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マンドレイクなソロプレイヤーは目立ちたい  作者: つなまぐろ


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2/12

初戦闘

 白い光が収まると、今度は真っ暗闇の中にいた。何も見えないっていうか、視界がなにかに覆われている感じ。全身が何かに押さえつけられていて、身体を動かそうとしてもほとんど身動きが取れない。

 状況が分からないから周りに人がいないか叫んで確認しようとすると、何かが口の中になだれ込んできた。


「んぐっ!?」


 慌てて吐き出し、私は自身の置かれている状況を理解した。

 マンドレイクは土の中にいるのが一般的。つまりそういうことだ。転移した直後から土の中にいるのは予想外だったけど、なかなか斬新で面白い。


 左右に身体をうねらせて、なんとか地上へ這い上がる。顔や全身に付いた土を払いながら周囲を見渡すと、辺り一面が木で覆われていた。


 事前情報だと初期リス地点は王都ファストリアだったはず。そう思ったところでSYS-773の警告を思い出した。進行に支障をきたす可能性があるようなことを言っていたけど、これのことだろう。たしかに、マンドレイクが街中で悲鳴を上げたら大変だもんね。

 

 そこらの地面を手で軽く掘ってみる。掘った土は持つことができるし、土の香りもしっかりとする。今までたくさんのゲームをやってきたけど、ここまで繊細に作られているゲームは見たことも聞いたこともない。


 そうだ、とりあえず自分の状態を見ておこう。

 

「ステータス」


 目の前に半透明のウィンドウが出現する。白い空間で開いた時よりも、いくつか項目が増えていた。

 

──────────────────

<未設定>

名前:だいこんっ!!

種族:マンドレイク

職業:見習い魔法使い

Lv:1/20

SP:10


HP:50/50

MP:24/30


STR:6

VIT:5

AGI:10

INT:15

DEX:8

MND:15

LUK:3


固有スキル

魔根の悲鳴マンドレイク・スクリーム

 

スキル

なし


取得可能スキル一覧

【剣術】【短剣術】【槍術】【斧術】【盾術】【格闘術】【弓術】【水魔法】【風魔法】【土魔法】【生活魔法】【自然回復】【鑑定】


装備

右:木の棍棒

左:(木の棍棒)

頭:なし

胴:見習い魔法使いのローブ

腰:見習い魔法使いのズボン

脚:見習い魔法使いのブーツ

アクセサリー:なし


所持金

10000G

──────────────────


 一番上の未設定になってるやつはなんだろう。

 タッチしてみると、称号一覧というウィンドウが現れた。ここから称号をセットできるらしいけど、いつ獲得したのか心当たりがないんだよね。

 

<異界からの転移者>

効果:なし

条件:AWOの世界に降り立つ。

異なる世界より訪れ、この世界に降り立った者に与えられる称号。

あなたはこの世界に降り立った。この記念すべき日に祝福を。


 あー、記念称号ってやつか。条件を見た感じ、全員が獲得できる称号なんだろうな。効果もないなら、わざわざセットしなくてもいいかな。


 次は固有スキルを見てみよう。

 【魔根の悲鳴マンドレイク・スクリーム】をタッチすると、スキルの詳細が見れるようになっていた。


魔根の悲鳴マンドレイク・スクリーム

Lv:1(使用者のレベルに伴い上昇)

CT:0-0

マンドレイクが引き抜かれた際に放つ悲鳴のこと。この声を聞いた者に恐怖(1)、混乱(1)、鈍足(1)を付与し、使用者のMPを3消費する。以降、声が続いている間は1秒ごとに使用者のMPを3消費し、状態異常を重ねることができる。この方法でしか状態異常を重ねることはできない。


 一度に三つの状態異常を付与できるのは強いと思う。MPが気になるところだけどレベルが上がれば増えるだろうし、そのうち気にならなくなるはず。

 さらにはCT、クールタイムとチャージタイムがなくて使い勝手がいい。まあ、声自体にスキルの効果が乗っているから、CTがあったらおかしいんだろうけど。


 ただ、これならMPが24に減少していることにも納得がいく。ステータスと言った時に【魔根の悲鳴マンドレイク・スクリーム】が発動したんだろう。あとは土の中で思わず声を出した時。あれ、悲鳴じゃなくてもMPが減ってない?これじゃあ他の人と話せないんじゃ……。

 まあ、いいか。無口でミステリアスな大根ってことで。


 気を取り直してステータスの下へ目をやると、スキルの下に装備と所持金の欄が追加されていた。 装備をタッチすると、詳細を確認できるみたいだ。


『木の棍棒』

耐久値:∞/∞

何の変哲もない木製の棍棒。装備するとSTR+1。


『見習い魔法使いのローブ』

耐久値:∞/∞

見習いの魔法使いが身につけるローブ。装備するとVIT+1、MND+1。


『見習い魔法使いのズボン』

耐久値:∞/∞

見習いの魔法使いが身につけるズボン。装備するとVIT+2。


『見習い魔法使いのブーツ』

耐久値:∞/∞

見習いの魔法使いが身につけるブーツ。装備するとVIT+1、AGI+1。


 ステータスを見て初めて、背中に木の棍棒を背負っていることに気がついた。棍棒っていうか、クリスマスに食べるチキンみたいな大きさだ。

 何の変哲もない木の棍棒の耐久値が∞なわけだけど、意外と壊れない装備って使う場面があると思うんだ。


 ひと通り確認を終えると、近くの茂みがガサガサと音を立てて揺れた。音のした方を向いて、棍棒片手に警戒する。

 しばらくすると、茂みから一体の魔物が姿を現した。灰色の毛で二足歩行の犬。見た目からして、コボルトかそこらだろう。私の肩ぐらいまでの大きさしかないけれど、獣が立っているってだけで迫力がある。

 

 コボルトは私を見つけると、口元を歪めながら突っ込んできた。私はそれを冷静に見極め反撃───


「怖っ!!」


 横へ転がるように体を倒し、突撃を躱す。コボルトはそのまま私の横を通り過ぎ、数メートル先で止まった。

 攻撃に合わせてカウンターを決めようとしたけれど、怖くて足が動かなかった。


 ……。


 やられたところでリスポーンするだけなのに、情けない。しかもコボルトごときにビビっちゃうなんて!

 そう思いコボルトの方を見ると、なぜか動きが止まっていた。後ろ姿だから表情は分からないけど、身体が小刻みに震えている。

 

 コボルトの今の状態を確認したい。

 そう思った私は、SPを5使って【鑑定】を取得する。欲しいスキル筆頭だったし、あったら絶対に便利なスキルだから躊躇はない。


「【鑑定】」


 あ、MPが1減った。

 

──────────────────

コボルト Lv:3 

HP:60/60

MP:5/5

スキル:なし

状態:恐怖(1)混乱(1)鈍足(1)

──────────────────


 思った通り、コボルトは状態異常になっていた。

 突進を避けた時につい叫んでしまったけど、そこで状態異常が付与されたんだと思う。1スタックしかないから、【魔根の悲鳴マンドレイク・スクリーム】は相手に聞こえることが条件と考えてよさそうだ。

 動きを阻害するスキルだとしたら死ぬわけじゃないし、今度プレイヤーのいる場所で効果範囲や人数に制限があるかを確認しよう。


 硬直していたコボルトが動き出したのは、私が叫んでから約10秒後。コボルトが私の方を振り返るのと同時に、大声でスキルを発動する。


「うーごーくーなー!!」


 すると再びコボルトの動きが止まった。焦点が定まっていないし、戦闘中にも関わらず無防備だ。そんなコボルトに近づき、脳天に棍棒を振り下ろす。


「ふんっ!!」


 ゴシャッと音がしてコボルトはその場に崩れ落ちる。しかし、さすがに一発では倒せなかった。その後、棍棒で5、6回ほど叩きつけたところで、コボルトはポリゴンになって消えていく。無駄に声を出したからMPがゴリゴリと削れてしまった。声を出さないのって難しいね。

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