47. 王子講習
トーマ様による「王子講習」の後(トーマ様はだいぶ困ってたけど)、私達A組は、カフェでお客さんとのやり取りを想定した、実戦練習に入ることになった。
「まずは姿勢!お前ら、普段から姿勢が悪い。トーマを見習え。王子であることを忘れるな!」
「はい!」
「指先まで気を抜くな。ロイヤルな微笑みを浮かべてろ」
「はい!」
商業科(というかロイ君)のスパルタ王子特訓を、ノリノリでこなすニセ王子達(男装含む)。
「私は姫になりたい」という女子と「男子生徒は姫が好き」という発言をもとに、ニセ姫君も接客することになった。
どちらにもならない生徒は、食べ物を用意するなどの裏方だ。
裏方の私と、王子監督であるトーマ様は、ロイ君のスパルタ特訓をぼんやり見ていた。
「王子になるって大変なんですね」
「僕も知らなかった。急になれって言われても難しいんだね」
そんな話をしていると、ロイ君が言った。
「いいか、給仕を完璧にしろとは言わない。そんなのは執事カフェに任せておけ。
むしろ、いつも給仕されてる王子であるからこそ、うまくできない。そこがいいんだ。ついお客様が『あ、私のために頑張ってくれてる』って思わせることが大事なんだぞ!」
「はい!」
ロイ君の熱血指導を見ながら、私は頷いた。
「頑張っている人って応援したくなりますからね」
「……リラ、騙されないように気を付けてね」
トーマ様が苦笑しながら言う。
その時、ロイ君が私たちのそばに来た。
「なぁ、トーマ。ちょっとロイヤルな手本を見せてやってくれよ」
「ロイヤルな手本って言われても困るよ。給仕したことないし、侍従科の人に頼んだ方がいいんじゃないかな」
「だから、完璧にやる必要ないんだって。お前なりにやってみてよ。本当の王子はどうやって給仕するか興味あるし、お前が失敗するところも見たい」
ロイ君の言葉に、ニセ王子&姫君が盛り上がる。
「見たい見たい!」
「ほんとに失敗するの?」
「監督の完璧な王子っぷりが見たいなー!」
というわけで、急遽トーマ様が給仕係をすることになった。
お客役はニセ姫君のアイナちゃん。(トーマ様に緊張しない人選らしい)
「……ほんとにやったことないんだけど」
「大丈夫だよ。最悪こぼさなければいいから」
困ったように言うトーマ様に、アイナちゃんがにこりと笑う。
「いいか、このカフェのコンセプトは『姫をもてなす王子』これだ」
「……状況を想像するだけで、なんか胃が痛い」
ロイ君の説明に、珍しくトーマ様がげんなりしている。
しかし、なんだかんだトーマ様の給仕はかなり完璧だった。
席までの案内、メニューを渡す指先、さりげない会話と笑顔から始まり、飲み物の提供までが王子オーラできらきらと輝いていた。
引き込まれるように見ていたクラスメイト達から、拍手がわーっとあがる。
「やべー!マジ王子!」
「すげー!カッコよ!俺も給仕して欲しいー!」
「あたしもー!!」
その後、私もお客役として『俺様系王子』というジャンルの王子の接客を受けることになった。
「よぅ、来てくれたんだな」
「あ、はい」
「さぁこっちだ」
ノリノリの俺様系ニセ王子につられて、私もなんだか楽しくなってくる。
「なに飲む?」
「そうですねぇ。じゃあオレンジジュースをください!」
「悪くないな」
「あ、ついでにこのサンドイッチもお願いします」
「お前、よく食べるんだな」
「そうですか?できれば食後にケーキもつけてもらいたいです」
あぁ、おなかすいてきたな。
ほんとに食べられたらいいのに。
そんなことを思っていたら、王子役の生徒が戸惑った表情をする。
「……ちょっと待って。ごめん。これで合ってる?俺様系ってこういう時なんていうわけ?」
「え、知らないです。そもそも、俺様系とはなんですか?」
「オーウェン様みたいなんじゃないの?」
「え!!オーウェン様って俺様系だったんですか!?」
「なんかこの間、授業来たときにそう感じた」
「えーーーー!じゃあ私、俺様系王子がいいです!それでお願いします!」
一気に大騒ぎになる私達のテーブルに、クラスメイト達が「おぉ、上手くやってる!」と盛り上がる。
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「リラちゃん、やっぱりそっち系だったかぁ」
アイナが納得しながら笑う。
「俺様系王子……」
リラたちを見ながら、ぼんやりと呟くトーマだった。




