3.私、試されてない!
次の日も、オーウェン様に会いに行った私。
薬局から出てきたところを、ギリギリセーフで捕まえると、オーウェン様ははぁっとため息をついた。
そして、私に現実を突きつける。
「俺はさ、年上で背の高い女が好きなんだよ」
え、好きな女性のタイプを初めて教えてくれるんですか!?
メモメモ!!
「それって前の魔術師団長さんのことですか?あのおばあちゃん団長」
「絶対に違うけどなるほど、言われてみればそうだな。あのばあさん、背が高かった。となると、お前よりばあさんのが好みってことだ」
ズバリとそう言うオーウェン様に、私はむっと口を尖らせる。
「……オーウェン様の魂胆はわかります。私と正反対の女の人が好きと言って私をあきらめさせようというおつもりですよね??」
「わかってるなら話が早いけど、俺が背の高い女を好きなのは本当だぞ」
「背はいくらでも伸ばせます」
「成長期じゃあるまいし」
「ふふふ。私はまだ背の伸びる余地がある年代なのですよ??」
甘く見てもらっては困りますね、オーウェン様。
余裕で笑って見せる私に、彼は全く動じずに言った。
「……年下も好みじゃないな」
「試してみれば、いいものかもしれませんよ?」
「全部試したうえでの結論だ」
「!!」
さすがに固まる。
「た、試したって……全部試したって……」
……私、試されてない!!
うつむいて何も言えなくなる私に、オーウェン様が言った。
「当たり前だろ。お前、俺をいくつだと思ってるんだ」
「オーウェン様……素敵すぎます!!経験豊富な男性!大人ですね!!!」
パッと顔を上げる私に、オーウェン様は目を丸くしてから特大のため息をついた。
「……お前、特殊だよな。やっぱりあいつの娘なだけあるわ」
「父は関係ありません!」
「いーや、思いっきり血を引いてると思うぞ」
「……私、親戚から『中身は母』って言われるんです」
「父親は割と被害者なのか……」
被害者ってなんですか?と思っていると、オーウェン様が言った。
「どっちにしたってお前はない。他の奴探せ。もしかしたら俺みたいに、いい男がいるかもしれないぞ。世界のはじっこに」
「世界のはじっこに行けとおっしゃるのですね」
「あぁ、うっとうしいから」
「……ひどいっ!」
顔を覆ってそう言ってみた私。
指の隙間から見てみると、オーウェン様は泣き真似する私を放置して行ってしまった。
本当にひどい。
「……あーあ。ほんと全然相手にしてもらえない」
そりゃそうだ。
私だって本当はわかってる。
私とオーウェン様は二十一歳ほど年が離れている。
さすがに私が子ども過ぎるのだ。
もうすぐ学園に入学するのにな。
いつになったら大人だと認めてもらえるんだろう?
あの頃から私は、だいぶ彼に近づいたと思っているのに……。
初めて会った時からビビビッと来た。
あれは四歳の時だ。
父に連れられて行った薬局に、ふらりとやってきたのがオーウェン様だ。
なんてカッコいい人だろうと一目ぼれしたのだ。
あの時、薬局に勤めていたクレアさんに話しかけているオーウェン様が、また素敵だった。
意地悪っぽさ全開で、彼女をからかうオーウェン様の楽しそうな笑顔がたまらなかった。
当時の幼い私の言葉を借りるならば『私もいじめてほしかった』
……今思えばそこから私の性癖は決まってしまった。
責任をとってほしい。
帰ってから父にそのことを話したら、ものすごーく呆れた顔をされた。
「……もう少し聡明な娘だと思ったんですけどね」という父に対し、母が
「おかしいわねぇ。私、別にそんな趣味ないのに」と返していた。
何を言われようと、私はあの日からオーウェン様一筋だった。
一度ならず、二度も三度も告白を試みた。
そのたびに「無理だね」「絶対ない」「さっさとあきらめろ」と言われ続けている。
子ども相手でも容赦ない。
本当にまっすぐに断られている。
傷つかないわけがない。
さすがの私も振られるたびに一晩中泣いているのだ。
でも、諦められない。
夢も期待も抱かせてくれないのは、冷たさというよりも、彼の優しさだと思えてしまうのだ。
顔が好き。声も好き。中身も好き。魔法の才能が好き。
それ以外に理由なんてない。とにかく諦められないのだ。
たぶんこれはもうどうしようもない。




