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マンドレイクなソロプレイヤーは目立ちたい  作者: つなまぐろ


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3/15

AWOの容量が大きい理由

 コボルトが消えると、その場に牙のようなものがドロップした。近くで見るとボロボロで、少し黄ばんでいる。


「【鑑定】」


『コボルトの牙』(Common)

品質:F-

コボルトから入手できる鋭い牙。強度は高くないものの加工がしやすく、武器や装飾の素材として利用される。


 うん、やっぱりコボルトの牙だ。コモンってことはいちばん低いレアリティなんだろう。コボルトを倒しても所持金は増えていないから、倒した魔物からドロップしたアイテムを売ることでお金を稼ぐシステムなんだろうね。

 

 素材に品質があるんだとしたら、武器とかに加工する時に影響がある感じなのかな。売値にも関係する感じなら慎重に倒すようにしないと。このコボルトの牙の品質が悪いのは、棍棒で顔をメッタメタにしたからだろうな。


 ……あれ、どうやって持ち歩けばいいんだろう。ポケットくらいしかアイテムをしまえる場所がないんだけど。この牙だけならいいけど、他にもアイテムを拾うとしたら全然足りない。

 

 インベントリはあるはずだけど、しまい方が分からない。その後もインベントリがあると仮定していろいろと試してみるけど、何の反応もない。やっぱりこのまま持って歩くしかないのかな。そんなことを考えながらため息をつき、腰に手を当てる。


 (ん?)


 すると、服の一部ではないであろう何かが手に触れたような気がした。ローブを少しずらして腰を見ると、ベルトにいろんなものが取り付けられていた。

 ポーチ、ポーションケース、ナイフホルダー。ん、ポーチ?絶対これじゃん。全然気づかなかった。

 ポーチを開けると、入れ口にモヤモヤとした膜のようなものが張られている。試しにコボルトの牙の先っぽで触れてみると、そのままポーチの中に吸い込まれるようにして消えていった。


「おおー!」


 よし、インベントリで確認しよう。って思ったけど、インベントリの開き方も知らないんだってば。分からないことが多すぎるよ。

 ステータスみたく声に出して言えば開いてくれたりするかな?声に出して言うとMPが減るから、念じただけでも開いてくれたりしないかな?


 (インベントリ)


 試しに念じてみると、目の前に新たなウィンドウが出現した。ウィンドウの左側には現在の装備が表示されていて、そこから右は全てアイテムを入れる場所になっている。たくさんっていうか50個くらいアイテムが入りそうだけど、インベントリってこんなに広いもの?だんだん広くなっていくみたいに思ってたけど。まあいっか。開いてくれてよかった。


 インベントリが念じただけで開いたから試しにステータスと念じてみると、インベントリに重なってウィンドウが出現した。いちいちステータスやインベントリを見るたびに声を出すのはMPを消費しちゃうから、これは嬉しいね。

 この辺りはチュートリアルで教わる感じなのかな?


 試しに開いたステータスを閉じ、インベントリからもコボルトの牙の詳細を確認する。


『コボルトの牙』(Common)

品質:F-

コボルトから入手できる鋭い牙。強度は高くないものの加工がしやすく、武器や装飾の素材として利用される。


インベントリからアイテムの詳細を見ても、鑑定と同じことしか書かれていないのね。だったらMPが少ない最初のうちは、少し手間だけどインベントリに入れてから情報を確認した方がいいね。


 さて、初めての戦闘もしたことだし、そろそろ街に行こう。視界の左端に映っているマップを見ると、私がいるところ以外は灰色になっていてここがどこか分からない。とりあえず、北へ向かうことにした。ただの勘だ。

 歩き始めると、灰色だったマップの一部が更新されていく。私が歩いた場所を記録していくみたい。


 ……しばらく歩いてみたけれど先ほどから同じような木々が続いてて、だんだんと飽きてきた。コボルトでもなんでも出てこないかな。

 そんなことを考えながら歩いていると、通り過ぎようとした木の根元にアイテムらしき花が生えているのに気づいた。花を根元から引きちぎってポーチにしまい、インベントリから詳細を確認する。


『ピュリア草』(Common)

品質:D-

ファストリア周辺に群生する淡青色の花。麻痺に対する薬効を持ち、麻痺回復ポーション(初級)の材料になっている。


 薬草みたいなものなのかな?とりあえずこれ以外にも、近くにあったものを全て摘んでみる。

 まずはいくつかあるピュリア草を見てみると、レアリティは全てコモンだった。ただ、品質がE、D-、Dランクのものがあって、Eランクのピュリア草の横には×5と表示されている。同じ品質のものはまとまって表示されるらしい。

 そう思っていたけれど、Eランクのピュリア草の欄をタッチするとさらにウィンドウが出てきて、5本それぞれのピュリア草の状態を見れるようになっていた。もしかするとレアリティや品質が同じでもそれぞれに判定があって、全く同じアイテムっていうのはないのかもしれない。

 

 他にも周りにあった目につくものを全部ポーチに入れてみる。入らなかったら入らなかったでアイテムじゃないんだろう。

 たくさん生えている草に、適当な石ころ……ん?土は───


 …………。


 ……いや、全部入ったが?そこらの雑草とか土まで入ったが?


 再びインベントリを開いて、入るわけないと思っていたアイテムを見てみる。


『土』(Common)

品質:E-

ファストリア周辺の地表に広がる土。植物が根を張るのに適しており、農業や建築など幅広く利用される。


『ノラ草』(Common)

品質:F+

ファストリア周辺に自生している雑草。非常に高い繁殖力を持ち、環境への適応力にも優れている。


『欠けた石』(Common)

品質:F

ファストリア周辺にある欠けた石。


 このゲームイカれてるよ!

 なんでそこら辺の土やら雑草、果ては欠けた石まで詳細があるのさっ!?


 もしかしなくても、このゲームの中にあるもの全部アイテム扱いなんじゃない?インストールする時に容量多すぎだと思ったけど、それなら納得いくよ。だっておかしいもん。


 ふぅ、気を取り直してファストリアに行こう。変なところに時間かけちゃったから、他のプレイヤーよりだいぶ遅れている気がする。私はインベントリを閉じ、マップを確認してから歩き始めた。



 ◇◇◇


 

 北へ進むこと30分、何度かコボルトと遭遇したけれど、【魔根の悲鳴《マンドレイク・スクリーム》】を使うことで危なげなく倒すことができた。

 しかし、アイテムを落とした魔物もいれば、落とさない魔物もいた。ドロップアイテムがないとお金を稼げないのに、これは一体どういうことか。いやー、渋かったね。


 そしてしばらく歩いていくと木々の間隔が広くなり、草原に出る。空は晴天、吹き抜ける風が気持ちいい。

 けれど、少し心配なことがある。見渡す限り障害物がなく、あちこちに犬や羊のような魔物が見える。そして、街のようなものは一切見当たらない。


 一番近くにいる犬……いや、狼の魔物に気づかれない位置から鑑定をかけてみる。


──────────────────

グリーンハウンド Lv:5

HP:82/82

MP:2/2

スキル:なし

──────────────────


 あーあ。

 草原のいたるところにいる魔物、グリーンハウンド。他にもいろんな個体を鑑定してみたけど、Lv5以上の魔物しか見当たらない。そうなると、嫌な可能性に辿り着く。

 普通、始まりの街から離れるにつれてLvが上がっていくはずだ。でも森にいたコボルトはもっとLvが低かった。つまり、逆走してたかも……。


 そんなことを考えていると、


───ザシュッ!

 

 少し離れたところから、何かを切ったような音が聞こえてきた。気になって近づいていくと、4人組のパーティが複数体のグリーンハウンドと戦っている。第一村人発見だね。

 これが終わったらこの人たちに街の場所を教えてもらおうかな。


 私は少し離れたところから戦闘の様子を眺める。

 彼らの動きを見ていると、他のゲームでも一緒にやっていたんだと分かるくらいには連携が取れている。盾使いがグリーンハウンドを弾いて、そこに剣士が突っ込んでいく。一撃を当てた剣士はバックステップで離脱し、その直後、魔法使いの放った魔法がグリーンハウンドの顔面に命中した。

 彼らはそれを繰り返すように戦い、敵が複数いるにも関わらず多対一の状況を作り出して堅実に狩っていた。


 しばらく待っているとグリーンハウンドの波が途切れたため、彼らに確認を取りに行く。後ろにいる出番のなかった神官ちゃんは私に気づいてそうだったけど、攻撃されないよう念のため距離をとって話しかけよう。


「あのーすいません!ちょっといいですかー?」


 あれ、みんなこっちを見たと思ったら酷い顔している。なんでだろう。


「ファストリアってどっちですかね?」

「あ、あっちの方っす……」


 剣士の男が、指を震わせながら私が来た方向を指差した。顔が青ざめていて、よほど疲れているんだろう。

 

「あー、反対に進んじゃってました。ありがとうございまーす!」


 あんまり関わりたくなさそうな雰囲気だったから、お礼を言ってその場を離れる。なんか歯切れの悪い言い方だったけど、なんでだろう。やっぱり大根が珍しいんだろうな。


 ……待って。普通に話しかけちゃったけど、ダメじゃん。声を出さないようにって、さっきから何度も気をつけているのに。

 今度会う機会があれば謝らないとね。


 そんなこんなで、剣士の言う通りに引き返すこと一時間。木々の隙間から、巨大な石造りの壁が見えてきた。どうやらこの森と隣接しているらしい。壁に沿って歩き、街の入口へと向かう。

 

 しばらくして入口らしき場所を見つけた。場所的には北門になるらしく、二人の門番さんに声をかけられた。


「止まれ」

「身分証を」

 

 身分証なんてものはないけど……どうしよう。始まりの街に入れないパターンとかあるのかな。とりあえず首を横に振って、門番さんに持っていないことを伝える。

 

 すると門番さんは私の全身をジロジロと観察し、頭に生えている葉っぱを見て動きを止めた。私の頭には可愛い葉っぱしかついてないけど、なにか文句ある?


「その服は……異世界人か?」


 異世界人っていうのはプレイヤーのことだろうね。首を縦に振って肯定する。


「ほとんどの異世界人は街の広場にある空間からやってきたが、お前のように街の外から来る者も何人かいた。ただ、身分証がないと街には入れられん。少しばかり付き合ってくれ」

「こちらへどうぞ、異世界人であることの確認と身分証の発行を行います。お時間は取らせません」


 そう言われて、北門の横にある詰所のようなところに案内される。プレイヤーの初期装備が統一されていたおかげで何とかなったけど、無事に通ることはできるのかな?

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