↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
7/42

7.友達ができました

今日から毎日更新します。11:40です。よろしくお願いします。

 教室のある南棟までやってきた私達。

 A組の教室の前で、カイル君がトーマ様に念を押し始めた。


「殿下、うまい話と怪しい話に乗ってはいけませんよ?

 それから、お金の貸し借りをしてはいけません。知らない人についていかないようにしてください。万が一呼び出されることがあったら、俺も行くんで教えてくださいね!?」


 うちの母と同じことを言ってるなぁと思って見ていたら、トーマ様が言った。


「……カイル。僕子どもじゃないんだよね」


「知ってます。でも世間知らずという意味では、子どもと同じです」


「……すっごい傷つくなぁ」


「大丈夫ですよ、カイル君!トーマ様は私がちゃんと見てますから、任せてください!」


 私が胸を張ってそう言うと、彼らはこちらをじっと見て黙り込んだ。


 ……なんですか、その沈黙は。

 何とも言えない表情をする彼らに、私はにこりと笑って見せる。

 するとため息をついてから、カイル君が言った。


「まぁ仕方ない。リラちゃん、殿下をよろしくね。俺もなにかあったらすぐ駆けつけるから」


「はーい」


「リラに頼るくらいなら、たぶん一人でもやっていけるよ」


「遠慮しないでください!トーマ様は、本当の意味でピカピカの一年生ですからね!ほら、教室行きましょう!ついてきてください」


 歩いて案内しようとする私にトーマ様が言った。


「リラ。どこ行くの。教室ここだよ」


 カイル君の「うわー、人選ミス!」と呟きが聞こえてきた。





 どうも信用されていないみたいだったけれど、教室に入るくらいなんでもないのよ!


 私は堂々と教室に入って行った。

 しかし、トーマ様は入口で立ち尽くしてしまった。


 緊張してるのかな?

 きっと不安だよね、と思いつつトーマ様を見ると、彼はワクワクした様子で目を輝かせていた。


「これが教室……!」


 そうか、教室も初めてなんだ。

 初めてづくしの彼に、私もなんだか新鮮な気持ちになる。


「イメージ通りですか?」


「わかんない。けど、なんか人生変わりそうなくらいの衝撃」


「教室が?」


「こんな狭い空間に、たくさんの同世代が集まって、みんながそれぞれ違うこと考えてたり、同じ勉強をするなんて、信じられなくない?」


「……私には当たり前すぎて、全然感覚がわからないです」


「そっか。すごいことだと僕には思えるよ」


 静かに、でも熱を帯びた声でトーマ様は言った。

 青い瞳がキラキラと輝いている。 

 お城しか知らない彼には、本当に衝撃のようだった。


「トーマ様、とりあえず席に座りましょう。なんか指定されてるみたいです」


「わかった」


 私の席は教室の中央、トーマ様の席は窓側の後ろの方だった。




 あたりをぐるりと見回してみると、知り合いとおしゃべりしている子、席について寝ている子、本を読んでいる子、じっと動かない子、様々だった。


 学園生活が初めてではない私も、新しい環境であることに変わりはない。

 トーマ様のように新鮮な気持ちになる。



 オーウェン様の話とかしてる人いないのかなぁ?


 そんなふうにキョロキョロと辺りを見ていると、隣の席に一人の学生がやって来た。


「隣の席だね。私、アイナ・ミラー。よろしくね」


 にこりと微笑んだ彼女は、茶色い髪の毛を肩のあたりでふわりと揺らしながら席に着いた。


「リラ・ファルケです。よろしくお願いします」


「ファルケさん、まっすぐで綺麗な銀髪だね!うらやましいなぁ」


「そうですか?」


「うん。まさに正統派美少女って感じだよ。私は、ほらちょっとくせ毛だから、ストレートヘアに憧れてるの」


 彼女は自分の髪に触れながら笑う。

 とても感じの良い人だ。


「でも、アイナ・ミラーさんの髪の毛も、優し気な雰囲気がとても似合ってると思いますよ」


「ありがとう。アイナでいいよ」


「アイナちゃん。私のこともリラとお呼びください。実を言うとですね、私は黒髪に憧れているんです」


「え、黒髪?どうして?」


 首をかしげるアイナちゃん。

 よくぞ聞いてくれました!!


「それは、私の想い人であるオーウェン様とお揃いだからです」


「……オーウェン様??」


「え!!ご存じありません!?天才魔術師のオーウェン様です!!」


「あ、もしかして、今の魔術師団の団長?オーウェン・ブルー?」


 ポンと手を叩くアイナちゃんに、首がもげるほど頷いた。


「そうです!!」


「あー、そうなんだ!あの人、雰囲気あってカッコいいもんね。

 確か、私達が十歳くらいの時に団長の就任式があったと思うんだけど、それまでの魔術師団長って、カッチリして真面目な印象が強かったじゃない? それとは全然違うイメージで出てきた人だから、すっごく覚えてるの」


 わかってらっしゃる!!!!


 彼女の言葉に、体中がぐわっと熱くなった。

 アドレナリンが大放出中なのが分かる。


「そうなんですよ!!オーウェン様って、規則に縛られるのがあんまり好きじゃないんです!自由人で飄々としていて、でもその実力で周りが放って置かないというか……もう全てにオーラがあってすごいんです!!」


 身を乗り出す私に、アイナちゃんは少し体を引きつつもこう言った。


「私、本物見たことないからわからないんだけど……リラちゃんは、オーウェン団長のファンなのね?」


「いえ、愛です!いつか、結婚したいんです!!」


「……そう。年上が好きなんだ?」


「オーウェン様が好きなんです!」


 きっぱりという私。


「へぇ……。リラちゃんて、見た目と違ってなんていうか……勢いがあるのね」


「よく言われます。私って、そんなに元気なさそうな顔してるんですかねぇ?」


「うーん、そういう意味じゃなくて……気取ってなくていいね」


 彼女が考えながらそう言った時、先生が入ってきたので、この話はここで終わりになった。


 感じの良い人だ。

 なんといっても、オーウェン様の就任式を知っているんだから、これは素敵な仲間を見つけてしまったわね!



 ******************



 窓側の席に座ると、僕は教室をゆっくりと見渡した。

 同じ制服を着て、思い思いの過ごし方をしているクラスメイト達。


 これが学校かぁ。

 同世代ばかりで圧倒されてしまう。

 大人に囲まれていた自分は、おそらく本当に特殊なんだろう。


 ふとリラを見ると、隣にやって来た女生徒と話を始めていた。

 こういう時は何を話すんだろう?参考にしよう。


 そう思って見ていたら、リラが急に興奮気味に話を始めている。

 まさかと思っていると、黒髪がどうとか、魔術師がどう、などと聞こえてくる。


 あぁ……オーウェン話か……。


 初対面の人に、いきなりオーウェンの話をしているリラ。

 参考にはならないけれど、すごくおもしろいな。


 相手が理解ある人でよかった。

 一歩間違えたら、ドン引きされるやつだ。


 リラは学園でも、オーウェン一色なんだな。


 リラを見ながら、しばらく周りを観察していたけれど、ふとあることに気づいた。


 リラの容姿は人目を引くらしい。

 女生徒も彼女をチラチラ見ていたけれど、男子生徒の視線は明らかだった。


 へぇ、なるほど。

 おもしろいなぁ。


 彼女はちょっと変わった面白い子、という認識でいたのでまるで気づかなかった。


 本人もあんな調子なので、全く気付いていないようだけれど。

 うん、絶対気づかないだろうな。

 オーウェンしか見えてないから。


 そんなことを考えていたら、前の方からこんな話が聞こえてきた。


「知ってる?なんかさぁ、今年の1年生にリアディスの王子がいるらしいよ」


 ドキリとして見ると、悪気なく普通に話をしている三人の生徒がいる。


「え、そうなんだ?王子って確かすごい病弱って話じゃなかった?」


「そうそう。小さいころから病弱で、全然表に出てこないよね」


 みんなよく知ってるなぁと感心してしまう。


「どんな人なんだろうね?」


「青い顔してふらっふらの人かな?」


「病弱で甘やかされてるから、とんでもないわがままだったりして」


「えー、やだなぁ」


 なるほど。

 世間のイメージはそれか。


 一応自分では元気だし、甘やかされた記憶もない。

 わがまま……?

 これはちょっと人に聞いてみないとわからないけれど。


 とりあえず、顔を知られていないのはちょうどいい。

 しばらくは普通の学生として生活したいし、このままでいい。


 いずれバレるだろうし、変に隠すつもりもない。

 その時はその時だ。


 そう考えながら一人、教室の椅子に座るのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。