叩き大根
その日の夜、私は遊牧民の集落をラムチョップ片手に歩き回っていた。
遊牧民の集落とは何ぞやって感じなんだけど、単純に住み心地が良かったから定住することにしたらしい。そしたらいつの間にか人が集まって、集落にまで発展していたそうな。
ここにいる人たちは周りにグリーンハウンドがいる中で暮らしているということもあって、ほとんどがLv10を超えている。村長さんに至ってはLv30を超えていた。いざ魔物が襲ってきたとしても、自分たちで対処できるように鍛えられているんだろう。
そんなこの集落の名産は、ラム肉とウールだ。
羊型の魔物メェメェを飼育していて、それを上手く売りさばいているそうだ。居住地よりも大きいメェメェの飼育場は集落を囲うように設置されていて、簡易的なバリケードにもなっている。
草原で何頭かのメェメェがグリーンハウンドに追いかけられていたのを見たけれど、もしかしたらここから脱走した個体なのかもしれない。
それにしても、これだけの数を飼育していたとしてそれが産業になるんだろうか。そんな上手いことアイテムがドロップするとは思えない。
そう思ってメェメェを狩る様子を見ていたんだけど、彼らは特殊な武器を使用してメェメェを倒していた。
『鉄のナイフ』
耐久値:81/200
エンチャント:解体
量産型の武器。装備するとSTR+1、DEX+1。
気になって鑑定させてもらうと、こんなふうになっていた。どこにでもある鉄のナイフに、解体のエンチャントが施されている。このナイフで魔物にとどめを刺すと、ポリゴンに変わらず、そのままの姿で残るらしい。
気になって実際に見せてもらった。というか体験させてくれたんだけど、本当にHPが0になった後もその場に残っていた。
これなら欲しい素材を確実に手に入れられる。ドロップアイテムとかいうサイコロの女神に運命を委ねなくて済む。
欠点があるとすれば、解体がエンチャントされた武器で倒した魔物はインベントリにしまえないことくらい。メェメェの肉やウールのように、アイテムに加工しないとインベントリにはしまえない。
これも体験させてもらったけど、ある程度の小ささにしないとアイテムとは認められなかった。逆に言うと、ある程度小さくすれば大体のものはアイテムとして認められた。
解体するのは面倒臭いけど、これがあれば金回りがよくなるし希少な素材を確実に手に入れることができる。
そう思って値段を聞くと、70万ゴールド。まだまだ先の話だった。
そして、そんな話をしているうちにあるものの存在を思い出す。
ギルド横にあった解体所、使い道がよく分からなかったけど、ようやく腑に落ちた。何を解体するんだろうって思ってたけど、この方法で倒した魔物を解体するための場所だったんだ。
なんかスッキリしたし、ここでログアウトしてもいい気分だ。何かやり忘れたことがあるか確認して、なかったら終わりにしよう。
……あ、MPが満タンだ。
MPはできるだけ消費してからログアウトしないともったいない。じゃないとなんだか損した気分になる。もう一度レベリングしに行こう。
そんなことを考えつつ、メェメェの囲いの間を抜けてフィールドへ向かう。いくつかのパーティーとすれ違ったけど、どこもピリピリとした雰囲気を感じる。
掲示板を見る限り、ここは北の最前線の一つ手前。気合いが入るのも分かるよ。私も今ね、モチベ高いんだ。
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<未設定>
名前:だいこんっ!!
種族:マンドレイク
職業:見習い魔法使い
Lv:6/20 +3
SP:10 +9
HP:75/75 +15
MP:55/55 +15
STR:17 +7 (3)
VIT:11 +4
AGI:24 +8(3)
INT:36 +14(4)
DEX:18 +6
MND:31 +10
LUK:16 +8(5)
固有スキル
【魔根の悲鳴】
スキル
【水魔法】【土魔法】【鑑定】
取得可能スキル一覧
【剣術】【短剣術】【槍術】【斧術】【盾術】【格闘術】【弓術】【風魔法】【自然魔法】【生活魔法】【自然回復】
装備
右:鎖分銅
左:(鎖分銅)
頭:なし
胴:影の外套
腰:見習い魔法使いのズボン
脚:見習い魔法使いのブーツ
アクセサリー:毒避けの白布、乱転の指輪
所持金
7G
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今日のうちにこんなにレベルアップできるとは思ってなかったし、この集落まで進めるとも思わなかったんだよね。でも、いい戦い方を見つけちゃったんだ。
フィールドに出た私は、鎖分銅を手に堂々とグリーンハウンドの群れへと近づいていく。昨日とやることは一緒。ただ、持っている武器が違うんだよ。
グリーンハウンドたちが私に気づくと同時に、大きく叫ぶ。
「アァ────♪」
叫ぶというか、レパートリーが欲しいと思った結果、いろんな声で【魔根の悲鳴】を試している。今はオペラっぽく叫んで……?叫んでいる。
ただ高い声で叫ぶよりは、こっちの方が不気味な感じが増していいかもしれない。
それはともかく、周囲にいるグリーンハウンドが状態異常にかかっていく。動きが鈍っていくのを確認した私は、分銅を振り回しながらグリーンハウンドに接近する。そして十分な遠心力がついたところで、分銅を顔面へと叩きつけた。
───ドゴォ!!
グリーンハウンドは顔を陥没させて吹き飛んでいく。いいところに当たったのか、一撃でポリゴンに変わった。
そのまま次のグリーンハウンドに狙いを定め、再び分銅を振り回す。
これを【魔根の悲鳴】の効果が切れるまで繰り返し、切れたら再び叫ぶを繰り返す。
ドゴォ!ベキッ!
鈍足になっているグリーンハウンドだったら当てるのは難しいことじゃないし、だいたいは一撃で倒れてくれる。ただ、何頭倒しても次々と援軍がやってくるから敵がいなくなることはない。
遠距離からチクチク完全勝利?
敵に囲まれていても【魔根の悲鳴】で攻撃を受ける可能性が限りなく減っているんだから、同じようなものだよ。
メキョッ!
また一頭吹き飛んでいく。私は鎖を引き戻し、次のグリーンハウンドへ狙いを定める。
「ラァ〜〜♪」
バキィッ!!ベゴッ!!
また一頭吹き飛び、その身体をポリゴンへ変える。これが俺TUEEEEってやつか……。
《 S-1エリアボス『ジャイアント・ジェリー』が、聞きたくて・海の声がの2名によって発見されました》
あ、昨日ぶりのワールドアナウンスだ。S-1だから、南のエリアボスが見つかったみたい。
二人っていうのはすごいけど、惜しかったねー。システムメッセージくんがもう少し融通を効かせられたらよかったんだけど。
南ってことは海だろうし、名前的にクラゲとかウミウシかな?まあ、しばらくは北を進む予定だから関係ないか。
…………。
はぁ、もう少ししたらやめよっか。今ので集中が切れちゃった。
MPがギリギリになるまでグリーンハウンドを倒して、今日はそれで終わりにしよっか。
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