【番外編】アイナちゃんの「トーマ君考察」
トーマ君は普通とはちょっと違う。
いつも穏やかで、笑顔を絶やさない。
姿勢もきれいだし、立ち振る舞いも、ちょっとした動作も美しい。
言葉遣いも他の男の子たちとは違う。
ロイ君は「たぶん、相当でかい家の息子だろうなぁ。箱入り息子じゃん」って言ってた。
なんとなくわかる。
ただ、ロイ君はなぜか「マフィアのボスの息子とかじゃね?騎士団員がマークしてるんだから」と危険な方向へ思考を飛ばしたがる。
「どうしてお城所属の騎士団員が、マフィアのボスの子と一緒にいるの?」
「なんかあったら、すぐ捕まえられるように、とかさ」
「……うーん、なんかそれおかしくない?」
「ロマンがあるじゃん。実は敵同士、立場の違う男の友情!みたいな」
「ロマン……」
ロイ君、そういうの好きなんだろうな。
普通に考えてみれば、王立騎士団員であるカイル君がいつも一緒にいるくらいの、すごい名門の家の息子さん、だと思うのだけれど。
もしかしたら、カイル君はトーマ君のボディガードみたいな役割なのかもしれない。
よく知らないけど、騎士団員って個人を護衛するのかな?
王立騎士団といえば、この国一番のエリート集団だよねぇ?
(……そう考えるとカイル君て、実はものすごかったりするのかしら??)
カイル君に聞いてみたら、困ったように笑って「うーん、トーマ様に聞いてみて」だって。
それで、トーマ君に聞いてみた。
「トーマ君て、実家はどこなの?」
「リアディスだよ」
「あ、うん、そうなんだろうけど……騎士団員のカイル君と知り合いってことは、ものすごく大きなおうちなのかなと思って……」
「どうしてカイルと知り合いだとそうなるの?」
トーマ君はきょとんとして私を見る。
「王立騎士団員と知り合いだなんて、普通はないもの」
「……なるほど」
とても納得したような言い方をするトーマ君。
騎士団員の価値というか、彼らが一般人とは遠い所にいるとは、まるで気づかなかったらしい。
……ますます大物感がでてきたわ、トーマ君。
「どうしてカイルと知り合いかって言われても困るけど……まぁ年が近いから、かな?」
「近い?って同い年でしょ?」
「カイルは一つ上だよ」
「え?」
「あれ?言ってなかったっけ?カイルは年齢的には一つ年上。騎士団にいて学園に入れなかったから、僕の護衛を兼ねて学園に入ったらしいよ」
「……知らなかった」
カイル君が一個上という事実にびっくりして、トーマ君のおうち事情はそこで終わりになってしまった。
うまくかわされたのかもしれない。
でも、思った通りカイル君はトーマくんの護衛だということはわかった。
ロイ君、敵同士の友情ロマンはそこになさそうだよ。
なんにしても、トーマ君は何をするにもスマートだった。
私やリラちゃんに対して、必ずドアを開けてくれるし、隣に座るときは椅子を引いてくれる。
さりげなく荷物を持ってくれるし、歩く時も同じ速さで歩いてくれる。
「……リラちゃん、トーマ君てやっぱり普通の男子高校生じゃないと思うの」
「え?そうですか??」
「うん。ここまでレディファーストを徹底する高校生っていないよ、たぶん」
荷物くらいは持ってくれるかもしれないけど。
「あぁなるほど!そういうのがもう染みついてるんじゃないですかね!」
リラちゃんはそう言って笑う。
……リラちゃん、トーマ君と昔から知り合いみたいだけど……。
(そうなるとリラちゃんも名門家の息子さんと知り合いという意味で、すごい人なのかしら??)
「リラちゃん、トーマ君って一体何者なの?おうちは何をしてるの?」
「えーと……そうですねぇ。おうちは……経営者?」
「経営者?大きな会社かなにか?トーマ君がそのうち継ぐってこと?」
「それはもちろん継ぐと思いますよ。トーマ様しか継ぐ人いないと思います」
「そっかぁ。じゃあなんで商業科に入らなかったんだろ?」
「商業科?……うーん、経営って言っても、そこ一点じゃない感じだと思いますよ、やっぱり。アイナちゃん、そんなことよりも今朝の新聞みました!?オーウェン様の記事が載ってたんですよー!!」
リラちゃんのオーウェン様情報により、ここで私の考察は止まってしまった。
なんにせよ、トーマ君はただものではない。
会社の御曹司の可能性があることはわかった。
でも、あのリラちゃんの言い方だと、意外とロイ君の「マフィアのボスの息子説」も捨てられない気はしている。




