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39.デートに護衛は必要ですか?

 色々あったけれど、テスト期間が無事に終了した。


 トーマ様のノートとわかりやすい講義、アイナちゃんの優しい励ましと、ロイ君のスパルタ指導のおかげで、私もカイル君もなんとか平均点を取ることができた。

 持つべきものはやっぱり友達ね!!


 私とカイル君はお互いの健闘を称えあう。


「……リラちゃん、俺ら超がんばったんじゃない?」


「ですよね、これはもうご褒美もらってもいいと思います」


「なんか食べに行く?」


「いえ、オーウェン様に会いに……」


「それ、俺には全然ご褒美じゃないんだよ。とりあえず学食行こう。腹減った」


「アイス食べましょうか」


 解放感と安堵に包まれながら、私はカイル君とのんびり学食へと向かった。



ガラガラの学食で私達は二人、向かい合って座りながらアイスを食べる。


「リラちゃん、殿下ってクラスだとどんな感じ?」


 カイル君は、コーンのバニラアイスを食べながら私にそう聞いた。


「どんなって、あのままのトーマ様ですけど」


「虐められたりしてない?」


「してないですね。みんなから一目置かれてる感じです」


 イチゴのカップアイスを食べながら答える私を見て、カイル君は真剣な表情で頷いた。


「女子に囲まれたり、不審な奴が馴れ馴れしくしたりしてない?」


 トーマ様を思い返してみる。

 馴れ馴れしくされたり、囲まれたり……?


「うーん……全然してないですね!!」


「そっか!困ってないなら良かった」


 安心したようにパッと笑うカイル君に、私はふと思い出したことを伝える。


「カイル君のこと『いつのまにかそばにいるから困る』って言ってました」


「え、俺!?」


「はい。放っておいて欲しいって」


「……はぁ……冷たいよなぁ」


 カイル君はそう言いながら、ぺろりとアイスを一口舐める。


「まぁ、仕方ないか。今だけだもんな、自由にできるの」


 その言葉に思わずカイル君を見る。


「卒業したら色々あるみたいだから。王族の儀式とか仕事とか」


「そうなんですね」


「あと、たぶん結婚相手とかも決めるんじゃないかな。どうやって決まるか知らないけど、大変らしいよ」


「あー、お姫様と二人で歩いてますもんね、お城を。カイル君のがそういうの向いてそうって言ってましたよ」


 私がそう言うと、カイル君は大きな声を上げる。


「俺!? 全然向いてないよ。お姫様なんて、なに話していいかわかんないもん。魔術師団より怖い!」


 残ったアイスを一口でぱくっと食べると、なにかを考えながらそれを飲み下す。

 そして言った。


「今くらいは好きなことしてもらいたいよね」


 ただの護衛騎士という範囲では収まらないくらいには、トーマ様のことを考えているようだった。

 カイル君、トーマ様のこと大好きですもんね!


「トーマ様って『学生生活に憧れてる』ってざっくりとしか聞いてませんけど、特にやりたいことってあるんですかね?」


「どうなんだろう? お城から出て生活する時点で、もうだいぶ顔つきが変わったからなぁ。学生って言ったら逆になに?」


 カイル君に聞かれて、必死に考える。

 学生と言えば??


「えーと……勉強、テスト、補習、行事、遊び、友達……」


「そういえば、アルバイトしてるやついるな」


「あぁそうですね!アルバイト。あとは、やっぱり恋愛じゃないですか? 私は職場恋愛の予定ですけど……恋愛といえば、カイルくんはその後どうですか?彼女できましたか?」


 私が聞くと、カイル君は大きくため息をついた。


「あー、それ聞いちゃう? 残念ながら全然できる気配がしないよ」


「カイル君モテそうなのに。おかしいですねえ? いっつもトーマ様といるからいけないのかなぁ」


「え。俺、殿下と比べられてるってこと? そんなの無理に決まってるじゃん!悲しい……!」


「そういう意味じゃないですよ。っていうか、そもそもカイル君は、好きな人がいるんですか?」


 私の言葉にきょとんとしてから、うーん、と考え込むカイル君。


「好きな人かぁ……。確かにいないなぁ」


 腕組みをして考える時点で間違ってますよ、カイル君!


「それじゃあ彼女なんてできませんよ。私のように、夜も眠れないくらいに好きな人をまず見つけないと!」


「……リラちゃんみたいにならないとダメってこと?」


「はい!」


「……一生無理かもなぁ」


「大丈夫ですよ。ある日突然、恋に落ちるってよく言いますし!」


 恋に落ちるっていい言葉ですよね!と思いながら言うと、カイル君はニヤニヤと言った。


「リラちゃんは、落ちたままずーっと出てこれてないよね」


「私を落とすのも引き上げるのも、オーウェン様だけです!」


 鼻息荒くそう答える私に、カイル君が笑う。


「良いこと言ってるように聞こえるなー」


「早くカイル君を落としてくれる人に出会えるといいですね!」


「そうだね。早く落とされないと、あっというまに卒業になっちゃうもんな。でもさー、俺リラちゃんみたいに恋に落ちたら、護衛騎士失格かもしれないって気づいたんだよね」


「どうしてですか?」


 首をひねる私にカイル君は言った。


「だって、俺が彼女とデートしてる間にトーマ様を護衛するのは誰?って話になるだろ?」


 意外と真面目に考えてますね、カイル君。


「トーマ様も入れて、三人でデートすればいいんじゃないですか?」


「いや、意味わかんないだろ」


 苦笑するカイル君に、私は思い浮かんだ疑問をぶつける。


「逆に言うと、トーマ様のデートにカイル君はついて行くんですか?」


「え。あー……そういえばどうするんだろう?ついて行っていいのかなぁ?」


「うーん……プライバシーもありますよねぇ」


 一緒に首をかしげる私達。


「リラちゃんだったらどう?」


「え、私だったら……オーウェン様とのデートには、誰もついてきてほしくないです!二人きりの時間を邪魔されたくないですもん」


「邪魔はしないよ?ただ遠くからちょっと見てる」


「それも嫌です。見ないでください!!」


「えー、でも見てないと何かあった時に助けられないじゃん」


「オーウェン様が守ってくれるので大丈夫です。あぁ、最高!オーウェン様に守られたいです……!」


 想像するだけでキュンキュンしますね!!


「まぁ確かに、オーウェン様なら護衛なんて必要ないけどさ、殿下だったら助けないとダメでしょ」


「そうですねぇ……。仮に私のデートの相手がトーマ様だったら、私が助けるしかないですよね」


「あ、リラちゃんが助ける側?俺はいらない?」


「うーん……どうなんでしょうねぇ。いっそのこと三人で出かければいいんじゃないですかね」


「オーウェン様以外とは、デートする気ないってことだね」


「大好きな人と出かけることがデートなんですもんね?だったら、私はオーウェン様一択です!」


 そこから私とカイル君は「デート行くならどこがいい?」とか「いきなり手つないだら嫌がられるかな?」とか、そんな恋バナで盛り上がっていった。



 このやりとりを見られているとも知らずに。




 ************




 少し離れた所から、リラとカイルを見ている三人。


「あいつら、要らない心配してるな」


 呆れ口調のロイ。

 そしてトーマが口を尖らせる。


「なんで僕が、リラに助けられないといけないわけ?」


「王子だからじゃね?」


「昨今のプリンセスは強いからね。王子様は守られる側かもしれないよ」


「……」


 無言になってしまったトーマに、アイナが慌てて弁解する。


「あ、ごめんね?トーマ君に当てはめてるわけじゃないよ?」


「……カイルと筋トレした方がいいかな?」


「しないよりはした方がいいと思うけど、やり過ぎない程度でね。トーマ君は細マッチョくらいで……」


 筋トレを語りだそうとするアイナの肩を、ポンとたたきながら「落ち着こうか」とロイが割って入る。


「筋トレはまぁいいんだけどさ、トーマ。お前のデートは、カイルを含む三人で行くらしいぞ。それって王子あるあるなわけ?」


「王子あるある……? 知らないけど、カイルがついてくるのはやだな」


「私も、デートに友達を連れてくる人はやだな」


「貴重な女子の意見だけど、一応あいつ護衛なんだよな」


 こちらもこちらで、恋愛トークになっていくのだった。

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