち側”でこっちの状態を察してくれたようだぜ」


ヘールズが安堵したように言うと、彼の身体が光の粒子に包まれた。

そしてガンガラ、チャルドーの方にも同じようなエフェクトが掛かっていく。

同時に、身体の色が薄くなっていく。


「まさか、ワープでござるか!?」


「てめぇ、憶えてろよ。ぜってぇこの事を後悔させてやるからな……」


ヘールズは捨て台詞を吐くと、そのまま光の塵のようになって消えていった。

あとには破壊されたA・フォースのロビー用ゲーム空間が広がっていた。


「お、終わったみたいですね……」


戦闘が終わると、アリカとルゥリは隠れていたテーブルの下から這い出てきた。

他の体験入隊コースの参加者たちも同じように安全を確認し、出てきた。

アリカは安堵の溜息を漏らしながら、言った。


「い、一体何だったのよあいつら? ハッカーとかPKってのをやってる奴らかしら?」


「おぉい!!」


参加者たちが何が起こったのかを把握しようとしていると、遠くから別のプレイヤーがやってきた。


「おお、魏蘭どの。ディズプどのでござるか」


”魏蘭”と呼ばれた方は軍人が被っているような制帽を被っており、服も角ばった海軍か何かが着るような軍服を着ている。しかし、肩や腰まわりにはそんな落ち着いた服装とは真逆の原色のプレートを付けていた。

まるでその部分だけ、アニメのロボットの部品がくっついているようだ。


「ハック警報が鳴ったので、急いで救援に行こうと思ったんだが、インが中々できず遅れてしまった……すまない」


”ディズプ”と言われたもう一人は布を深く被っていて、一見すると魔法使いのような装いをしているが、えもいえぬ奇妙な生物を模したマスクを顔に被っている。

蜘蛛のような顔につきに、ゴキブリの足のようなトゲトゲした触手が蠢いている。

それは、見ているだけでどことなく嫌悪感を催すデザインをしていた。


「敵は敵はどこだどこだ? 複数の侵入、侵入者が確認されていたが……」


「敵は三人居たでござる。皆、もう逃げていったでござるよ」


やってきた二人に向かって、ダパルケットは言った。


「……どうやら、外からハックしてる奴らも居て、内部への突入が失敗したと判断して、引き上げたようでござるな」


「ディオンズの奴ら奴らか?」


「わからぬ。拘束はしたものの、吐かせようとしたら逃げられてしまったでござる」


3人で話そうとすると、野次が飛び交い始めた。


「お、おい! 結局何が起こったんだ? さっきのあれもデモンストレーションか何かなのか!?」


「まだこれ続ける気なのかよ! 俺もう帰りてーよ……」


「私も帰りたいです! あんな怖い戦い……私できない……」


どうやら、戦闘の一部始終を見ていた参加者たちはすっかり怯えてしまい、もうこれ以上体験入隊コースには参加したくないようだった。

それを見て、溜息をついてダパルケットは言った。


「……とりあえず、ひとまずコースを完了させるでござるか」


それから30分ほどして、ロビーに沢山居た参加者たちは殆どが居なくなってしまった。

皆、いきなり激しい戦闘を見せられてしまい、臆してしまったのだろう。

残ったのはアリカとルゥリのたった二人だった。


「残ってしまったのがたった二人だけとは」


「今年も寂しいでござるなぁ……」


大半の参加者たちが居なくなってしまい、目の前の3名は嘆いていた。

無理も無いだろう。あれだけ沢山居た人たちが一気に居なくなってしまい、寂しいことこの上ない状態になってしまったのだから。

ルゥリはアリカに訊ねた。


「こういう事って、度々あるのでしょうか?」


「聞いてみるわ」


アリカは三人に訊ねた。


「あのさ、今回みたいな事って何回も起きてんの?」


「ん? 君は……?」


「あ、彼女は今回のコース参加者の一人でござる。今回の騒ぎが起こっても、帰らないで居てくれているでござるよ」


「あたしらも事の次第によっちゃ帰るわよ。ゲームの中でまで面倒ごとに巻き込まれたくないんだから」


無論、帰るつもりは今の所は無い。

アリカの言っている事はハッタリだ。


「……これを部外者に話してもよいものか」


「ま、帰るにせよ残ってもらうにせよ、事情は話すべきだと思うでござるよ」


そう言うとダパルケットは事情を話し始めた。


「最近、度々こういう攻撃を受けてるって事?」


彼から聞くところによると―――最近このギルドはさっきのような外部からの侵入者にによる襲撃を度々受けているとの事だった。

その度に撃退は出来ているが、最近は手の込んだ攻撃を受ける事が増えてきたのだという。


「ござる。我ら、自分で言うのもナンでござるが、有名なギルドというものはその本部には貴重品が保管されていることも多く、盗人や強盗が押し入ってくることもそう珍しいことではないので候」


「しかししかし……最近は手の込んだ込んだ攻撃が増えてきている。今回今回のようなハッキングを用いた複、複数を一人で狙うような攻撃が」


「恐らくはディオンズの手のものに違いないだろうな」


どうやら”ディオンズ”という組織から

今回のような攻撃を受けているようだ。

アリカは彼らにその事について聞いてみた。


「その”ディオンズ”って何なの?」


「……それは……」


三人へ訊ねるも、誰もそれについては答えようとしなかった。

どうやら、余程込み入った事情があるらしい。

答えを待っているとダパルケットが言った。


「悪いが、貴殿らにはこれ以上は話せないでござるよ。こちらの内情に深く関わっている故……」


「そう。ま、ダメならいいわ」


自分で調べるから、とアリカは内心で呟く。

どうしようか、と考えているとルゥリが彼女に小さな声で訊ねた。


(それで……あの、これからどうしましょう? 体験入隊って終わりなのでしょうか)


「ん? 何か……?」


代わりにアリカが答える。


「いえ、友達がさ、体験入隊って終わりなのかなって。あたし達、実力不足をゲームしてて感じたから、ちょっとここで鍛えてもらいたいなぁ~、って思って来たんだけど……」


「ああ、これ以上は流石に―――」


と、軍服姿のプレイヤーが言おうとすると、ダパルケットともう一人が慌てて口を塞いだ。

そして彼を連れ、離れてから話し始めた。


「ま、待つでござる魏蘭。ここで帰られては……」


「ダパル。こんな状態で体験入隊イベントなど続けても仕方あるまいよ。事故が起こってしまった以上、無理に続けても意味が無いだろう」


「しかししかししかし、女の女の子が、こうやって来ることなんてなんて、珍しい。この機を逃す逃すのは、勿体勿体無い」


「そうでござる! 女子がここへやってくるなど……どれだけ貴重な事か。しかも連れのボーイフレンドなども居ない様子」


蜘蛛を模したマスクを被った魔法使いも、帰らないで欲しいと言う。

仕方なしに軍服姿の男は言った。


「わかった。続行するか。だが―――ダパル」


「む? なんでござるか」


「彼女らにディオンズの件は……」


「それは……わかっているでござるよ」


ダパルケットが頷くと、軍服姿のプレイヤーは「そうか」と一言だけ答え、納得したようだった。


「では……ギルド体験入隊コースのイベントを続行するでござる」


「続けてくれるの?」


「ござる。しかし、事故が起こってしまったので、当初とはプログラムを大幅に変更するでござる。お二人には、これから自由にギルド内を動いてもらって構わないでござるよ」


「えっ? ホント!?」


アリカが嬉しげに言うと、ダパルケットは軽く咳をして言う。


「行く先々でメンバーに色々と指導をしてもらう形にするでござる。無論、セキュリティの関係で拙者が案内役として付き従うでござるが……」


監視役としてダパルケットも同席する、という条件付のようだ。

しかし、それを差し引いても自由に動いて問題ない、というのは非常に好都合だ。

これでギルド内を調査できれば、かなり楽にアギレイ・ウーの情報が集められる事だろう。


「ちょっと待て。お前が案内役だと? ふざけるな! こんなおいしい役回りを独り占めとは!」


「いやいや、拙者がもともとは担当であった故……」


「俺、俺、俺がその役やりたいやりたい」


ダパルケットが案内を続けようとすると、二人が彼を引きとめた。

アリカが二人について訊ねる。


「あの……そっちの二人はあんたの同僚か何かなの?」


「ぬ? 彼らの紹介が遅れたでござるな」


ダパルケットが二人に手を向けていった。

まずは軍服姿のプレイヤーが前に出て名乗った。


頑零寺魏蘭がんれいじ ぎらんだ。魏蘭でいい」


魏蘭と名乗った彼は、軍服に制帽を着ていて、一目見ると細身の軍人という感じだ。

しかし肩には白や黄色などの原色が目立つ鎧の一部を身に着けていて、オタク度が高い格好になってしまっている。

腰には刀が差されているので、恐らく剣士のように戦うのだろう。


「変な鎧……だけど、それって無い方がいいんじゃないの?」


アリカが訊ねると、彼の静かそうな表情が一変した。

眉間に皺が寄り、怒っているような顔つきになり、怒鳴る。


「失敬なッ!! これは栄えある鋼人機ダンガムのプロトタイプを模したとても偉大なる……」


「ぎ、魏蘭、そこまででござる。力説しても、知らない人には伝わらないでござるよ」


どうやら何かアニメか漫画のロボットを模した装備を身に付けているようだ。

どうも、かなりの誇りをもっているらしい。


(め、めんどくさ~~~……)


アリカはオタクの面倒臭さを垣間見たような気がした。

次に前へと出たのは、蜘蛛のような

昆虫めいたマスクを付けている魔法使いだ。


「おれ、おれは、~~~だ。よろしくよろしく」


「んん? なんて言ったの?」


アリカは彼が名乗ったのが聞き取れなかった。

外国語の名前のような感じだったが、基本的に外国語も翻訳されているので聞き取れない、ということはありえない筈だが……。

再度訊ねようとすると、ダパルケットが言う。


「えー、彼の名は”ディップヂュルヂュ・ディズプ”と言うでござる」


「え、な、何その名前……変じゃない?」


「彼は”キシュアス”という旧支配者を崇める信徒の一人なのでござるよ」


「そうだそうだ。おれはアス様の手下手下であり、その完全完全なる手足を目指す一人なの、だ」


アリカはまだよく意味がわからず、首を傾げた。

すると、これだけではわからないと察したのか、ダパルケットが言った。


「えー……多分よくわからないと思うでござるから補足すると、彼は”クトゥルフ系魔法使い”というヤツなのでござる」


「クトルフ系魔法使い……って? 普通のとは違うの? ってかクトルフって何?」


「……”クトルフ”ではなく”クトゥルフ”でござる。クトゥルフというのは……クトゥルフ神話という架空の神話体系の、もっとも代表的な神の名でござるよ」


「神様なの?」


「左様。クトゥルフ神話というのは……細かく話すと長くなるので割愛するものの、様々な小説や創作のネタとして使われていて、有名な創作作品ジャンルのひとつなのでござる。そして登場する様々な神……その多くは邪悪かつ異形の存在が多いのでござるが、それをテーマとしてキャラを作成する人々もいるのでござる」


「だからそんなマスク付けてるって事?」


「そうでござる。そのマスクは”キシュアス”という、比較的最近登場した新しい神性で、蜘蛛の顔にムカデとゲジゲジに似た触腕がヒゲのようにあり、胴体には今まで喰らった生物が浮かび上がる存在として描かれている神でござる。ディズプどのはいたくそれを気に入っているので、その熱心な信徒……という設定でキャラを作っているのでござるよ」


「名前もじゃあ……」


「彼が設定している本当の名前は、特殊な発音なので翻訳ができないのでござる。登録されている最も近い名前が、”ディズプ”というわけなのでござるよ」


二人の紹介を終えるとダパルケットら3人で話し合いが持たれ、結局、この3名を加えた5人でギルドの案内をすることとなった。

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