20.【トーマ視点】放課後の男子達
昼休み――。
購買で買ったパンを食べ終えると、窓の外をぼんやりと眺める。
「いい天気だなー」
何気なくつぶやいた言葉に、ロイが言った。
「学校終わったらどっか遊びに行く?」
「え」
遊びに行く?
「天気いいしさー。たまには外行こうぜ」
「なにするの?」
そう聞くとロイはうーん、と宙を見つめてしばらく考えながら言った。
「確か今、Bフェスがやってる」
「なにそれ」
「B級グルメフェス。ほら、この時期毎年やってるじゃん。城下のでかい公園でさ」
申し訳ないが聞いたことがない。
B級グルメとはいったいなんだ?
固まる僕に、ロイが言った。
「あ。知らない?」
「うん。ズレてる?」
「全然。じゃあ行こう。放課後までに腹減らしといて」
「……今お昼食べ終わったんだけど」
「それなら余裕じゃん」
そう言って笑うロイに、まぁ確かに、と思いつつリンゴジュースを飲み干した。
放課後になった。
護衛もつけず、誰かと外へ遊びに行くのって初めてだな、とワクワクしながらロイと教室を出た瞬間だった。
「お待ちしてましたよ!」
「……カイル」
満面の笑みを浮かべてそう言った彼に、思いっきり脱力した。
そんな僕に気づく様子もなく、ロイがカイルに声をかける。
「おー、トーマの舎弟じゃん。お前も行く?」
「え、なになに?」
いや、声かけなくていいから。
言おうとした時にはもう遅かった。
「Bフェス!?行く行く!ちょうど腹減ってた!!」
「……来なくていいって」
「えー、なんでですか!俺もB級グルメ食べたいです!!」
「いいじゃん、みんなで行けば」
ロイの言葉に、ため息をついた時だった。
ふっと近づいてきたカイルが耳元で言った。
「学園から出るなら、俺がいないとダメですよ。殿下?」
ニヤリと笑うカイル。
わかってはいるけど、なんだか無性に腹が立ったので、カイルの腹を小突いておいた。
「うっ! トーマ様……不意打ちはさすがに……」
「鍛えてるんでしょ。騎士団員」
「そうですけど!」
腹を押さえるカイルを見て少しスッキリしたので、さっさと歩き出す。
「なに、どした?腹痛いならやめとけば?」
「いや、大丈夫。行く!」
うしろのやりとりを聞きながら、「しかたない。カイルも友達枠だ」と頭を切り替えるのだった。
B級グルメフェス、というのは思った以上に大きなイベントだった。
あちこちに出店がひしめき合い、平日だというのに多くの人でにぎわっていた。
食べ物の匂いや、食材の焼ける音がしてくる。
お店の人の呼び込みの声が飛び交い、お店に並ぶ人々や、ベンチで食べている人など様々だった。
「……全然知らなかったな」
「マジですか?俺、毎年来てます!」
「毎年?」
思わずカイルを睨みつけると、彼は「あ、すいません」と肩をすくめる。
「俺さー、ここ来ると必ず買うものがあるんだ」
そう言ってロイが一つの店を指さした。
「爆弾コロッケ」
「あのでかいやつ!?俺も食ったことある!!」
「うまいよなー!」
爆弾?
首をかしげる僕を、ロイが引っ張って歩き出す。
「とりあえずアレを食いながら、他の店を物色するんだよ。ほら、行くぞ」
「食べながら?」
「食べ歩きですよ!」
「……食べ歩き……!!」
それいいの?と思っていると、カイルが笑う。
「ここではそれがマナーです!」
「!」
衝撃の言葉にロイが「お前、マジでどんな家で育ってきたの?」と逆に衝撃を受けているようだった。
見たことないくらいの大きなコロッケは、「爆弾」というのにふさわしかった。
……紙袋に入っているとはいえ、コロッケを手に持ったのも初めてだし、これをそのまま食べる?
どういうことだ?と見ていると、ロイもカイルも普通に食べている。
「パンだと思ってください」
もぐもぐしながら言うカイルの言葉が、なんとなく腑に落ちた。
「……なるほど」
パン感覚。
新しい教えを信じて、思い切って食べてみる。
ロイとカイルの視線が突き刺さる。
「どう?」
「……美味しい!!」
「だろー?」
楽しそうに笑うロイ。
「これを食べながら、次何食べるか見て回るんだよ」
「俺は麺類がいいなー」
「いや、お前じゃない。トーマに聞いてんの!」
口を尖らせるカイルをよそに、あちこちを見回してみる。
「うーん……あれなに?あの、ご飯の上に何か乗ってるやつ」
「さすがお目が高い!あれ、かつ丼!去年の一位だぞ!」
「かつどん?」
「やばいですよ、いきなりそれいくんだ!?」
「え、何かまずい?」
「いや、マジでうまいです!三人で分ければ、他のも食えます!」
「一つを分ける……」
「そうすりゃ色々食えるだろ!」
なるほど。
カルチャーショックが過ぎる。




