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マンドレイクなソロプレイヤーは目立ちたい  作者: つなまぐろ


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邪道

 夜の鍛冶通りは、炉から漏れ出る炎の光によって明るく照らされていた。この時間に売り込みをしている人は少なく、鉄を打つ音がただひたすらに響いている。


 昼に行った時は不気味に感じたロウさんの工房がある区画も、夜になれば周りとそう変わらない。ここの変人たちもしっかり鍛冶師なのだ。


「ロウさーん、お金持ってきたよー」


 そんなこんなで、少し通りをブラブラしながらロウさんの工房までやってきた。どうやら作業をしているらしい。工房からは光が漏れていて、金属を叩く音が聞こえてくる。

 少し待っていると、扉の向こうから声が返ってきた。

 

「は、入っていいよ」


 返事が返ってきたため入口の扉を開けると、長い髪を後ろで縛った青年が椅子に腰かけていた。服装と身長的にはロウさんだが、昼に会った時とは似ても似つかない。


「髪……」

「う、うん。後ろで結んでいるんだ……。さっ、作業をしている時は、邪魔だから」


 そう言って、後ろでまとめた髪をぽよぽよさせる。

 別に作業していなくても邪魔じゃない?昼の時みたいに、前髪が目にかかっているのは鬱陶しいって思っちゃうけど。

 まあ、本人がそれでいいならわざわざ言うことでもないか。

 

「武器……欲しい?」

「うん、面白そうなやつがいい」

「お、面白いものかぁ。君に渡すものは決めていたんだけど……」


 あ、もう何をくれるか決めてくれていたんだね。だったら気にしないで。


「と、とりあえず持ってくるよ」

 

 ロウさんは椅子から立ち上がると、工房の奥へ入っていく。当たり前のように床に散らばったガラクタを踏みつけているけれど、大丈夫なのかな?


こんな適当に置いてあるんだったら、捨てていいものだってあるんじゃない?断捨離すればそれなりに綺麗になると思うんだけどなー。


「はい、お待たせ」


 少しして、ロウさんは二つのアイテムを持ってきた。見た目だけなら、それほど変わったものには見えない。


『影の外套』

耐久値:40/40

ロウが作製した防具。シャドウストーカーの皮膜から作られているため、見た目以上に軽い。装備すると【隠密(極小)】を常時発動し、DEX+5。


『鎖分銅』

耐久値:55/55

ロウが作製した武器。鉄から作られているため、かなりの重量がある。装備するとSTR+3、DEX+2

 

「ど、どっちも……耐久値が低いけど、そっ……その分効果が高くなっているよ」


 たしかに、耐久値は低いけれどステータス補正がかなり大きい。防具なのにVITは上がらないけれど【隠密(極小)】がついていることから、攻撃を受けない想定なのかもしれない。

 

「あと、これ……いる?」


 そう言うと、ロウさんは奇妙な光沢を放つ指輪を渡してきた。角度によって、わずかに色が変わっているようにも見える。

 

『乱転の指輪』

耐久値:73/73

ロウが作製したアクセサリー。装備すると【乱転の呪い】が使用可能になる。

 

【乱転の呪い】

CT:3s-24h

自身を含めた半径15m以内にいる生物に、乱転(10)を付与する。


 初めて見る状態異常だ。掲示板にも載っていなかったと思う。

 

「乱転って何?」

「あ、アビリティを……バラバラに入れ替え────」 

「いるっ!」


 思わず食い気味に答えてしまった。

 こういう面白そうな武器が欲しいんだよ。一日に一回しか使えないみたいだけど、相手のビルドによっては形勢逆転できる切り札となるスキル。


 改めてロウさんを見る。

 2メートルを超える身長に只者ではないしゃべり方。状態異常を付与する装備を作れる上に、スキルまでつけることができる。こんな人が見習いっていうのは冗談じゃない?


「これで見習い鍛冶師なの?」

「うーん……か、鍛冶師っていうのは、しっかりした武器を打てるようになって初めて……いっ、いろいろな追加効果をつけたりしていくんだ。で、でも僕は……この区画にいる人たちは、追加効果にこそ……重きを置いているから、かっ、鍛冶師たちの間では邪道って呼ばれてて、見習いから上がれないんだ……」


 ふーん、そんな理由があるんだね。

 掲示板にこの情報を流したら、プレイヤーたちはこぞってロウさんを探し始めると思うけど……。性能が良ければそれでもいいって思っちゃうのは、私たちプレイヤーの感覚なのかな。


 ロウさんから装備を受け取り、インベントリにしまう。ちなみに鎖分銅は五つもらえた。

 

「よ、夜は危ないから……もう帰った方がいいよ。ぼ、僕の武器は壊れやすいから、こまめにここに来ることを……おすすめするよ」

「うん、わかった」


 王都にいるのに夜は危ないとは何ぞや。そう思いながら、工房の外へ出る。

 

「ありがとう、また来るねー」

「う、うん。また……」


 ロウさんは工房の入口まで出てきて、手を振って見送ってくれた。なんだか可愛く思えてきちゃった。昼とのギャップってやつかな。


 私は手を振り返しながら、鍛冶通りを歩いていく。視界の端に映る時刻は、午後九時を回っていた。

 

 ログアウトして、お風呂に……今日いいか。ご飯を食べて掲示板を漁ろう。長時間ログインしていたから脳が疲れているだろうし、今日は早めに寝ることにしよう。


 はい、ログアウトっと。

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