45:”無法”の体現者(7)
荒金靖樹ことラクォーツは、悪人街の元締めである「ゲダム」というプレイヤーを探して
”悪人街”と呼ばれる場所へやってきた。そしてある日、悪人街へと”都市整理計画”の名目で 賞金稼ぎたちから総攻撃が掛けられてくる。同時にゲダム本人からメールが送られ、
そこにはこの攻撃を防げば、会ってくれるとの内容が記されていた。
ラクは依頼を完遂する道を選ぶが、最強クラスの賞金稼ぎである
「ファイブ・スターズ」を初めとした強敵が次々に現れ、戦いは苦境に立たされていく。
ラクは盗賊ギルド達の守る中華街をひとまず防衛し、打開の手を仲間に伝える―――
(文字数:14724)
PK系ギルドの領地である横浜の「商業地区」において。
悪人街と賞金稼ぎ側の戦闘は、かれこそ始まって4時間ほどが経ち、現実世界での出勤時間のピークを迎え始めた事から、一つの区切りを迎えようとしていた。
「うぅぉぉうるァァッ!!」
「うわっ!!」
ガンテスが斧による薙ぎ払いで、10人近くのプレイヤーを弾き飛ばす。
持ち前のパワーを活かした豪快な攻撃である。
だが、その攻撃を行った直後、相手の様子が変化し始めた。
「ん? なんだ……?」
攻撃を行っていたプレイヤー達が、”何か”に一瞬ざわついたと思うと、次々に領域の外へと出て行くのである。
「退いていく……どうしたんだァ?」
「どうやら……一旦退却するようであるな」ヤジマが言う。
ガンテスは次々に退却していくプレイヤー達を見て、険しい顔つきをしたまま黙っている。
彼の動きが止まったのを不自然に思い、ヤジマは訊ねた。
「ガンテス。追撃しないのであるか?」
「やりてぇ所だが……余力がねぇ」
ガンテスは、振り返って悪人街のプレイヤー達を一通り見回す。
近接タイプのクラスは、鎧などが壊れ、持っている武器もかなり疲労を起こしている。
魔法タイプのクラスは、身体に傷を負っている者は倒れこんでおり、そうでないものも攻撃し続けたからなのか、膝を着いている。
魔法を連発した為に、精神的な疲労感が圧し掛かっているようだ。
皆―――かなり傷を負っているのが一目でわかった。
ガンテスやヤジマらはレベルがある程度高い為、そこまで疲弊していないが、他の者たちはかなり弱っていた。
これではとても追いかけて敵の背を攻撃などはできない。
「ひとまず、一休みって所か……」
「次は持ち堪えられるか、わからぬな。これでは……」
「しかし、なんで退却していきやがったんだ?」
ガンテスが呟くと、近場で戦っていた戦士系クラスらしいプレイヤーが言う。
「今……丁度、出勤時間だからじゃ?」
「出勤時間?」
「ファシテイト時間で今13時なんで……リアルだと8時ぐらいだから、あっち側に参戦してた社会人の奴らとか、学生のガキ共とかがファシテイトから出て行かなくちゃいけないでしょ? だからそれで、なんじゃないスか?」
悪人街側の人間は、この戦闘に学校だとか会社の出勤だとかを休むなどして参加して来ている。だが、賞金稼ぎ側とそれに参加している一般プレイヤー達は、そうではない。
ちゃんと普段の生活を優先する者も多かった為、そこまで必死になってまで戦う必要が無い……と、離脱するものが出始めたのだった。
「なるほど……」
相手が退却すると、ガンテス達も適当に場所を見つけて、腰を下ろした。
戦っている最中は動き回ってばかりだったので、座り込むと共に、ガンテスは久しぶりに大きい安堵の溜息をついた。
だが、そこに慌てた様子のプレイヤーが、一人入ってきた。
「たっ、大変だぁっ―――!!」
「なんだぁ、ボムズ? 一体どうした?」
”ボムズ”と呼ばれたヒゲ面の男の慌てぶりが異様な為、ガンテスが訊ねる。
するとボムズは震える声で言った。
「隊長!! ぼっ、ボスが居ないんです!! どこを探しても!」
「……なにィッ!?」
ボムズの言葉を聞いて、ガンテスも同じように驚きの声を上げた。
普段の彼からは考えられないような、間の抜けた感じの声だ。
「どうもさっきの戦闘の最中に、別の場所に移動しちゃったみたいで……」
「どうしますか?」
レッドフリーク・ギルド員から報告を受け、ガンテスの顔が苦々しく歪んだ。
ヤジマがギルド員の話を聞いて、彼に訊ねる。
「追い掛けるのであるか?」
「~~~面倒だが仕方ねぇな。あん人がやられたら”こと”だ」
ガンテスは疲れた身体を立ち上がらせると、周囲に豪快そうな声で言った。
「……おい! 何人か俺について来い! ボスを探す!」
ガンテスが周囲に声をかけると、数人がそれに応えた。
ガンテスは彼らを連れて、レッドフリークの本陣を出て行く。
「ヤジマ! お前はここを守っててくれ!」
「了解である」
ガンテスはそう言うと、本陣から完全に姿を消した。
ヤジマは攻撃役の重大な人間が二人も抜けてしまった為、防衛に徹する事にした。それが―――とても重大な”間違い”であった事など、誰も知る由はなかった。
「ヤジマさん、これから……どうしますか?」
「兎角……防御を固める。ガンテス達の報告があるまで、様子を一旦見るとしよう」
「了解しました」
ヤジマが、同じギルドの部下にこれからの方針を伝えると、彼も立ち上がり、レッドフリークの陣営から離れていった。
今、賞金稼ぎ側からの攻撃は中断されているのだが、今の内にやっておかなければならない事がある為だ。
「さて……防衛するとして、こちらを攻撃している陣営は、どんな人間がリーダーをしているのであるか……?」
ヤジマが自ら”斥候”の為に出て行くのに、余り他の人間は注意を払わなかった。
彼が慎重な人間であり、重大な間違いを起こす人間である筈など無いと知っていたからだった。
━━━━………・・・・………━━━━………・・・・………━━━━
「こっちの情報が漏れてる? どういうこった?」
盗賊ギルドの本陣にて。
賞金稼ぎたちの攻撃を防ぎ切った後、ラクはサイモンとシーラに、自分の考えを伝えていた。
今まで自分が遭遇してきた様々な事柄を総合し、考えた結果―――現在の悪人街の中に、しかも”掃除屋の誰か”というかなり限定された所に”裏切っている人間”が、かなり高い確率で居るのでは? と。
「……」
「おみィ~はよぉ、ちょっと頭がおかしいんじゃねーのか?」
「えっ?」
シーラはそれを伝えられると、神妙な感じになって考え込み始めたが、サイモンの方はそれをデタラメだと最初から決めて掛かっているようで、ラクの言う事を全く信用しようとしなかった。
「この状況で、裏切る奴がいるわけねーじゃねぇか。第一、ここがぶっ壊されたら、その”裏切ってる奴”はどこに行くんだっての」
「いや、しかし……色々と考えたら、やっぱりそれが自然な感じがするんですよ。普通なら有り得ないんです。仮に、こちらの事を知り尽くしてる人間があっちにいるとしても、ここまでガッチリと”ハマ”った配置を決めるのは、流石に無理があります」
「しかしよう、裏切り者なんて考えられんねェぜ? 普通のギルドならともかく、掃除屋ってのは、そんな簡単に入れる所じゃ……」
「第一、おかしいんですよ」
「あン?」
「考えてみてください。これだけ―――他に”手駒”があるってのに、いきなり”中心の人間が出てくる”。そんな状況って、有り得ますか?」
「んッ……いや、そりゃあ……」
「もし俺が……賞金稼ぎ側なら、今回は捨て駒にできる”外部”の人間が大量に居るんだから、まずそいつらを適当に突っ込ませて”どれぐらい被害が出たか”でどう動くかを決めますよ。普通はそんな感じで、”本命”の攻撃って後でやるでしょう?」
「う~む。確かにま、言われてみりゃあそうではあるんだがよォ……でも裏切りなんてなぁ……」
「いや、確かに可能性としてはあるね。その線」
サイモンがまごついていると、考えが纏まったのか、シエラが言った。
「ええっ? あっ、姐さんまで……」
「あたしも変だと思ってたんだよ。戦闘が始まってすぐに、どことも連絡が付かなくなったからね。そういう”裏切り”があったとして、それが攻撃と連動してたってなると辻褄は合う。一斉に相性の悪い組み合わせをぶつけられたんなら、そりゃ通信なんてしてる暇ないはずさ」
「え? あら単純に邪魔が入るとまずいから通信を切ってるんじゃ?」
「いや……今も繋がらないんだよ」
サイモンが言うと、シエラは目の前に電想ウィンドウを開いて通信をコールして見せた。
だが画面にはノイズが掛かるばかりで、声も戦況の映像も出てこなかった。
「実は、戦闘が終わってからすぐに何度もコールしてるんだ。でも、誰も出る気配が無い」
「……”一斉攻撃”を掛けられたって事なんでしょうか?」ラクが神妙な顔つきになって言う。
「その可能性は高いね。ハンター側の奴らは公共機関の人間とかが多いから、規律自体はこっちのクズ共とは比較にならないぐらい取れてるだろうし」
「じゃあ……もしかすると、いくつか拠点が落とされたかもしれませんね」
「んな馬鹿な。こんな短時間でやられるかよ。悪人街の奴らは、結構な手練っつーか、曲者の集まりだぜ? 遊びで賞金稼ぎやってる腑抜け共に、早々やられるもんかっての」
「まぁ、その辺は……K.Kさんが教えてくれるはずです」
「アイツに会ったのかい?」
「はい。ちょっと前に。あっちでもファイブスターズの一人と戦いましたので」
悪態をついていたサイモンだったが、ラクがその事を告げると驚きの声を上げた。
「何!?」
「あっちにもいたのかい?」
「はい。確か……”エド・ハヤト”とか出てました。サイキッカーで、K.Kさんと連携して何とか追い返しましたが……」
「あっちにはアレが出たのか……道理で、外から援護が来なかったわけだ。しかし、よく追い返せたねぇ」
「耐性に穴があって、それが簡単にわかったんで……」
ラクが言うとシーラが感心するように鼻を鳴らした。
「そう言えばあの……ファイブ・スターズって、あとはどんな人が居るんですか?」
「え、おみぃ知らないのかよ? 戦闘始まってるっつうのによ」
「いえ、有名なプレイヤーはそこそこ知ってはいるんですけど、”ファイブ・スターズ”は聞いた事が無かったんで……」
ラクが訊ねると、シーラが言う。
「サイモン、説明してやんな。エクスと……さっきのギャロットにハヤトのことも見てるなら、あとは”アイドルマスター”と”マッドサイエンティスト”の事だろ」
「あ……アイドルマスター?」
「わかりやした。あーっと……話すのはいいんだが、ちょっと手ぇ、治させてくれ。この状態じゃヤバイことこの上ない」
「あ、はい」
サイモンがシーラの言葉を引き受けると彼はまず、地面になにやら魔方陣のような者を描き始めた。
白いチョークのようなもので幾何学的な円陣の紋様を描き、それの中心部にある白い牛のような意匠の部分に右手の先にある赤色の欠損部分を当てた。
すると、陣が桃色に輝きはじめ、泡のようなものが傷口にまとわり始めた。
どうやら、欠損部分を治す「施療」の魔術式を書き込んで使ったようだ。
「ふぅ~……さて、それじゃ奴らのことについてちょっと話しておいてやるか」
「お願いします」
通常の部位ダメージならば回復魔法・能力で治療ができるが”欠損”まで深くなったダメージは、すぐには回復させることが出来ない。
欠損を”再生”させるには、こういった特殊かつ時間のかかる魔術や能力が必要となる。
「ファイブ・スターズ……ここでは”FS”って呼ぶが、奴らにはそれぞれ通り名がある。まず、それは知ってるか?」
「通り名……? いえ全然」
「まず”法の体現者”、”鉄壁”、”見えざる戦士”の三つ。で、後の二つが”アイドルマスター”と”マッドサイエンティスト”だ。前三つがそれぞれエクスクモ、ギャロット、ハヤトを指してる」
「……もしかして、最初の三人は”前衛”って事ですか?」
「ん? 察しがいいじゃねぇか。その通りだ。FSは強力な5人のプレイヤーの事を指してるんだが、あいつらは丁度、その5人で他のギルドと同じく役割が分かれてる。今言った三人は基本前衛で、たまに中堅でガード役もやる、って奴らだ」
「じゃあ……後の二人が後衛って事ですか」
「そーだ。両方とも魔法使い系の奴らしいが、片方が”吟遊詩人”メインで、もう片方が”調薬師”のクラスらしい。後の方はよく知らねぇんだが、吟遊詩人の方は超有名だから知ってる奴は多いぜ」
「誰なんです?」
「……”プリミア”って言ったら、わかるか?」
「プリミア? ……なんか……聞いた事、あるような」
「ホレ、これだ」
サイモンが手をかざすといくつかのウィンドウが開いて、ニュース画面らしいものが出てきた。
芸能ニュースを扱う画面らしく、そこには最近起きたゴシップ記事やら、スポーツ誌の表紙を飾りそうなネタやらが踊っている。
サイモンは、その中の一つを雑誌でも持つように手に取ってラクに渡した。
「”超人気アイドル『エネラルタート』の今に迫る!!”……? これがどうかしたんですか?」
「その中央のがそうだ。”プリミア・ルルラル・ミリャスティック”」
「えッ……!? ちょっ、まさか……この中央の人がメンバーなんですか!?」
ファシテイト内にて、活動している芸能グループというのは結構な数が存在する。
元々、ゲーム内での音楽活動や、タレント活動はやりやすかった事もあって、この中での活動を主体にする人間も出てきたほどである。
そして、テレビなどの媒体とも連携・取り込みが進んだ中、今までにない異様な人気を獲得するグループも現れた。
”エネラルタート”は、その中でもトップクラスの人気を誇る少女アイドルグループである。
5人の少女からなり、その歌声とダンスは他の追随を許さない実力を持つ。
ファシテイト内にて開かれる音楽フェスティバルなどでは、フィナーレを飾る事も多い超実力派グループだ。
「う、嘘でしょう……!? 吟遊詩人ってのはわかりますけど、アイドルがメンバーって……」
画面の中央には、アイドル達の写真が載っていた。
皆、キラキラ光り輝くような笑顔で写っており、まさに”トップアイドル”と言う感じが、ひどく当てはまる構図である。
中央には、桃色の長い髪をした少女の姿があった。
彼女が”プリミア”らしい。
「いやマジだって。プロフィールにも書いてあるらしいから」
サイモンから言われ、ラクはその画面をまじまじと見ていたが―――やがて、とある事に気づいた。
「……ちょっと待ってください。アイドルって事は……もしかして、この人がヤジマさんの所に行ってるんじゃ……?」
「さっきの”相性”の話がマジなら行ってるだろうな。やっさんエネラルも聞いてたはずだし。ただ……あっちはPKギルド方面だから、サブに誰か入ってる筈だ。多分大丈夫だろ」
「……心配だなぁ」
「心配してもしょうがねぇよ。何かできるってわけでもねぇし。それより次に、マッドの方なんだが……こっちは情報があんま無い。プレイヤーネームが”ナルミ”って言う奴だって事ぐらいだ」
「ナルミ……?」
「なんでも、ゲーム内で使う調薬の特許をいくつも持ってるとかで有名らしいんだが、プレイヤー自体の情報があんまねぇ」
「調薬……なんかそう言えばそっちも名前だけは聞いた事があるような。”ナルミ印の傷薬”とか、そういうのですけど」
ゲーム内には、自分でアイテムを作成するスキルが存在している。
それを使って、既存の消耗アイテムを作るのが一般的であるのだが、ある程度、スキルが上昇してくると、全く新しい性能の道具を作り出す事も出来る。
それは大抵は余り使えないもので終わるものが大半なのだが、中には既存の道具よりコストパフォーマンスなどの面で優れたものもあり、ゲームの開発者達が作ったアイテムよりも一般的に使われているものすらあったりする。
「あとよ、こいつの能力はよくわからねぇが、プリミアとこっちは女らしい。男前衛、女後衛のよくあるパターンだな」
「女の人か……」
余り女性キャラと戦うのはいい気分がしないが、ゲームとなると別である。
ラクは、持っていた薬のビンに書かれている「ナルミ」の名前を見つつ、サイモンから、二人の情報を聞き、頭に叩き込んだ。
■
一通り聞き終えると、サイモンが言った。
「それで、これから……どうするんだ? 仮に裏切り者が居るとしてよう」
「まずは……K.Kさんの報告待ちです。被害の状況と、どこにスターズが配置されてるかを見てからじゃないと。こっちの配置がバレてるなら、無闇に動くのは自殺行為ですから、せめて……相手の配置の傾向ぐらいは見てからじゃないと」
「そういうもんなのか」
「シミュレーションゲームみたいなもんですよ。言い方悪いですけど。手駒の価値と、その使い方を知ってるなら、誰でもある程度は作戦を立てられます」
「手駒ねぇ……」
サイモンと話していると、慌しく動き回る盗賊ギルドの陣営をかき分け、K.Kがラク達の所へとやってきた。
「おっ! Kじゃねぇか」サイモンが声をかける。
K.Kは近くへとやってくるなり、持っていた紙切れをその場に広げて見せた。
そこには地図らしい絵が描かれていた。
どうも横浜の全景が描かれているらしく、様々な注意書きと共に人の絵や、更に細かい注意書きが記載されている。
それをK.Kは何度も指差した。
「これがどうやら”成果”だってらしいな。なになに……」
(しっかし、絵、上手いな……)
彼の絵で描かれている戦況は、かなり詳細な部分まで書かれていた。
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■中央地区(横浜駅~ランドマークタワー手前)
商人ギルド連合その1。最前線の陣営であり、商人ギルドの領地の一つである為、彼らが中心となって取りまとめ、かつ、複数のギルドが集まって防衛線を形成している。
最も激しく攻撃を受けた為、壊滅状態。今はハンター側の勢力圏となった。
ジャグスが配置されていたが、前衛であり戦況が上手く読めていた為に、逃走できた模様。
彼は、現在港地区に避難中のようだ。
■都市区(駅~都市部側)
教会ギルド連盟。マスターはリリル。
もっとも大きな歓楽街を有する横浜電想エリア。
こちらも正面からの攻撃を受け、壊滅状態。ストロング、じゃがいもが配置されていた。
ストロングは逃走に成功したが、じゃがいもは撃破された模様。
ストロングが遺骸を持って逃げるのに成功した為、現在復活処理中。別の陣に居るらしい。
スターズの一人が現れたとの報告アリ。
■港地区(海岸/みなとみらい周辺)
商人ギルド連合その2。マスターはアズール。
魔法タイプのキャラクターをメインにしていた為か、高機動型のクラスに攻められた模様。
アズールの指揮の秀逸さで持ち堪えているが、物量で押されている。
ニクロムが前線に立ち、そのスピードとパワーを活かして相手を効率よく減らしている。
ジャグスがまもなく参戦するようだが、彼らだけではパワー不足。
援護が必要であると思われる。
■公園周辺区(横浜公園付近)
情報屋ギルド管轄。マスターはシーカー。
ヴェネディア、滝沢が配備されている。こちらは事前に攻撃を察知し、防衛プレイヤーのクラスを組み直したらしく、大して被害は受けていない。
しかし斥候部隊が怪しい動きを見せているようで、油断ならない。
■商業地区(関内駅~)
PKギルド衆の領地。最大の組織「レッドフリーク」を中心に最大の守備範囲を持つ。
最も戦闘力が高いプレイヤーばかりが居る為か、現在、一番安定した戦闘を行っている。
ガンテス、ヤジマが配置されており、現在共に生存。
ハンター側はスターズの「プリミア」を中心に据え、接近型のクラスによる物量作戦を行っている模様。
■中華街区(中華街の周辺)
盗賊ギルド達の領域。エド・ハヤト、ギャロット・ビクワークスより攻撃を受ける。
防衛ラインはハヤトによって壊滅させられたものの、中央部を突破したギャロットがしくじった為、またハヤトも不覚によって深手を負い、追撃できなかった為、全壊には至らず。
掃除屋もリタイヤ者は無し。現在は残っている者で復旧が急ピッチで進む。
スターズが二人も投入されたので、決着が付いたものとして扱われている為か、援護が来る気配はない。
しばらく攻撃はされないものと予想される。
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「二つも落とされたのか。だらしねぇなぁ」
「中央地区に都市区が……」
ラクは、報告された戦況が予想外に大きなものであると感じ、狼狽の声を漏らした。
「ま、持った方だね。完全な不意打ちの割りには。さて……どうするかねぇ、かなり形勢が悪くなってきた気がするよ」
「いえ、そこまでではないですよ。確かに大きいのは間違いないですが」
「どうしてさ?」
「元々、個々の能力ではこっちの方が高いはずです。戦い慣れてる人間は多いはずなので。だから単純に、数で押し負けてるから不利なように見えてるだけです。ただ……悪くなってるのは確かです。どこかで天秤を傾けないと」
「”決め手”を打たれる前に……って事か」
(しかし……ちょっと気になるな)
ラクは戦況が描かれているマップを見て、少しだけ違和感を感じた。
どこにも、肝心のファイブ・スターズのリーダーである”エクスクモ”が現れている様子がないのだ。
彼が中心になって攻撃を仕掛けてきているはずなのだから、彼がまずどこかに出てこなければならない筈なのである。
「K.Kさん。あの、エクスクモをどこかで見た報告が上がってなかったですか?」
ラクの問いかけに、K.Kは静かに横に首を振る。
スターズの姿は4人とも確認されているようだが、肝心の彼の姿がどこにも見当たらない。
「アイツだけ居ねぇのか? 妙だな……」
「自分も同感です。こういう対戦だと、率先して前に出てきそうな感じがするんですが……最初に見た時のあの憎悪というか、敵意を見る限りだと」
「今回、絶対にココをぶっ潰したいから、逆に出てきてないのかもね。滅多に無い機会だから……」
「……しかし、どうしますか? 作戦とかは誰が立てます?」
「盗賊ギルドの奴らはンんなんやった事ねぇぞ。殆どよ。盗む作戦は立てても、他んトコとの連携とか軍事作戦とかはよう」
「あたしがやる……って言いたい所だけど、ここ以外もどうこうするってなると一人じゃ辛いねぇ」
シーラが他のギルド員達に向かって言う。
「おい! 誰か、指揮を執れる奴はいるかい!」
だが、その声に誰も前に出る者は居なかった。
忙しく聞こえないフリをする者、無理だと言って首を振るものしか居ない。
「なんだ! 誰もやれないのかい!」
誰もやりたがらないのも、当然だった。
大規模な組織同士の衝突なのだから、指揮を執って間違いでもあれば後々、大変な責任問題になるのは間違いない。
その光景を、見かねたラクが言った。
「一応……ちょっとだけなら執れますが」
「なら、アンタも指揮に参加しな。何か考えがあるから、こうして色々と披露してるんだろう?」
「はぁ。それはそのつもりです。ただ……外部の人間がやっていいんですか? 俺、ギルド員じゃないのに」
「無いよりはあるほうがマシさ。気にしないでいい。アタシが許可する」
「何か考え、あんのかよ?」
「あります。やる事は単純なんですが、規模が規模なので……どうなるかはわかりません。スターズの位置が全員判明しない内に、正直作戦は立てたくないですけど」
「聞かせてもらえるかい?」
「こっちの配置が漏れてると仮定して……だと、逆に言えば相手の配置もわかるって事ですからそれを単純に逆手にとって突けばいいんです」
「はん?、どういう事だ?」
「ジャンケンみたいなモンなんですよ。壁役には削り役、魔法タイプにはトリックタイプ。アタッカー役には逆に特殊系で攻める、みたいな、戦闘にはそういう相性みたいなものがあって、相手はそれを熟知してきてるので、逆手に取って配置を逆にやり返すだけです。相手が有利だと思ってぶつけてきてる奴らに、こっちのキャラを逆に有利なものにして迎え撃つ、という」
「なんだ、要するに配置を”逆換え”するだけかよ」
「ですが、縄張りの問題とかがありますし、それに……」
「……”裏切り者”が誰かって事だね?」
「そこなんです。こっちで作戦を立てても、内容が漏れると意味が無いので……」
「う~ん、確かにねぇ……」
「そもそも、掃除屋には居ないんじゃねぇか?」
「いえ、それは無いです。確実に……掃除屋の誰かです。何処かに所属してるなら、その組織の情報しか流せませんが、掃除屋は各エリアの情報を後から把握できるので、いくつかのエリアの配置を見て回れるんですよ。今は―――逃げ出す人間とか別エリアに離れる人間が居ると、すぐに誰かにわかるはずなんで、どこかに所属してるプレイヤーには、別エリアの事を知るのは難しいんです」
「う~む……」
「仮に居るとして……怪しそうなのは、ニクロムとストロングあたりかねぇ?」
「う~ん……どうでしょうか。そこそこスピードが無いといけませんし、ニクロムさんはともかく、ストロングさんはどうか……」
「どっちも違うってのか?」
「わかりません。ただ、上手く言えないんですが……”単独での強さを備えてる人間”が裏切っている気がします」
「”単独での強さ”?なんでさ?」
「なんとなく、です。裏切る人間って他の人間に協力を求めないイメージがあるので……」
「まぁ疑っててもしかたねぇよ。何も材料がねーんだし。犯人探しは時間の無駄なだけだぜ」
「……では、こういう手で行きますか」
話が纏まり始めると、ラクはシエラたちに”とある作戦”を提案した。
そしてシエラから了承を得ると、それを実際に実行に移していった。
”ギルドごと”に領地を守るのではなく”街全体”を一つの組織とみなしての大規模な”配置換え作戦”の始まりだった。
■
(もうちょっとで……PKギルド領地のはずだけど……)
昼を過ぎてから、攻撃の手は緩くなっていたが、その間ラクは動き回っていた。
攻撃が停止した今こそ、配置換えを指示する絶好のタイミングだからである。
この機を逃せば、戦闘中にプレイヤーの配置を変更するのは、ほぼ不可能だ。
無論、この大規模な配置換えは、一人では出来無い為、盗賊ギルドの人間に手伝ってもらっている。シエラに指示を出してもらい、ギルド員達には各地を回ってもらう。
そしてラク自身はこの防衛線において、最も重要なギルドになるだろう「PK系ギルド」が守る商業地区の方へと指示を出しに来ていた。
「……ん?」
相変わらず、荒れ果てた戦場のような光景が広がる中―――ラクはポツンと一人だけ、人が歩いているのを目にした。
「なんだ……?」
「にゃああ……だっりぃなぁ、くそう」
少年は、炎のような赤毛の髪をしており、近代的な服装の上に、僅かだけ鎧を断片的に着ていた。
ヘッドフォンを緩く耳に引っ掛けており、何もかもが中途半端な感じの格好だ。
もしかして持ち場からはぐれただろうか? とラクは彼に近づき、話しかけた。
「大丈夫か?」
「ぬぁん? 誰だテメー?」
近づくと彼は腰へと手をかけて、戦うような構えを見せる。
ラクは、その場に止まって、戦うつもりがない事を言った。
「ちょ、ちょっと待った! 俺は敵じゃない!」
「この辺じゃあ見にゃあツラだな。どこん所属だぁ?」
やや間延びした妙なトーンの声で、少年は話しかけてきた。
余り物を深く考えていなさそうな、いかにも気まぐれそうな声である。
「お、俺は掃除屋の”ラクォーツ”。PKギルドの方面にちょっと伝える事があって、ここに来てるんだ」
「ちぃっ……こっち側かよぅ」
(?、目が……)
少年は、ひどく眠たそうな目つきをしていた。
目の下に非常に濃い”隈”があるのである。
実際に眠っていないのか、それともこういうキャラメイクをしているのか、それはわからないが、余り見ない感じである。
少年はラクへと茫然とした感じで訊ねる。
「で、その用ってのはにゃんナンだ? 俺様が伝えて来てやんよ」
「え? いやでも……直接マスターに言わなきゃさ」
「俺様は結構マスターに近いから、直接、行って来てやるってぇ。だから早く言えよ。時間が勿体にゃいだろ」
(……いや、しかしなぁ……)
なんだか、話し方がふにゃふにゃしている。余り、頼りにならない感じだ。
とはいえ―――ラクは時間の節約の為にも、なるべくPKギルドのみに構っている暇はない。
出来るなら、簡単に終えてしまいたいところだった。
(でも……いくらなんでも、見ず知らずのプレイヤーに頼むのはちょっと)
本当は、ガンテスに会って彼に伝言を頼むつもりだったのだが、”マスターに近いから”と言われては、少々断りづらい。
悩んでいると―――”何か”がこちらへとやってくるのが目に入った。
ラクは”その姿”が目に入った瞬間、慌てて少年の手を取り、建物の影へと隠れた。
「おっ、おい何すん……」
「いいから!!」
ラクが隠れると、遠くのビルの合間から人の集団が現れた。
金属であると一目でわかる鈍い色に身を包んだ集団。
鎧を着た「騎士」の集団である。
(やばい……)
ラクは物陰へと隠れて、現れたプレイヤー達を観察した。
「ここら辺りに奴等の陣営がある筈だ。探せ!」
聞こえてくる会話と何かを探している様子から、賞金稼ぎ側の人間であるのが一目で見てわかった。
どいつも、かなり分厚い装備に身を包んでおり、見た目で恐ろしく重装備になっているのがわかる。
「やばいなぁ……強そうだ」
やがて観察を続けていると、相手のリーダーらしい人間のレベルとクラスが表示された。
それを見て、思わずラクは息を呑んだ。
「ウッ……!!」
現れたレベル表示は―――『60』とあった。
かなり強い。サイモンのレベルとほぼ同じである。
つまり、どこかのギルドの幹部以上の実力を持っている人間であるという事だ。
もしかすると、マスターですらあるかもしれない。
クラスや装備次第では、十分に有り得る数値である。
ラクはそれを確認すると、急いで逃げる方向を探して周囲を見回し始めた。
とても、戦えるような相手ではない。
「えーっと……」
「にゃんだよ? ろうしたってんだ?」
ラクの後ろから、先ほどの少年が顔を出して言う。
どこか抜けた感じの声は、切羽詰っている今の状況からは非常に浮いて聞こえた。
ラクは”なんて能天気なんだ”と思いつつ、彼に小声で言った。
(敵だ……逃げるぞ! もうちょっと奥まで行けば、PKギルドの何処かの陣営がある筈だから)
「おぉ? あれ”スターリーナイツ”の奴等じゃん。丁度いいや……あいつ等、ちょっと”ブッ殺して”来るから、それで俺様のレベルの高さ、わかってくりぃや」
「え……? あ! ちょっ!!」
少年は物陰から勢いよく飛び出すと、何も身構えるでもなく歩いていった。
騎士たちの集団へと、全くの無防備な感じで、である。
どう見ても正気の沙汰とは思えなかった。
(お、おい嘘だろ……!? レベル60のがいるんだぞ……!?)
ラクは慌てて止めようとしたが、周囲を警戒していた騎士達の一人が彼を見つけ、仲間を呼び始めていった。そして、次々に周囲に敵が現れていくと、ラクにはもうどうしようもなかった。
出てくるキャラ達は、先程戦ったギャロットには流石に及ばないだろうが、彼の下位互換ぐらいの能力を持っていそうな者がゴロゴロと出てくるのである。
≪魔導騎士 『レイチャル・コンデクト』 -Mage Knight-『Raychall Contect』≫
≪上級騎士 『相賀光章』 -Expert Knight-『Mitsuaki Aiga』≫
≪城砦騎士 『ふらふら』 -Citadel Knight-『FURAFURA』≫
≪王宮騎士長 『アーデン・グライドン』 -Knight-Captain of Royal-『Arden Glydon』≫
(むっ、ムリだ……!!)
ラク一人には勿論ムリなのは明白で、こんな強敵達の相手は、掃除屋の人間総出でも”やっと互角かどうか”かもしれない。
少年にもそれ位はわかっているはずだが、彼はまるで臆する様子を見せなかった。
それどころか、ひどく機嫌が良くなっていっているようで、鼻歌すら歌い始めた。
「ふっ、ふ~ふん~っと」
やがて、懐から彼は武器を取り出して戦闘の準備をしはじめた。
相手は軽く見ても20人近くは居る。
それを前にして、悠々と準備をし始める光景は、何とも奇妙だった。
だが手にした武器を見て、ラクは”違和感”を感じた。
余り見たことの無い武器であったからだ。
(なんだあれ……?)
小さな平たい筒のような物を取り出すと、それの中心部を蝶番のように開き、元の筒状の部分を柄にして持った。
どうも「バタフライ・ナイフ」のようだが―――それにしては平たく、長い。
何処かで見た形状である、とラクは思った。
(……あ、そうだ! あれ、床屋で……)
見覚えがあると思ったら、たまに髪を切りにいった時に、ヒゲや揉み上げを剃っていた道具と同じなのである。
床屋などで見る”剃刀”だ。
やや大型化されたような意匠であるが、形状的には間違いない。
ナイフやショート・ソードなどは見た事があるのだが、余り見ない武器だった。
「なんだなんだこのガキは……?」
「コイツも街の奴等か? 倒しますか」
数人が中央に居た王宮騎士長の「アーデン」へと声をかけた。
やや細身ながらも、すらりとした無駄の無い体躯を持つ騎士だ。
鎧に隠れていて、顔の部分しか見えないが、かなり重い種類の全身鎧を着けている所を見ると、相当なパワーを持っているに違いない。
緑の味を帯びつつも、黒光りする鎧はいかにも強力そうだった。
「……やれ。悪人街の人間には手加減の必要など、無い!」
そう言ってアーデンが剣を向けると、周囲の騎士達が少年の周囲を囲うように陣形を組んでいく。そして、一人が前へと出て攻撃を仕掛けようとすると―――少年が言った。
「いぃよう、遊ぼうぜ」
「……はぁ?」
騎士の一人が、余りにも間の抜けた少年の声に一瞬、気を取られた。
少年はそれを確認すると、満面の笑顔になり、手を振った。
すると―――騎士が変形した。
「―――えっ?」
『ONE END!』
”即死”のシステムメッセージと共に騎士の兜が消えた。
と思うと―――仲間の背後へと、”どさり”と重量感のあるものが落ちる音。
その後に、数人の小さな悲鳴が聞こえた。
形の変わった騎士を、周囲に居た者が確認すると、彼の頭が消えていることに気づいた。
今の一瞬で、”首が刎ねられた”のだった。
「なッ……!!」
周囲に緊張が走った時、もう勝負は決まっていた。
少年が騎士の集団へと突っ込むと同時に、剃刀が幾度も高速で振られた。
転瞬―――騎士達の上半身が二つに割れる影になり、システムメッセージが何度も鳴り響いた。
”即死”、”即死”、”致命打”、”即死”……と。
少年が剃刀で鋼鉄の戦闘員達を薙ぎ払うと、まるで彼らが紙で出来たかのように、鎧は裂け、身体はマシュマロか何かのように両断されていった。
(はっ……!? な……ッ!?)
ラクはその姿を見て、思わず見入ってしまっていた。
余りにも―――”圧倒的過ぎた”からであった。
やがて、立ちはだかっていた敵を全てデータの破片に変えてしまった後、少年は最後に残っていたアーデンの前へと立った。
「きっ、貴様……一体……!?」
「おいおいぃ、俺様の名前、しらねーでここまで来たのかぁ? おまいはそれでもハンターかよぅ?」
そこまで言うと”何か”に気づいたのか、アーデンの顔から見る見る血の気が引いていくのが見えた。
今までの精悍さを称えた青年の表情ではなく、恐れが心の内から滲んでいる恐怖に塗れた顔へと、表情が変化していく。
アーデンは、胸の内から漏らすように言った。
「さっ……さ、匂坂か……!? まさか……!?」
「おうよ、俺様が”それ”なんよ」
そう言って少年は、天真爛漫に応えると、最後のプレイヤーの首を刎ねた。
まるで、大根でも刈り取るかのように、あっさりと首は宙を舞い
即死判定がなされた騎士の身体は、あっという間にバラバラの光片となって消えた。
「お~い、出てきていいぞう」
少年がラクの方へと向き直って言う。
ラクは内心、彼から逃げ出したくなっていたが、今更逃げられる気もせず、すごすごと物陰から身を出した。
するとそこに、聞き覚えのある声が響いてきた。
「ボス! ここに居たんですか!!」
遠くからやって来ていたのは、斧を腰に付けた筋骨隆々の男だ。
掃除屋の”ガンテス”の姿だった。
ラクはその姿を見て心の底から安心したが―――彼の”言葉”に気づくと、思わず反芻した。
「え? ぼ……”ボス”?」
ラクが”正体判明”の効果音が鳴った事に気づき、少年の方を振り向くと、名前とクラス名の表示が出てきていた。
名前の表示などを隠す”プライバシー・ガード”を一瞬だけ切ったのか、それとも単純に”正体識別処理”がなされたのか。
それはわからなかったが、ひとつだけわかる事があった。
「さぁて……それじゃあ、用件聞こうかぁ。俺様に用があるんだろぅ?」
そう言って”匂坂”と呼ばれた少年は、はにかんだ。
普通はこういう時には”無邪気”と表現するべきなのだろうが―――その笑みからは、とても”邪悪”な感じがした。
≪虐殺者 『匂坂寧』 -Genocider-『Nei Sakisaka』≫




