32.新学期と言えば席替えです
新学期。
始業式を終えた私は、いつものメンバーで学食にいた。
サンドイッチをつまみながら、アイナちゃんが私を見る。
「リラちゃん、なんかフラフラじゃない?大丈夫?」
「……宿題、今朝終わらせました……」
食べる手を止めてロイ君が私に言う。
「今朝!?お前、計画性というものはないわけ?」
「オーウェン様にいかに近づくか、という計画ばかり立てていたので……」
私の言葉に全員がため息をついた。
そんな冷たい反応しなくてもいいのに。
っていうか、カイル君?
なんで『そっち側』にいるんですか?
「カイル君は、宿題ちゃんとやったんですか?」
「なんでピンポイントで俺に聞くの」
苦笑するカイル君。
「私の仲間は、この場にカイル君しかいなそうだからですよ」
「残念だけどリラちゃん。俺は超計画的だったから、宿題は三日前に終わってる」
「え!?裏切りですか!?」
「騎士団の先輩が、俺の宿題計画を立ててくれたんだよね。演習を早めに切り上げる代わりに宿題しろって」
「……お前じゃなくて、先輩が超計画的ってことだろ」
呆れてツッコむロイくんに、カイル君がにかっと笑う。
「まぁそうだけどさ。学生割引的な感じで、演習免除されたから宿題もスムーズに終わったよ。わかんない所は教えてもらえたし」
「えーー!いいなぁ!!私も騎士団に入りたかったです!!」
ぶーぶー言う私に、トーマ様が呆れたように言った。
「無理でしょ、そんな華奢な騎士団員なんていないよ」
「……ダンベル持って歩いていれば、ムキムキになれるかもしれません」
「リラちゃん、うちのお兄ちゃん特殊だから。そして魅せ筋だから……」
「魅せ筋でも、メロン肩になれば騎士団に入れるのでは?」
「メロン肩だけじゃ入れないよ、残念だけど」
カイル君に明るく言われて、私はがっくりする。
私達のやり取りを、黙って見ていたトーマ様が言った。
「ねぇ。さっきからメロンかたってなに?」
「知らなくても大丈夫だよ、トーマ君」
きょとんとするトーマ様に、アイナちゃんが言うのだった。
するとカイル君がパンをかじりながら言った。
「そんなことよりも、俺、今日席替えがあってさー。なんと中央の一番前だよ!先生の真ん前!」
「それはついてませんね!」
カイル君に同情しつつ、新学期と言えば席替えよね!とワクワク思っていたら、トーマ様が首をかしげている。
「席替え?ってなに?」
「いま自分が座っている席から、違う席に変わるんだ」
ロイ君の説明に、トーマ様が声を上げる。
「え!僕ずっとあの場所がいいんだけど?」
「無理ですね。学生というものは席替えをしますから」
「……それはあの漫画になかった……」
トーマ様は顔をしかめてつぶやいた。
たぶん、カイル君から借りた漫画のことだと思う。
「殿下。席替えは大事です。この先の学園生活が、楽しいものになるかどうかが関わってきます!俺は残念ながら、しばらくダメそうです……!」
「……そうなんだ……。でもそれはどうやって決めるの?」
「それは公平にくじ引きです!」
「くじ引き……!!」
ぱぁっと目の輝くトーマ様に、全員が「あぁ、初めてなのね」という顔をする。
そして、翌日。
私達A組も席替えがあった。
くじ引きによる席替えの結果はというと、私は窓側の一番前、そしてトーマ様は私の後ろ、ロイ君が廊下側の後ろ、アイナちゃんはロイ君の斜め前、という微妙にみんな近い場所となった。
「アイナちゃんと離れて心配でしたけど、トーマ様が後ろにいれば安心ですね!」
新しい席に着いた私が、トーマ様にそう言うと、彼は「ん?」と首を傾げた。
「……僕は別に面倒を見るつもりはないよ?」
え、冷たいですね。
「そんなこと言わないでください!今学期は真面目に頑張りたいんです。前回のテスト結果もチクチク母に言われましたし、もう授業中に、手紙も書かないことにしたんです」
「手紙?」
首をかしげるトーマ様。
「はい。オーウェン様への手紙です。あれ、残念ながらお断りされてしまったんですよー。忙しいから読む時間がないんでしょうね!」
「そうなんだ。……いいね、ポジティブで」
「大好きな人に迷惑はかけられませんからね!というわけでトーマ様。もしも授業中に私が寝てたら、起こしてくださいね!」
「授業中に寝ちゃうの?」
「わからなかったり、興味ないと眠くなっちゃうんですよ」
「気持ちはわかるよ」
トーマ様はおだやかに言った。
おぉ、わかってくれるのですね!あの眠気!
「今学期は補習しないように頑張りたいんで、お願いします!起こしてくださいね!」
「わかった。今学期は補習なしを目指そうね」
「目指します!」
そんなこんなで、新学期が幕を開けたのだった。




