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マンドレイクなソロプレイヤーは目立ちたい  作者: つなまぐろ


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キャラクリエイト

 8月1日、午前10時。

 フルダイブ型VRMMO、Another World ONLINE───通称AWOの正式サービスが開始される。正式サービス開始前にもかかわらず、このゲームは異常なほどの注目を集めていた。

 

 理由は単純。

 従来のフルダイブ型VRMMOとは一線を画したものだからだ。


 AWOの公式が公開したベータテストのプレイ映像。

 そこに映っていたのは、現実と見間違えてしまいそうなほど精巧な世界だった。異常なほど美しいグラフィックに違和感なく動くキャラクター、衣服の擦れる音までが完璧に再現されている。

 『異世界で冒険しよう!』という宣伝文句が、大袈裟には聞こえない。

 

 私は無意識のうちに、正式サービス開始に先駆けた第一陣の参加者募集に応募していた。第一陣としてゲームをプレイできるのは三万人。応募総数は三十万を超えていたそうだ。

 だから、当選メールを見た時は目を疑った。特に運がいいわけでもなかったけれど、大学三年の夏の時点で就活を終えた私へのご褒美だったのかもしれない。


 そして今日は、待ちに待った正式サービス開始日だ。

 現在時刻は9時55分。オムツを装備してベッドに転がった私は、AWOがインストールされたヘルメットを装着する。メニュー画面にあるAWOを選択し、カチカチと決定ボタンを連打。正式サービスはまだ始まっていないという説明が出るけど、それを無視して何度も繰り返す。

 

 サービス開始時刻よりも早く始まるものがあり、何度苦渋を飲んだことか……。早くログインしたからといって特典があるわけでもないけれど、プレイヤーIDで他のプレイヤーにマウントを取りたいんだよね。

 

 そんなこんなで連打を続けていると、画面に大きくAWOのタイトルが現れた。ついに始まると思ったのもつかの間、十数秒ほどのスキップできない映像が流れていく。

 初回起動だから仕方がないと思いつつ映像を見終えると、視界が白く染まり意識が遠のいていく。

 期待と興奮を胸に、私はAWOの世界へ飛び込んだ。



 ◇◇◇



 気がつくと、私は真っ白な空間にいた。辺りをキョロキョロと見渡してみるけれど、白い空間が奥に続いているだけだ。それに手足が動かないというか、身体が光る球体のようなものになっている。魂のようなものになっているんだろうね。


 そんなことを考えていると、ふと目の前に白い光が現れた。

 それはすこしずつ広がり、人型に変形していく。やがて光が消えると、そこには執事の格好をした男性が立っていた。


「ようこそ、Another World ONLINEの世界へ」


 黒髪オールバックで、意味のなさそうな小さな眼鏡をかけている。無駄にダンディな声だ。

 

「私、アバター制作のサポートをさせていただくAI、SYS-773と申します。以後、お見知りおきを」

「……あっ、はい」


 執事の格好に合わせて上品そうな返しをしようと思ったけれど、何一つ思いつかなかった。ごきげんようとか言えばよかったのだろうか。


「では、アバターの作成に移りたいと思うのですがよろしいでしょうか?」

「はい」


 私の気など知ってか知らずか、SYS-773は淡々とした表情で進めていく。


「では、アバター生成と唱えてください」

「アバター生成」


 SYS-773から言われた通りに唱えると、目の前に半透明のウィンドウが現れた。同時に、短パンにシャツという格好をした私も出現した。

 160センチの身長に細い身体、申し訳程度の二つの山。現実の私と寸分の狂いもない。

 

 ウィンドウに目をやると、いろいろな種族の名前が書かれている。今は人族が選択されているみたいだけど、試しにエルフ族を選択してみる。すると───


 ボフッ!


「うぇっ」


 目の前にあった私の身体から、いきなり煙が吹き出した。反射的に可愛さの欠片もない声が喉から出てくる。

 

 自分の声に絶望している間にも、徐々に煙が晴れていく。そして中から現れたのは、私によく似たエルフだった。というか私だ。

 とんがった長い耳が生えていて、髪色も緑になっている。エルフな私もなかなか悪くない。


「ステータスと唱えてください」

「あ、うん。ステータス」


 美人さが増した自分の姿をもう少しだけ見ていたかったけれど、SYS-773の言う通りにステータスと唱える。すると、目の前に新たなウィンドウが表示された。


──────────────────

名前:未設定

種族:エルフ

職業:未設定

Lv:1

SP:0


HP:100/100

MP:20/20


STR:8

VIT:7

AGI:7

INT:18

DEX:12

MND:13

LUK:6


固有スキル

魔法技能向上(小)

 

スキル

なし


取得可能スキル一覧

【剣術】【短剣術】【槍術】【斧術】【盾術】【格闘術】【弓術】【火魔法】【水魔法】【風魔法】【土魔法】【生活魔法】【自然回復】【鑑定】

──────────────────


「おぉ……」

 

 やっぱりこういうステータス画面はテンションが上がるね。INTが高いってことは、この世界のエルフは魔法が得意な種族らしい。狩猟民族のようなエルフもたまにいるからさ。


「固有スキルはその種族限定のスキルって認識でいい?」

「はい、その認識で間違いありません」

 

 それなら、その種族にしかできないってスキルがいいな。エルフの固有スキルは今後を考えたら強いんだろうけど面白味がないね。普通の魔法職を目指す人はほとんどがエルフを選びそうだ。


「ステータスに記載されている用語の詳細はお聞きになりますか?」

「ううん、だいたい分かるからいい」

「かしこまりました」


 ウィンドウをスクロールしながら、いろいろな種族を選択してステータスを見比べる。ドワーフや獣人、アマゾネスなどなど、定番のような種族ばかり。悪くはないけど決め手に欠けるなー。

 ベータテストの映像を見た感じだと、他にもいろいろな種族がいたと思ったけど……。

 そんなことを考えながら一番下までスクロールすると、ランダムクリエイトという選択肢が出てきた。


「ねえ、このランダムクリエイトっていうのは?」

「はい、そちらは全ての種族の中からランダムで選択されます」


 はい、キタコレ。

 内心ニヤついた私をよそにSYS-773は説明を続ける。


「この世界に存在する全ての種族からランダムな一種族が選ばれ、それが貴方様の種族となります。もちろん、人族やエルフ、ドワーフなどの先に挙げた種族になることもございます」


 ふむ、逆に言えばレアな種族にもなれるってことね。


「ただし、ランダムクリエイトはやり直すことができません。選ばれた種族によっては、この世界での進行に著しく影響を及ぼす可能性がございます」


 迷わずランダムクリエイトを選択した。するとWARNINGという表示が現れ、SYS-773は再度確認を取ってくる。


「本当によろしいですか?」

「うん、早くやって」

「承知しました。それでは、ランダムクリエイトを開始します」


 SYS-773がそう言うと同時に、大量の煙が私の身体を包み込む。別にこれで変な種族になったとして、それが運命なんだって受け入れる。お願いだからありふれた種族にはならないでほしい。


 やがて、少しずつ煙が晴れてくる。だんだんとシルエットが見えてきたけど、明らかにおかしい。


「大根?」


 ようやく煙が晴れ、見えた私の身体は全体的に薄い緑に変色していた。腕や脚にはところどころ根っこのようなものが生えている。

 そして極めつけは頭。半径30センチほどもありそうな大根の葉っぱのようなものが、私の頭から生えていた。

 

 ……可愛い。アホの子みたい。


「ステータス」


──────────────────

名前:未設定

種族:マンドレイク

職業:未設定

Lv:1

SP:0


HP:50/50

MP:30/30


STR:6

VIT:5

AGI:3

INT:12

DEX:8

MND:15

LUK:3


固有スキル

魔根の悲鳴マンドレイク・スクリーム

 

スキル

なし


取得可能スキル一覧

【剣術】【短剣術】【槍術】【斧術】【盾術】【格闘術】【弓術】【水魔法】【風魔法】【土魔法】【生活魔法】【自然回復】【鑑定】

──────────────────


「いかがでしょうか」

「さいこーだよ!かわいいっ!」


 マンドレイクは普段は地面に埋まっているが、引っこ抜くと死や呪いを含んだ悲鳴をあげるというお馴染みの植物だ。

 固有スキルの魔根の悲鳴マンドレイク・スクリームは、おそらくその悲鳴のこと。さすがに声を聞いたら死ぬっていうのはチートだから、デバフ盛り盛りって感じかな?ステータスはエルフより遥かに低いけれど、その分固有スキルが強いんだろうね。


 取得可能スキルに【火魔法】がないのもマンドレイクらしくていいね。


「髪型や肌の色など、可能な範囲での変更ができますよ」

「おー!」


 このキャラメイクの時間が楽しいんですよ……。

 言われるやいなやウィンドウを弄り、好きなように自分の姿を調整していく。とりあえず髪型は今のまま肩ラインボブで、カラーは黒から緑へのグラデーションにしよう。肌の色は少しだけ緑を薄くして、人間味を出そう。目は……黄緑色かな。あ、指先を真っ白にして───


 …………。

 

 そうして目の前に、一人の大根女が誕生した。遠くから見ると大根が動いているように見えるだろう。ちなみに私は魔物のマンドレイクではなく、マンドレイクの亜人って分類らしい。意味がわからない。


「これでよし!次は何すればいい?」

「アバターの設定がよろしければ、ステータス画面から名前とジョブを選択してください。また、STP(ステータスポイント)SP(スキルポイント)を10ずつ配布致します。STPは今ここでお好きなステータスに割り振ってください。SPはスキルの取得に必要となりますが、今スキルを取得することも、後に残しておくことも可能です」


 なるほど、個性を出すために自分で振り分けられるSTPがあるのか。

 AGIが3しかないのは厳しいけど、INTに全部振って火力を上げるのもいい。防御を固めて耐久型デバフ装置になってもいいな。そんな感じでいろいろと考えた結果、最終ステータスはこうなった。


──────────────────

名前:だいこんっ!!

種族:マンドレイク族

職業:見習い魔法使い

Lv:1

SP:10


HP:50/50

MP:30/30


STR:6

VIT:5

AGI:10

INT:15

DEX:8

MND:15

LUK:3


固有スキル

魔根の悲鳴マンドレイク・スクリーム

 

スキル

なし


取得可能スキル一覧

【剣術】【短剣術】【槍術】【斧術】【盾術】【格闘術】【弓術】【水魔法】【風魔法】【土魔法】【生活魔法】【自然回復】【鑑定】

──────────────────


 ほとんどをAGIに振って、動けるマンドレイクにした。さすがにAGIが3しかないのはマップを移動するうえで不便になるし、魔物から逃げられないのは少し困る。それにPvPイベがあった場合、動けないやつは真っ先に狙われて不利になるっていうのもある。あと、走ってスキルを撒き散らしたかったりもする。

 

 職業はステータス的に見習い魔法使いにした。これは後々転職ができるそうだから、あまり考えず選んだ。INTに3%の補正が入るらしいけれど、最初のうちはあってないようなものだしね。

 SPは実際に戦ったりしてから、不足している部分を補うために残しておく。

 名前はだいこんっ!!だ。


「これでOKだよ」

「では最後に。冒険を始める資金として、10,000Gをプレゼントいたします。ぜひご活用ください」


 最後にってことはこれで初期設定は終了かな?早く始めたいと思っていたけれど、キャラクリからこんな夢中になれるなんて思ってなかった。

 

「ありがとね」

「はい、それではだいこんっ!!様を初期リスポーン地点へ転送致します。AWOの世界をお楽しみください」


 SYS-773の声に反応するように私の視界が歪み、不思議な感覚に襲われる。フルダイブ型のゲームに慣れてない人はここでリタイアするんだろうな。そんなことを考えながら身体を包み込む白い光に身を委ね、私はマンドレイクとしての一歩を踏み出した。


 <称号『異界からの転移者』を獲得しました>

ストック書き溜めてから投稿しようと思ったのですが、反応がないとモチベが上がらないので投稿していきます。

しばらくは毎日更新で、11時過ぎを目安としております。

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