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マンドレイクなソロプレイヤーは目立ちたい  作者: つなまぐろ


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北門の詰所で

 何かが起こるわけでもなく、街に入ることができた。

 門をくぐった先には石造りの建物が並ぶ大通りが続いていて、通りにある屋台からは焼き物のいい匂いが漂ってくる。

 

 詰所では装置に手をかざすことで私が異世界人かどうかを判断し、そのうえで私の魔力を登録したらしい。詳しい説明はなかったけれど、とりあえず身分証をもらうことができた。


 それで街の中を歩き回って情報を集めてたんだけど、やっぱり私は目立つ。NPC、この世界の住民たちはもちろん、プレイヤーからの視線もすごい。まあ、逆の立場なら私も見ていただろうから仕方ない。

 もちろん、私のような亜人のプレイヤーもかなりの数がいた。ミノタウロスだったりオーク、ラミアなんかも、普通に街を歩いている。見た目も醜悪だったり可愛かったりいろいろと。

 ただ、その中でも私のような植物っぽいプレイヤーは見かけなかった。ドライアドとかそこら辺もいると思うけど、街の外だろうし。……というか、ミノタウロスやオークが街でスポーンして私が外なのは少し納得がいかない。


 そんなことを考えながら歩いていると、他にも気になることが出てきた。それは、チュートリアルやクエストといったものがないということ。

 サービスが始まって二時間くらい経った今でも、チュートリアルを受けた人はいなさそうだしクエストを受けたという話も聞かない。

 あるとしても冒険者ギルドの依頼を受けた人がいるくらい。私が会ったパーティーはかなり先行していたんだろうね。

 

 ゲーム内の掲示板を覗いてみても、みんな同じような疑問を書き込んでいる。中には、リアルさを追求したこのゲームにはチュートリアルおじさんなんかいないし、ミッションやクエストなんてものもないんじゃないか、なんて予測が立てられていた。そして───


(ん?)


 小さな脳みそを回転させて思考の海に溺れかけていると、ちょうど近くの屋台から美味しそうな匂いが漂ってきた。

 焼きたてのオーク肉が焼き鳥のように串に刺さって売られている。周りの屋台を見ても、串系の食べ物が多いみたい。

 一本買って食べてみると、あんな見た目からは想像できない美味しさが口の中に広がる。あれ、もしやカロリーゼロで美味しい食べ物をたくさん食べられるんじゃ?


 それから私は、気になった食べ物を見つけるたびに立ち寄りながら街を歩き回った。美味しいものを食べたりゲテモノにチャレンジしてみたり、ついでにプレイヤーの会話を聞いたりしながら歩いていると、あっという間に街を一周していた。

 みんな手探りな状態で大した収穫はなく、私のお腹が満足しただけだった。まだまだ食べられるけどね。


 次は何をしようか考えていると、回収したアイテムのことを思い出した。売却するなら冒険者ギルドとかかな?


 そんなこんなで冒険者ギルドに来てみたものの、ものすごい人で溢れかえっている。ギルド前の通りには大量の仮受付が設置されていて、受付の人たちが忙しそうにプレイヤーたちのギルドカードを作っている。

 サービス開始から既に一万人以上はログインしているはずだから大変だね。ギルドカードを発行しようと思っていたけど、また後で来るほうがよさそうだ。なっがい列ができてるし。


 とはいえ、今はどこもプレイヤーで溢れていて、時間を潰すような場所もない。外にいればいろんな人の視線を集めるわけで、食べ歩きは楽しかったけど精神的に少し疲れた。どうせ見られるなら尊敬と憧れの眼差しがいい。


 そんなわけで、私は休憩も兼ねて北門の詰所に戻ってきていた。とりあえず、最初に対応してくれたおじさんに身振り手振りでこのことを伝える。


「うーむ。何も出してやれんが、それでいいなら構わん」


 おじさんは少し考えたあと、休憩室を指差してそう言った。

 私がここを去る時に、困ったのならいつでも来いって言ってくれたけれど、本当に来るとは思ってなかったんだろうな。

 図々しいかもしれないけど、お言葉に甘えさせていただくよ。

 

 そこからは休憩中の門番さんたちとカードゲームをしたり、お互いの知っていることを話し合ったりして時間を潰していく。話すと言っても、私は門番さんが用意してくれた紙に文字を書いているんだけどね。

 街中で見たり聞いたりするよりも、ここでの会話は知りたい情報を知ることができる。外で情報収集するよりもよっぽど有意義だ。


『地理を教えて欲しいんだけど』

「そうだなー。南に海が広がっていて、そこにでっかい港町があるな。んで、ここファストリアはアルヴェリア王国の中央にあるんだが、そのまわりには二十を超える町や村がある」

「もっと大きくいえば北の山岳国家、西の共和国群、東の帝国って感じだね。ただ、アルヴェリアはでっかい国だからよその国に行くのも一苦労だけどね」


 聞いた情報を紙に簡単に書き留めておく。聞いておいてなんだけど、地図くらい冒険者ギルドに行ったらありそうだと思ったことは口に出さない。

 

『アルヴェリアってそんな大きい国なの?』

「ああ、魔国や聖王国に次ぐ三番目に大きな国だ。あの二カ国はいろんな国家と敵対してるから、実質うちが一番でかい国だな。ガハハッ!!」


 アルヴェリア王国の周りにある国以外にも、まだまだたくさんの国があるってことか。とんでもないね。

 

『ふーん。そんな国の王都で働いている門番さんたちはエリートってことだね』

「そ、そうだね。僕はエリートだ。お嬢ちゃんお菓子食べるかい?」


 ほくそ笑みながら首を縦に振る。言葉遣いの優しい門番さんは棚を開けると、箱からクッキーを取り出して私にくれた。


 サクサクとクッキーを口にしながら、次の質問を考える。

 そうだ。武器を買える場所でも聞いてみようかな。マンドレイクが使いそうな武器があったらいいんだけど。マンドレイク、武器使わないけど。


『とある理由から一人で冒険者として行動する予定なんだけど、おすすめっていうか初心者用の安い武器屋知らない?』


「王都の物価は高いからなー。ほかの町に行ったほうが安く買えるんじゃねぇかな」

「安い武器だったら、ここと西門の間にある鍛冶通りに行くのがいいと思うよ。見習い鍛冶師たちが自分を売り込みに来ていて、正規の店と比べると武器の質は落ちるかもしれないけど十分使えるものが安く買えるからね。癖のある人もいると思うから、変わった武器もあるかもよ?」


 いいこと聞けたね。鍛冶師の見習いだとしても、木の棍棒よりは確実にマシだよ。


「異世界人が来るっていうから、普段よりもたくさん見習いがいるはずだぜ?なんか知らねーけど、お前らはこっちに来たと思ったらまず冒険者ギルドに長い列を作ってやがるからよ、人が少ない時に行きたいんなら今のうちだな」


 たしかに、みんなが冒険者ギルドにいる今のうちに行くのがよさそうだ。ゲームなんだから周りに合わせなくても、自分のペースでやればいいのに。冒険者ギルドなんていつでも登録できるんだからさ。

 

『教えてくれてありがとう。また来るね』

「おう、またな」

「またいらしてください」


 私が詰所を離れる時、紙とペンをそのままくれたし、いい人たちだったね。簡単な地理も分かったし、お得な情報も手に入った。やっぱり現地の人に直接聞くのが一番いいや。次にここへ来る時は門番さん全員分の焼き鳥でも買ってきてあげようかな。

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