第2話:和宮ちゃん、かわゆい
厠に入ると急に目の前にスクリーンが現れた。
これがMODの操作画面かな。
「ひかりちゃんの認証をしま〜す」
伊乃莉ちゃんの声がした。
なになに?
認証?
そんなの知らないよ。
「質問その一。私の好きなお菓子は?」
なーんだ。
そーいう質問ね。
「はい、プリンです」
「正解です!」
「では第二問。私の最推しは?」
「山崎烝〜!」
「ピンポンピンポンピンポーン! ひかりちゃんと認定。移動場所を選定してね」
これは誰にも認証突破できませぬな。
さすがMADないのりちゃん。
って、なんでソロプレイのVRゲームにそんな認証がいるのかは不明だね。
さて。
初のお出かけは⋯⋯、江戸城の外はまだ怖いので場内にしよう。
「江戸城内の、和宮ちゃんのすぐ後ろー!」
びゅーん。
眼の前の映像がぶれて、一瞬にして厠ではないところに飛ばされた。
じょぽん。
飛んだ先は足元がやわだったせいか、尻もちついてしまった。
そしてこのVR、触感も正確に再現するのである。
冷たっ。
どうやら私は池ぽちゃしたらしい。
そういえば、いのりちゃんが
「ちょーっとばっかし座標指定が甘いんだよねー。ちょっとだから大丈夫」
と、ニコニコ笑顔で言っていた。
まー、いのりちゃんだから、どこか抜けているのは平常運転ですね。
「あれ、上様ではございませぬか?」
なんとなく京都のお公家さんなまりが抜けない少女の声。
振り向くとそこには家茂さんの奥さん、和宮ちゃんが心配そうな顔をしてこちらに近づいてくる。
《いやー、ちょっと失敗しちゃったよ》
「少々、しくじったようじゃ」
「まあ⋯⋯、いかがなされました?」
和ちゃんってば、お召し物が濡れるのも構わず、わたしん所へ近づくために、池に足を入れる。
《あー、和ちゃん。濡れるからだめだよー》
「和宮、そこへ入るでない。衣が濡れるぞ」
「たれか、上様に代えのお召し物を」
一応、和ちゃんのところには飛べた。
これは成功と言って良いかも?
◇◇◇◇
「お渡りのお触れがありませぬ故、なにもお構いできませぬが」
そういいつつも、和菓子セットやら、緑茶を出してくれる甲斐甲斐しさよ。
黒髪少女人形のようなお方が、皇女の和宮ちゃん。
登場人物紹介だけしか知らないけど、家茂くんと相当仲がよく、焼けちゃうくらいのおしどり夫婦だって。
これだけ性格の良い美少女なら納得です。
《今回はね。外へ行くときお土産何がほしいか聞きたかったんだ》
「此度は外出の折、そなたに何を土産とすればよいか、尋ねに参ったのじゃ」
「上様は、いずこへお出ましになるのでございますか?」
《まだ決めてないよー。和ちゃんが欲しいものを取ってこようかなと》
「行き先はまだ定めておらぬ。そなたの望むものを求めて参ろうと思うてな」
「まあ、お心遣い、感謝いたします」
《で、なにがいい? 好きな食べ物とかある?》
「して、何がよい? 好みの食べ物などはあるか?」
「お戯れを」
《戯れでもいいからさ。言ってみて》
「戯れでも構わぬ。遠慮なく申してみよ」
「それでは……甘いものを。できましたら、わらわがまだ口にしたことのない菓子など……」
《よし。お菓子ね。承りましたー》
「うむ、菓子じゃな。しかと承った」
おっと、時間切れだよ。
ワープ時間も決まっているとか、制限ありすぎだよ。
◇◇◇◇
厠のドアを開けると、そこには御小姓さんたちの青ざめた顔があった。
「上様。お腹をお下しになされましたか?」
「半刻もおこもりになられるとは。すぐ御殿医を⋯⋯」
そこまで言ってから、二人の顔がさらに青ざめたよ。
今度は顎が外れそうなほどびっくりした表情。
「上様。いつの間にお着替えをなされましたか」
うん。まあ、そうくるよね。
仕方ない時の言い訳。
《気にしないでね》
「案ずるには及ばぬ」
将軍っぽい服の方は和ちゃんにしまっておいてもらったから、あとで向こうで着替えるのにつかおっと。




